妻女山は山桜が散り葉桜になって、山全体の緑が日に日に濃くなっています。芽吹き前は遠くから見えたニホンカモシカもかなり近くでないと発見できません。同様に月の輪熊も見えにくくなるので、春は熊鈴をつけなかった私もつけるようになりました。その緑濃い林道脇には鮮やかな黄色のシナノタンポポ(信濃蒲公英)が今を盛りと咲いています。
首都圏から来た方は、信州のタンポポを見ると「なんだか異常に大きくないか?」と思われるかもしれません。写真のタンポポは、花の直径が6センチもあります。このシナノタンポポは、在来種カントウタンポポの亜種で、ともに染色体数が2倍体なので受粉しないと種子ができません。外見上は、写真のように総苞片全体の大きさが太く、外総苞片と内総苞片の先端の小角突起とが全く無く、緑色した外総苞片と内総苞片の色の濃さが薄いなどの特徴があります。妻女山で見られるタンポポの多くはこれです。
ただこれも純粋にシナノタンポポかというと分かりません。草高が高すぎるような気がします。周りのタンポポはこんなに高くなかったので…。交雑しているかどうかは遺伝子レベルで調べないと正確には分からないからです。全国的にも問題になっていますが、車が通る林道脇などには苞片が水平に開いた外来種との雑種も見られます。車が種を運んでくると思っていました。ところが、連休中に鞍骨城跡に登ったときに、林道からかなり入った山中で西洋タンポポとの交雑種を見つけたのです。
もちろん車は入れないし、オフロードバイクやマウンテンバイクも入らない場所です。ということは人の靴に種がついてきたのでしょうか。あるいは、里の種が風で巻き上げられて飛んできたのでしょうか。西洋タンポポの進出で在来種が全て淘汰されてしまうことはないようですが、交雑種の数が増えているのは間違いないようです。
専門的なことは、難解で調査も大変なことのようですが、【タンポポのくらし 雑種も交えて観察してみよう 】という記事がとても詳しく分かりやすいので紹介しておきます。また、「タンポポ 交雑種」で検索すると色々と分かります。なんでもない道端の足元にも複雑な生態系のドラマがあります。
★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、地衣類、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。