普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

自爆テロの拡散と定着の原因

2007-11-15 10:28:44 | 国際社会

 自爆テロはいっこうに終わりそうにない、特にイラクアフガニスタン、パキスタン、イスラエルでは定着してしまった感さえある。

  それで自爆テロの拡散と定着の原因について考えて見たい。
 自爆テロには改めて書くまでもなくイスラム教が密接に関連しているが、これについては昔イスラム国家であるイランに長期出張していた時に、岩波文庫の300ページにもなるイスラム教の解説の本を読んだだけの知識しかないので、なるべく公平と正確を期する為に、Wikipediaのイスラム教
とそれにリンクする資料に頼ることにした。
 
文中の青字で書いたところは特記の無い限り上記の資料によるものだ。

[自爆テロが出た国の特徴]
 今までの自爆テロの発生した国は
 9/11以前はスリランカで約15件と同国に集中、その他レバノン、チェチェン
 9/11以後はイラク、アフガニスタン、イスラエル、パキスタン、インドネシア、米国(9/11)、スペイン、英国、トルコ、ロシヤ、イタリアなどに拡散
 
  以上からみると、その特徴は、
1.イスラム国で貧困が問題になっている国が多い
2.イスラム国で部族や権力争いのある国が多く、その内には反米を表向きの理由にしている国もある
3.米国、英国、スペインなどイスラム過激派の攻撃によると言われている国
 以上を綜合的に見ると自爆テロにはイスラム教が何らかの形で関わっていることが判る。

[イスラム教の特徴]
・ジハード(聖戦)の概念
 (イスラーム教の聖典の)クルアーンの記述には、異教徒に対する暴力を奨励するような記述が多数見られる。これはイスラム教初期において、ムスリムと異教徒(多神教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒)の間に宗教的・政治的・軍事的緊張があったことを反映している。ムスリムが”神のために苦しむこと、自分の欲望を断ち切って努力すること”をジハードというが、これは歴史的に見ても対外的侵略の口実として用いられることが絶えずあり、現在でもこのような論法により破壊行為が行われている。

・イスラム拡大の歴史
 (創始者の)
ムハンマド死後もイスラーム共同体の勢力拡大は留まることは無く、4代の正統カリフの指導のもとイスラーム帝国と呼びうる大帝国へと成長していった。結果、ムハンマドの後継者のリーダーシップの下、イスラム教は急速に拡大し、現在に至るイスラーム勢力範囲の確立にも繋がった。イスラム教勢力が改宗の他にも、軍事的征服で拡大していったことが最も大きな要因とされる。

 このように教義からも、歴史上からもイスラム教のためには軍事力行使も辞さないと、解釈する人がいるのだろう。

・イスラムの教義
  また、ムスリムが取るべき信仰行為として定められた五行は、次の5つとされている。
 信仰告白、礼拝、喜捨(ザカート)、断食、巡礼
 ザカートというのは内容的にはムスリムに課せられた財産税で、貧者の救済を主眼におく目的税であることから、救貧税と訳されることも多い。
 喜捨を指す語としてはザカートとサダカがあり、現代においてはサダカを自由喜捨、ザカートを制度喜捨として区別している


(ザカートの)
一例としてハナフィー派の定めるところによれば、ザカートが課されるのは、ムスリムが1年以上所有している財産のうち;
 貨幣(2.5%)、家畜(0.8~2.5%)、果実、穀物、商品(きわめて広義。年収の2.5%,金は5%,銀は2.5%, 埋蔵財貨は20%)、
とされる。そしてその使途は、以下の者の援助に用いる。
貧しい巡礼者、托鉢修行者、借金を返済できない者、乞食、貧しい旅行者、新規改宗者

 (サダカ)は政府による福祉と違い、常に顔を合わせているような間柄同士での互助システムと言える。イスラム共同体にはこういった仕組みがいくつも組み込まれている。
また、商業などで成功した人物が、慈善団体に自由意志でもって喜捨をするのもサダカである。
 サダカで寄付された学校などには寄進者の名前が刻まれることはない。それは、サダカが直接富裕者から寄付されるのではなく、観念的には神(アッラー)に寄進され、それを皆が使える状態にしているゆえである。


