世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

冬の日差し

2015-01-27 07:01:00 | 詩集・試練の天使

思い出を切り取り
あなたの影を
窓のむこうに置いてみる

わたしはふりむかない
ふりむけば とたんに
幻は消えてしまうと
わかっているから

ただ 小さな鉛筆など持って
書き物をしながら
窓の向こうからわたしを見ている
あなたのまなざしを感じるのだ

ああ あのひとの瞳は
小さな水仙のため息に似ていた
水晶を風に溶かしたように
透明に光っていた

小鳥に呼ばれたような気がして
思わず窓をふりむくと
ああ もうあなたはいない
静かな冬の日差しが
窓をあたためているばかり

わたしがもう一度
思い出をめくって
あなたの姿を探そうとすると
誰かが 静かな声で
もうやめなさいと言う

わたしは空耳を探して
もう一度 窓をふりむく
さっきの声は
あなただったのではないですか

わたしは窓を開けて
冬の日差しを浴びる




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