鏡台山は、旧埴科郡の中心にある山です。標高は1269mと低山ですが、北へ戸神山脈が妻女山・薬師山・象山へ。東へ鏡台山脈が保基谷岳から鏡台山を経て南は太郎山まで。西は五里ケ峯山脈が五里ケ峯で二手に分かれて葛尾山と北は一重山までと、幾筋もの長い山脈の中心にあり、山懐が深いのが特徴です。
そのため、それぞれの山脈や谷筋で特徴的な植生を持ち、豊かな生態系を育んでいます。
今回は、初めて坂城の和平高原から黒柏木(くろかしゃぎ)経由で鏡台山まで往復しました。長野市からは、千曲市森の林道更埴坂城線を使うと一番早く着きます。往復のコースをとりましたが、笹平へ下りて林道を和平高原へ戻ればループでコースを組むこともできます。「ステキさかき観光協会」の「坂城の里山を歩く」のコース地図では、登り2時間、下り1時間30分と書いてありますが、山に慣れた方ならその半分の時間で大丈夫だと思います。
早春は黄色い花が多く咲きますが、五月になると薄紫の花が目に付くようになります。紫外線の強さと関係があるのでしょうか。まず目に付いたのは、和平高原の草原に咲いていたフデリンドウ(写真上二点)。ハルリンドウと似ていますが、ロゼット状の根生葉がありません。また、湿地を好むハルリンドウに対しフデリンドウは、明るい草原で見られます。
撮影したフデリンドウでは、コアオハナムグリが吸蜜中。頭から花に突っ込んで盛んに蜜を吸っていました。よく家庭菜園のトマトに頭からかぶりついて穴をあけるギャングです。
その次は、鏡台山山頂と途中でも見られたアカフケタチツボスミレです。漢字で書くと、赤斑毛立坪菫となります。葉に赤い斑入りの茎や葉に毛がはえた立坪菫です。この辺りの山域ではもっとも普通に見られるありふれたスミレです。山頂にはこのスミレの群生地があり、薄紫色の絨毯が敷かれたようでした。
そして途中には、いわゆるスミレ。頭になんとかと付かないただのスミレも咲いていました。花の色は薄紫ではなく、ヴァイオレット。これもありふれたスミレなのですが、群生地を見つけるとなると案外ないものです。鏡台山系には、他にアケボノスミレ、マキノスミレなどもあります。
千曲川を挟んで向かいの冠着山(姨捨山)が、北風がまともに吹き付けるため日本海側の植生なのに対し、鏡台山は太平洋側の植生が目立ち、ちょうどこの辺りが境界線となっているようです。地元では千曲川を挟んで西山、東山といういい方をするのですが、植生の違いがハッキリしていて、それを意識して見ながら両山に登ると面白いと思います。
今回のコースは、北アルプスはもちろん、反対側には四阿山と根子岳が見えます。また、空気が澄んでいると鏡台山からは富士山も小さく見えます。
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