  このように貧困層に優しい教義が石油発見前の貧乏だった中東や貧困に悩む東南アジアに拡がったのも頷ける。

 このようにしてイスラム教が拡がり、イスラムの教えの解釈の仕方で、神のために敢えてジハードも辞さないとか、一身を犠牲にしてもと言う自爆テロが拡がったのだろう。
 然し、近年、自爆テロなどで活動の過激さを増しているイスラーム主義の先鋭的勢力も、異教徒に対するジハードを旗印として活動を行っていることは紛れもない事実である。
 パレスチナ問題に対する抗議として行われるハマースの自爆テロなどはその典型である。特に、アメリカ同時多発テロ以降、その傾向は強まりつつある。同時多発テロの実行犯たちは、これを「ジハード」であると認識し、善行と信じて犯行を実施したとされている。イスラーム社会の宗教指導者たちの少なからぬ者は、「暴力はイスラームの本質ではない」として直接的・間接的にテロを批判したが、複数の宗教指導者が、テロの実行犯たちをジハードによる「殉教者」として称えたことも事実である。

とWikipediaにあるように自爆テロを教唆する指導者は一部に限られているのも事実であることを念のために書いておく。

[米国の責任]
 私は中東の紛争や戦争から学んだもの(1)[米国の民主主義とは]で次のように書いた。
1.もし昔、米国がイスラエルの制裁決議に何度も拒否権を発動しなかったら
然し、イスラエルとパレスティナの紛争は今ではとっくに解決しているのかも知れないし、9月11日に多くの犠牲者を出さずに済んだかも知れません。
と書いたが、正確にはオサマ・ビン・ラディンの声明によれば、主なテロの理由は、米国のサウジ・アラビアなどの、イスラロ国への米国軍の駐留に反対だが、イスラエルの制裁決議に何度も拒否権発動はそのきっかけになったのだろう。
 勿論、ブッシュさんは政権維持のために、強力な経済力を持つ国内のユダヤ人のサポートを得る目的で、イスラエルの非道行為を非難する安保理の決議を術全て拒否権を行使した。
 そして、テロ攻撃が米国と言う超大国にでさえ反撃できる有効な手段だと言うことを世界に知らせた。

2.もし、米国が安保理の決議を無視して、イラクに先制攻撃をしかけていなかったら
 米国はそうしなかった為にイスラム過激派に反米と言う目的や表向きの理由を与えてしまった。

3.もし、イラクの政権が出来た今、米国がその軍隊と、開戦後イラクから得たと言われる権益を全て引き上げ、今後ともイラク政権への影響力を行使しないと決めたら
 米国はそうしなかった為に、過激派との戦いの泥沼に陥ってしまった。
 そして自爆テロが権力者への抵抗や、権力闘争に有効なことを改めて確認させ、世界に拡散させ定着させてしまったことは、上記のようにその後の各国での自爆テロの発生を見れば判ることだ。

[自爆テロへの対策]
 自爆テロを示唆する人や実行する人達にもそれなりの信念があり、それを変えさせることは難しい、まして多くの人達が指摘するようにそれを武力で押さえつけようとするのは逆効果だと言うのもよくわかる。
 そうかと言って無辜の民まで巻き添えにする自爆テロを何とかして根絶しなければならないのは勿論だ。
 考えられるのは唯一、「暴力はイスラムの本質ではない」と言う穏健派のイスラム教の指導者に頑張って貰うしかないような気がする。
 そのためにはまだ中東でも支持者の多い日本が、何らかの形で彼らを応援するのが回り道ではあるがベストの選択と思う。

 一方日本は、米国から外国からの攻撃をを護って貰わねばならない。
そのためアフガンのタリバンと交戦中の米国には何らかの形で応援して、その保証を確実にして置く必要があると言うジレンマがある。

 そこで私がブログのその場凌ぎの政治から抜け出すために
で書いたように何時かは根本的な米国との関係の見直しの必要がある思う。

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