モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

コナラの木にリンゴをならすハチ!(妻女山里山通信)

2010-05-16 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 枯れ木に花を咲かせましょうとは、御伽話の花咲爺さんですが、自然界にはなんとコナラの木にリンゴをならす蜂がいるんです。新緑が眩しい五月の森を歩いていると、木楢(コナラ)の幼木に小さなリンゴがなっています。これは不思議と触ってみるとやや固いスポンジ、あるいはマシュマロのような感触。すぐに虫コブだとわかりました。コナラにリンゴがなるわけがないですから。

 楢芽林檎五倍子(ならめりんごふし)というナラリンゴタマバチによって作られた虫コブ(虫えい・ゴール)です。ナラメリンゴタマバチ(雌)が交尾後、コナラの根に楢根玉五倍子(ナラネタマフシ)を作ります。そこから冬に羽化した雌が単性生殖でコナラの冬芽に産卵し、それがこのような五倍子(フシ)を形成するのです。一番上のカット、小さな穴があいていますが、成虫が出ていった跡でしょうか。形成されたフシは卵の揺りかごであり幼虫になっては餌となります。コナラの冬芽をこんな風に変形させてしまうのですから恐るべしかなナラリンゴタマバチ。タマバチのタマとは、このリンゴ状のフシのことです。

 虫コブは古くから利用されてきました。マタタビはマタタビミミタマバエの作る虫コブができて初めて価値あるマタタビ酒になります。また、ヌルデ(白膠木)の若芽や若葉などにヌルデシロアブラムシが寄生してできる虫こぶ(ヌルデミミフシ)は、お歯黒、染め物、薬、インク、占いなどに使われてきました。特に染料は、空五倍子色という伝統色で、古代より(正倉院にあり)珍重されてきました。
 
 虫コブは、物理的刺激や植物の生長を促進する物質(植物ホルモンやアミノ酸など)により形成されますが、現在は人工的に虫コブを作る研究もされているようです。しかもフシはなにも虫だけによってつくられるのではなく、ダニ類、線虫類、細菌、菌類によっても作られます。ですから虫コブや虫えいよりは、英語のGALL(ゴール)といった方が適切かもしれません。もっとも、植物寄生菌類の多くは果樹や野菜に多大被害をもたらすものばかりですが…。
 現在、日本では1400種以上のゴールが見つかっています。実に奥が深い世界です。

 コナラリンゴは、この時期里山のあちこちで見られます。山歩きの際はちょっと気にしてみてください。しかし、見た目は美味しそうでも中には虫がうじゃうじゃ入っているので食べない方がいいと思います。

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。山藤は樹木で。他にはキノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。

★初夏の冠着山鳴海新道・佐良志奈神社コースと五里ケ峯山脈をアップ! トレッキングルポは、【MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)】をご覧ください。
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