モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

奇怪な蔓植物の正体は?(妻女山里山通信)

2010-01-12 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 写真の大蛇が複雑に絡み合ったような奇怪な蔓(つる)植物がなんだか分かるでしょうか。太いものは根元が50センチもあります。見上げると太い枝から何本も絡み合った蔓が垂れ下がっています。幹に巻き付いて昇っていくのは分かるのですが、下から空中を伸びて行くはずもないので、どうやってあんな高いところから垂れ下がったのか不思議だと思いませんか。よく見ると蔓に蔓が絡み合っています。最初の蔓はどうやって高い枝に到達したのでしょうか。こんなになるまでには何十年もかかります。つまりその間全く手入れがされていなかったということです。

 この植物の正体は、山藤(ヤマフジ)です。ヤマフジは、山藤でマメ科フジ属。よく見られる藤棚の長い花穂(かすい)の藤は、ノダフジといってつるが右巻き。ヤマフジは左巻きです。ノダフジに比べて花穂が短いのが特徴ですが、5月に山で咲く美しさは格別のものがあります。ヤマフジは山菜で、新芽や若葉、花は天ぷらで食べられます。また、実は炒って食べられます。やや青臭いものの甘い甘い珍味です。

 ヤマフジが咲く5月の早朝に訪れると、樹上からヤマフジが吸い上げた水分が雨のようにポタポタと落ちてくるのが見られます。それほどに開花期は盛んに水分を吸い上げるのです。樹液はちょっと青臭い、けれども爽やかな香りがします。成長期には、つるは一日8センチも伸びます。

 ヤマフジは放っておくとどんどん太くなり、枝が増えて寄生した樹木を枯らしてしまいます。特に落葉松は、葉が小さく材も柔らかいので巻き付かれると、葉が隠れて光合成ができなくなり立ち枯れてしまいます。ヤマフジは、植林の有害樹なのです。手入れのされていない落葉松林で、樹上10数メートルのところで折れた落葉松を抱き込んでいるヤマフジをよく見かけます。樹上で切るのは危険なので根元を切りますが、いつ折れた太い枝と落ちてくるか予測できず、非常に危険です。わが家の山では赤テープを巻いて危険を知らせていますが、普通は切りっぱなしです。山菜採りなどでそういう風に切られたヤマフジを見つけたら要注意。

 とはいっても初夏に緑に染まった山に咲く白と藤色のヤマフジの花は本当に綺麗で、里山保全のためにどうしても伐採しなければならない時は、心が痛みます。しかし、ヤマフジやミツバアケビなどの蔓植物は、適度に刈り込んでやらないと健全な里山は維持できません。その加減が難しいところです。全てを切ってしまえばいいというものではありません。ヤマフジも大切な森の生物なのです。昔は木山で蔓を利用したので適度に除伐されて里山のバランスは保たれていました。
 ヤマフジが咲く5月が待ち遠しい寒い雪の信州です。

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。山藤は樹木で。他にはキノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。動物には、猫やもぐら、ニホンカモシカの写真もあります。
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