芽吹いたと思ったら日毎に色を増してゆき、アッという間に濃緑の山々になってしまうのが5月の里山です。芽吹き途中の山々は、樹種により微妙に色合いや濃淡が異なるのでもっとも美しい季節でもあります。そんな新緑の里山を、妻女山から鞍骨山、御姫山と歩いてみました。
まずは、ヤマナラシ(山鳴らし)。尾根筋の南側にあります。菱形に裂けた特徴的な樹皮が目立ちます。山地の荒れ地などに最初に進入する先駆性植物です。ポプラの仲間で葉柄が長く、風が吹くと音を立てるので山鳴らしという名前がつきました。別名のハコヤナギは、材が柔らかく箱細工の材料となったため。菱形に割れ目の出来る樹皮の模様はなかなかお洒落で、一度見たら忘れないでしょう。
次はシラカバ(白樺)。信州の高原を代表する樹木です。白樺というと高原のイメージで里山っぽくないと思われるかもしれませんが、北信濃では500m位の標高でも見られます。そんな標高の低いところでは、尾根筋の北側に多く見られます。やはり涼しいところが好きなんでしょうね。自ら裂けて古い樹皮を捨てていきます。燃えやすいのでお盆の送り火に使われます。排気ガスによる酸性雨に弱い木ですが、伐採地に最初に生えてくる木でもあります。
冬の白樺は、氷点下10度以下の厳冬の間に凍結しないよう、水分を無くしてカラカラになっています。そして春になると、その枝々すべてに若葉を勢い良く芽吹かせるため、根が水分を地中から組み上げ、高さ10m以上の木のすべてに行き渡らせます。その幹に穴を開けると、組み上げた水分が流れ出してきます。これをボトルに集めたのが白樺水です。虫歯予防の成分キシリトールが多く含まれます。これでウォッカを割ると最高です。
三番目は、ハウチワカエデ(羽団扇楓)。別名は、メイゲツカエデ(名月楓)。天狗の団扇のようなカエデで、非常に派手で鮮やかな紅葉が見られます。
次はアケビ(木通・通草)。妻女山山系には、アケビよりも実が大きく食用に適したミツバアケビがよく見られます。ところが、このアケビが問題なのです。昔は木山(山仕事)で薪などを結束するのに使用したり、細工にも使ったのですが、近年は適度な伐採がされないため、山藤や葛とともに樹木を立ち枯れさせるつる植物のひとつとなっているのです。山藤や葛などと共に適度な除伐が必要です。
最後は、ウワミズザクラ(上溝桜)。桜には見えないかもしれませんが、桜です。別名は、花が強い杏仁に似た香りがあるため杏仁子(あんにんご)といい、実は食べられます。果実酒にも。総状花序の下に葉がつきます。上溝とは、亀甲占いのために上溝桜に溝を掘って燃やし、亀甲のひび割れで占ったため上溝桜が転訛してウワミズザクラになったということです。妻女山山系には数少ない樹種のひとつです。
鞍骨城跡は、近年ハイカーがたくさん訪れるようになりました。歴史ブームや、ガイドブックにも載ったためでしょうか。先日は聾唖者の家族が三人で下りてきました。子供は五歳ぐらいの男の子なので驚きました。えらいね、よく頑張ったねとほめるとミルキーをひとつくれました。ニホンカモシカにも出会えたそうです。倉科のMさん力作の新しい標識も立ちました。ひとつ東のヤセ尾根へ行くと川中島の絶景が見られます。妻女山駐車場から、歩いて約90~150分ぐらいです。個人差があるのであくまでも目安ですが。それと熊鈴はかならずつけてください。また、城跡の石垣をくずさないよう、矢印にそって登ってください。下りは南面に下りると容易です。
★このトレッキングは、フォトドキュメントの手法で綴るトレッキング・フォトレポート【MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)】にアップしてあります。ご覧下さい。
★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、地衣類、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。