樹液バーに来たメスのオオムラサキを撮影して山道に戻ると、熟年夫婦のハイカーが下りてきました。色々話しをしているうちに、「登る時、道の真ん中にオスのオオムラサキが死んでましたよ」と。「後翅がなんだか縮れていて奇形のような感じもしましたけど」とのこと。詳しい場所を聞くと、どうもうろ覚えではっきりしません。そこで、おそらくあの辺りだろうと思い当たる場所をつぶさに見て回りました。
すると、ある開けた場所でオスのオオムラサキの青い翅が目にとまりました。近づくと既に夫婦が目撃してから2時間は経っているからでしょうか、奇形かもしれないと言っていた後翅は既になくなっていました。屍骸にはトゲアリと黒光りする一見ダンゴムシの仲間と思われるようなものが取り付いていました。まるで三葉虫のようなこの奇怪な虫は、大扁死出虫(オオヒラタシデムシ)の幼虫です。死出虫、または埋葬虫とも書きますが、都内の公園などでも普通に見られる甲虫目カブトムシ亜目シデムシ科の昆虫です。所謂森の掃除人で、生物の屍骸を食べます。
もうひとつのトゲアリですが、主に山地の木の樹洞(うろ)に棲むアリの一種で、クロオオアリやムネアカオオアリの巣に一時的社会寄生を行うことで知られています。というと居候みたいな感じですが、実際は巧妙で非常に緊張感溢れる生命行為なのです。トゲアリの新女王は、結婚飛行を終えて翅が落ちるとクロオオアリの巣に侵入します。働きアリの背中に乗り、クロオオアリの臭いを纏います。そして、クロオオアリの女王を見つけ殺し、自分の卵をクロオオアリに育てさせるわけですが、攻撃性の低い羽化直後のクロオオアリの働きアリが育ててくれればよし、失敗すれば逆に殺されてしまうこともあるようです。
そうして子孫を増やして行きある程度の数になると、本来の生息地である木の樹洞に移動します。先日はオオムラサキの撮影中に、そのクロオオアリの巣から木の樹洞への大掛かりな引っ越しと思われる場面に遭遇したので後日アップします。以外と知られていないかもしれませんが、アリの食性の基本は肉食なので、こういった屍骸も餌とします。写真のトゲアリは、この10メートルほど離れた所のクヌギの樹洞に巣がありました。
このオオムラサキのオスですが、残念ながら後翅はなくなっていましたが、二人の話では片方が縮れていて奇形のような感じだったということなのですが、稀にそういう個体もあるようです。翅の感じから羽化直後に死んだというよりは、寿命かもしれません。蛹の状態の時に人が触ると奇形が生まれるという説もあります。蛹を見つけてもなるべく触らないでください。バタバタと暴れます。あるいは、自然界の中でも物理的な刺激が加わって奇形が生まれてしまうことがあるのかもしれません。蛹化不全が起きる要因は他にもあるかもしれませんが。翅のキズは死後できたものか、激しい縄張り争いを現すのかは分かりません。
オオムラサキの一生は、約一年。成虫での日数は、一ヶ月もありません。そのわずかな期間にペアリングをし、交尾・産卵をして次世代へとつなぐのです。エノキ(榎)の葉に産みつけられた卵から孵化すると、まず卵の殻を食べ、エノキの葉を食べて成長しますが、最初の天敵はアリです。冬までに三回脱皮して四齢幼虫になり、木を下りて葉の裏で越冬します。越冬幼虫は暑さと乾燥に弱いので、エノキの北側の根元に固まっていることが多く見られます。若葉が芽吹く頃に、再びエノキノキに登りますが、中には登れないものもいて、それらは生き延びる事ができません。木に登ってから二回脱皮して六齢幼虫(終齢幼虫)になると、かなりおおきくなるため天敵の鳥に狙われるようになります。
六齢幼虫は25日位で前蛹になり葉にぶら下がります。この頃の天敵はカメムシで、教われると体液を吸われて死んでしまいます。前蛹期は短く2日ぐらいで脱皮し蛹になります。ホルモンの作用により細胞分裂を繰り返して羽化の準備をします。15日位すると羽化が始まりますが、オスはメスより10日ほど早く羽化します。メスは長く蛹でいるためオスより大きくなりますが、産卵のためといわれています。オスの求愛行動は、メスに近づき腹部を内側に曲げて交尾器を突き出す仕草をします。メスは気に入れば交尾に応じますが、気に入らなかったり既に交尾が済んでいると翅を開いて拒絶します。前の記事で書いた様に、メスがオスに求愛するということもあるようです。
樹液バーに戻ると、大きなメスがやってきました。今日は樹液の出が悪いのか、多勢に無勢でオオムラサキが苦手なアオカナブンの団体さんは現れません。木の樹洞に頭を突っ込んで思う存分樹液を飲んでいました。いずれアップしますが、ここにカブトムシやスズメバチ、ミヤマカマキリにルリタテハなどが一同に集まると、それはもう上へ下への大騒ぎとなります。その仁義なき戦いは、見ていて飽きる事がありません。
★ネイチャーフォトのスライドショーやムービーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やニホンカモシカ、森のあんずのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
すると、ある開けた場所でオスのオオムラサキの青い翅が目にとまりました。近づくと既に夫婦が目撃してから2時間は経っているからでしょうか、奇形かもしれないと言っていた後翅は既になくなっていました。屍骸にはトゲアリと黒光りする一見ダンゴムシの仲間と思われるようなものが取り付いていました。まるで三葉虫のようなこの奇怪な虫は、大扁死出虫(オオヒラタシデムシ)の幼虫です。死出虫、または埋葬虫とも書きますが、都内の公園などでも普通に見られる甲虫目カブトムシ亜目シデムシ科の昆虫です。所謂森の掃除人で、生物の屍骸を食べます。
もうひとつのトゲアリですが、主に山地の木の樹洞(うろ)に棲むアリの一種で、クロオオアリやムネアカオオアリの巣に一時的社会寄生を行うことで知られています。というと居候みたいな感じですが、実際は巧妙で非常に緊張感溢れる生命行為なのです。トゲアリの新女王は、結婚飛行を終えて翅が落ちるとクロオオアリの巣に侵入します。働きアリの背中に乗り、クロオオアリの臭いを纏います。そして、クロオオアリの女王を見つけ殺し、自分の卵をクロオオアリに育てさせるわけですが、攻撃性の低い羽化直後のクロオオアリの働きアリが育ててくれればよし、失敗すれば逆に殺されてしまうこともあるようです。
そうして子孫を増やして行きある程度の数になると、本来の生息地である木の樹洞に移動します。先日はオオムラサキの撮影中に、そのクロオオアリの巣から木の樹洞への大掛かりな引っ越しと思われる場面に遭遇したので後日アップします。以外と知られていないかもしれませんが、アリの食性の基本は肉食なので、こういった屍骸も餌とします。写真のトゲアリは、この10メートルほど離れた所のクヌギの樹洞に巣がありました。
このオオムラサキのオスですが、残念ながら後翅はなくなっていましたが、二人の話では片方が縮れていて奇形のような感じだったということなのですが、稀にそういう個体もあるようです。翅の感じから羽化直後に死んだというよりは、寿命かもしれません。蛹の状態の時に人が触ると奇形が生まれるという説もあります。蛹を見つけてもなるべく触らないでください。バタバタと暴れます。あるいは、自然界の中でも物理的な刺激が加わって奇形が生まれてしまうことがあるのかもしれません。蛹化不全が起きる要因は他にもあるかもしれませんが。翅のキズは死後できたものか、激しい縄張り争いを現すのかは分かりません。
オオムラサキの一生は、約一年。成虫での日数は、一ヶ月もありません。そのわずかな期間にペアリングをし、交尾・産卵をして次世代へとつなぐのです。エノキ(榎)の葉に産みつけられた卵から孵化すると、まず卵の殻を食べ、エノキの葉を食べて成長しますが、最初の天敵はアリです。冬までに三回脱皮して四齢幼虫になり、木を下りて葉の裏で越冬します。越冬幼虫は暑さと乾燥に弱いので、エノキの北側の根元に固まっていることが多く見られます。若葉が芽吹く頃に、再びエノキノキに登りますが、中には登れないものもいて、それらは生き延びる事ができません。木に登ってから二回脱皮して六齢幼虫(終齢幼虫)になると、かなりおおきくなるため天敵の鳥に狙われるようになります。
六齢幼虫は25日位で前蛹になり葉にぶら下がります。この頃の天敵はカメムシで、教われると体液を吸われて死んでしまいます。前蛹期は短く2日ぐらいで脱皮し蛹になります。ホルモンの作用により細胞分裂を繰り返して羽化の準備をします。15日位すると羽化が始まりますが、オスはメスより10日ほど早く羽化します。メスは長く蛹でいるためオスより大きくなりますが、産卵のためといわれています。オスの求愛行動は、メスに近づき腹部を内側に曲げて交尾器を突き出す仕草をします。メスは気に入れば交尾に応じますが、気に入らなかったり既に交尾が済んでいると翅を開いて拒絶します。前の記事で書いた様に、メスがオスに求愛するということもあるようです。
樹液バーに戻ると、大きなメスがやってきました。今日は樹液の出が悪いのか、多勢に無勢でオオムラサキが苦手なアオカナブンの団体さんは現れません。木の樹洞に頭を突っ込んで思う存分樹液を飲んでいました。いずれアップしますが、ここにカブトムシやスズメバチ、ミヤマカマキリにルリタテハなどが一同に集まると、それはもう上へ下への大騒ぎとなります。その仁義なき戦いは、見ていて飽きる事がありません。
★ネイチャーフォトのスライドショーやムービーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やニホンカモシカ、森のあんずのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。