旧日本軍の梅沢さんたち人が、作家の大江健三郎さんと岩波書店に、大江さんの著書「沖縄ノート」などの出版差し止めや損害賠償を求めた訴訟の第11回口頭弁論が9日、大阪地裁で開かれ、原告、被告双方の本人尋問があったと言うニュースの中で、大江さんの証言が気になった。
最初に断っておくが、沖縄の自決の問題で、軍の指示があっかどうかについては、敗戦の混乱の中で、沖縄県民をあくまでも護った人もいるかも知れないし、或いは自決を指示した人もいるかも知れないと言う考えだから、事の真相について書く気もない。
また今回の訴訟が何故今起こされたか、そして原告、被告それぞれに応援団が付いて居るらしいことから、この訴訟そのものも何か裏があるような気がしないことも無い。
それで私は大江さんの「沖縄ノート」、曽野さんの「集団自決の真実」(旧ある神話の背景の改題)それぞれの取材姿勢に絞って考えて見たい。
11月10日の読売新聞の「沖縄ノート」差し止め訴訟、原告・被告双方に本人尋問
によると、
[大江さんの取材姿勢]
大江さんは、この日の陳述や地裁に提出した陳述書で、自著で自決命令があったとした根拠について、〈1〉地元新聞社が刊行した書籍などを読んだ〈2〉書籍の執筆者らにも話を聞いた――などと説明。座間味島を訪れるなどして生存者らから話を聞かなかったのは「本土の若い小説家が悲劇について質問する資格を持つか自信が持てず、沖縄のジャーナリストらによる証言記録の集成に頼ることが妥当と考えた」とした。
「守備隊長の命令はなかった」との証言が盛り込まれた作家の曽野綾子さんの著作については「読んだが、証言は守備隊長を熱烈に弁護しようとしたものと考えた」と述べ、沖縄ノートの記述を訂正する考えがないことも明らかにした。
と言っている。
これを見ると、大江さんは地元新聞社が刊行した書籍を読み、その著者と逢っただけだのようだ。
大江さんが持論を展開するのに使った本の著者自身もWikipediaによると現地取材もしてないそうだ。
つまり関係者は誰も現地の調査もしないまま大江さんの「沖縄ノート」が書かれたことになる。
単なる小説ならいざ知らず、この報道性のある著書で、この程度の取材で「沖縄ノート」書き、「赤松元隊長の行為を「罪の巨塊」」と呼ぶなど軽率に過ぎはしないか。
そして、曽野さんがその著書で大江さんの書いたことに真っ向から反対しているのなら、ノーベル賞の受賞者のプライドにかけても、再取材をしそれに対して反論すべきだと思う。
[曽野さんの取材姿勢]
曽野さんが書いたコラムの戦争責任と曖昧な現実に耐えること によると、
ノン・フィクションを手掛ける場合の私なりの原則に従ってやった。それは次のようなものである。
(1)愚直なまでに現場に当たって関係者から直接談話を聴き、その通りに書くこと。その場合、矛盾した供述があっても、話の辻褄(つじつま)を合わせない。
(2)取材者を怯(おび)えさせないため、また発言と思考の自由を確保するため、できるだけ一人ずつ会う機会をつくること。
(3)報告書の真実を確保するため、取材の費用はすべて自費。
私は、当時実際に、赤松元隊長と接触のあった村長、駐在巡査、島民、沖縄県人の副官、赤松隊員たちから、赤松元隊長が出したと世間が言う自決命令なるものを、書き付けの形であれ、口頭であれ、見た、読んだ、聞いた、伝えた、という人に一人も会わなかったのである。
と書いている。
大江さん、曽野さんの報道姿勢を比較して見ると、明らかに曽野さんの方が公平で、正確な情報を伝えようとしていることが判る。
Wikipediaの「沖縄戦」によると、
「集団自決を軍の強制とする意見」には、
何らかの形で軍に関与があったとこと、実際の自決の指示は村の兵事係が行ったこと、自決については戦陣訓など当時の教育の影響があったと言う意見が多数で、直接の命令があったと言う意見は、沖縄タイムズの報道によるものだけのようだ。
それに対して、「集団自決を軍の強制なしとする意見」の内容は厚生省の調査に当たって、「年金を支給して貰う為にのために軍命令があったとにした」という証言が殆どを占めている。
私はこれについては、前に書いたように何回か軍の関与は何らかの形であった。敗戦の混乱の中で、軍隊の中には、自身の安全を優先した人もいれば、県民の生命を守るために尽くした人もいると思っている。
参照:集団自決への日本軍の関与
大江さんは「沖縄ノート」以外にも「ヒロシマ・ノート」を書いたり、「九条の会」結成に関与するなど、所謂平和主義運動に関わっているようだ。
作家達はどんな信念を持つのは自由だ。
然し色眼鏡で物事を見ると、物事の本質を見失うことになる。
マスコミや作家は、社会や日本に大きな影響を及ぼす報道をしたり、ノン・フィクションを書くときは、記者や著者がその信念に囚われず、色眼鏡を外して、自分達の主張に反する事実でも、公平かつ正確な報道をして貰いたいと思うばかりだ。
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