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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

妻女山陣場平の貝母は下からしぼみ始め。でもまだ見頃。シロヤブケマンが満開。クサボケも。クヌギの虫こぶ(妻女山里山通信)

2022-04-23 | アウトドア・ネイチャーフォト
 陣場平の貝母(編笠百合)は、下からしぼみ始めましたが、まだまだ見頃です。連日たくさんの方が訪れてくれました。鞍骨山への途中で寄る方も多いのです。県外からも私のブログを見て何人か訪れてくれました。午後は、お昼から2時頃まで突風が吹くので、お昼までがベストです。風は午後3時になると止みます。

 訪れた方が口々に、誰かがいたずらでペンキを塗ったかと思ったと言われるこの風景。クマノミズキの樹液が空気に触れるとこんな色に変色します。元は透明なんですが。ほぼ無味無臭で、無毒なのでなめられます。少し酸味を感じます。楓の樹液酵母でパンを焼いたりビールを醸造したりも行われています。

 カスミザクラ。花柄に細かな毛があるのですが、肉眼では見えないほど。マクロレンズで撮影しないと確認できません。強風が吹くとカスミザクラとヤマザクラの花吹雪が。美しい光景ですが、諸行無常も感じる光景です。

 木漏れ日のスポットライトを浴びた貝母。この日は、サンコウチョウの鳴き声も聞こえました。

 俯いて咲く慎ましやかさと、内に秘めた網目模様。刃先がクルッと丸まった様が可愛いと。4月の茶花で人気があります。

 貝母のあちこちでシロヤブケマンもたくさん咲き始めました。氷河期の生き残りといわれるウスバシロチョウの食草です。成虫は、5月半ばから舞い始めます。

 あちこちでミツバアケビやゴヨウアケビの花が咲き始めました。これはゴヨウアケビ。実はミツバアケビが大きく食用にします。

 林道脇などの日当たりの良いところにクサボケ(地梨)の花がたくさん咲いています。

 週末、23日(土)の風景。たった一日ですが、下の方がずいぶんとしぼみ始めました。それでも充分に見頃です。桜のように一気に散ることはありません。丸太のベンチに腰掛けておにぎりを食べたり、ボーッとすることをおすすめします。東風(こち)も気持ちいい。ここではマスクは不要です。

 たまに聞かれますが、ここは誰の土地なんですかと。江戸時代は個人の畑や山というものはないのです。年貢も村に課され、村には組というものがあり、分担して耕作し年貢を納めたのです。我が家の山は1ヘクタール弱ですが、組の持ち物だったものを明治になって買ったものなのです。分かりますか。実は、江戸時代というのは緩やかな社会主義経済だったのです。明治以降の政権はこれを絶対に教科書に載せません。名主だった我が家には、名寄帳が残りお金や物品の貸し借り、年貢のことなどが書かれた帳面が残っています。これに関して、きちんと説明する歴史研究家がいないことに、またマスコミが取り上げないことに、私は非常に違和感を覚えます。
 この陣場平もいくつかの個人の所有地です。そこで私は当時集落の仏恩講(ぶっとんこう)の世話役をしていた父に、集落の重鎮が集まった折にここの整備の許可を得てもらったのです。口約束ですが、法律的には契約に相当します。里山保全というのは、非常に難しいのです。法務局に行けば区割り地図は得られます。しかし、平面図でそれを立体的な山にどうあてはめるのか。しかも、当時の測量技術ですから、5mぐらいずれているのは普通です。我が家の山は、名主をやっていて買った祖先が詳しい図面を作ってくれて、亡き父が鉄の杭を打っていてくれたので分かりますが、たいていの家は分からないでしょう。絶えたりここに住んでいない家もあります。地元でさえ自分の山がどこにあるのかも知らない人がほとんどです。そして、養蚕も林業も衰退し、里山に無関心が続きました。しかし、近年里山歩きをする人が増えました。リタイアした人だけでなく若い人も。ハイキングだけでなく、歴史探索、トレラン、マウンテンバイク、アウトドア、探鳥や昆虫や山野草の撮影など。工芸につるを採取に来たりと里山を愛する人は様々な形で広がっています。妻女山里山デザイン・プロジェクトは、そんな里山を愛する人達と共に、里山を活性化しようと活動を続けているのです。

 林下の貝母は、まだまだ充分に見頃です。オオヤマザクラ(紅山桜)の濃いピンクもいいアクセントです。

 クヌギの幼木に、ナラメリンゴフシ(楢芽林檎五倍子)虫こぶ。葉の上にいる小さな甲虫は、コメツキムシの一種。オオカバイロコメツキに似ています。
 楢芽林檎五倍子(ならめりんごふし)というナラリンゴタマバチによって作られた虫コブ(虫えい・ゴール)です。ナラメリンゴタマバチ(雌)が交尾後、コナラの根に楢根玉五倍子(ナラネタマフシ)を作ります。そこから冬に羽化した雌が単性生殖でコナラの冬芽に産卵し、それがこのような五倍子(フシ)を形成するのです。形成されたフシは卵の揺りかごであり幼虫になっては餌となります。コナラの冬芽をこんな風に変形させてしまうのですから恐るべしかなナラリンゴタマバチ。タマバチのタマとは、このリンゴ状のフシのことです。
 虫コブは古くから利用されてきました。マタタビはマタタビミミタマバエの作る虫コブができて初めて価値あるマタタビ酒になります。また、ヌルデ(白膠木)の若芽や若葉などにヌルデシロアブラムシが寄生してできる虫こぶ(ヌルデミミフシ)は、お歯黒、染め物、薬、インク、占いなどに使われてきました。特に染料は、空五倍子色という伝統色で、古代より(正倉院にあり)珍重されてきました。
 
 虫コブは、物理的刺激や植物の生長を促進する物質(植物ホルモンやアミノ酸など)により形成されますが、現在は人工的に虫コブを作る研究もされています。しかもフシはなにも虫だけによってつくられるのではなく、ダニ類、線虫類、細菌、菌類によっても作られます。ですから虫コブや虫えいよりは、英語のGALL(ゴール)といった方が適切かもしれません。もっとも、植物寄生菌類の多くは果樹や野菜に多大な被害をもたらすものばかりですが。現在、日本では1400種以上のゴールが見つかっています。実に奥が深い世界です。

 妻女山展望台から北の眺望。赤坂橋の向こうに、武田信玄が本陣としたと伝わる八幡原(はちまんぱら)の森が見えます。なぜ風景が霞んでいるかというと。黄砂もあるのですが、午後の突風で長芋畑の砂塵が舞い上がっているからです。この時期の風物詩です。

 今年はコゴミが大量に採れました。妻女山山系のコゴミは開いて終わっていますが、これは我が家の裏庭に昔父が植えたものです。コゴミは炒めると固くなるので1分湯がいて最後に合わせます。ニンニクとアンチョビーを炒めてパスタを入れて茹で汁を入れて乳化させ、ピリッとするエキストラヴァージンオリーブオイルをかけて。最後に明太子をトッピングします。激旨です。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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