普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

規制緩和へブレーキを

2007-11-21 07:08:32 | 企業経営

  11月20日の読売新聞のタクシー参入を6地区で制限…国交省  過当競争で弊害、仙台は新規禁止 によると国土交通省は20日、タクシーの新規参入や保有車両の増加について規制を厳格化する方針を発表した。許可の前に労働条件などを審査する「特定特別監視地域」制度を新設し、20日から来年8月末まで札幌、旭川、仙台、長野、富山、広島の6市を中心とする地区を指定する。新規の参入や増車を禁止できる現行の「緊急調整地域」の適用条件も変更し、仙台市を来年1月9日から8月末まで指定する。
 国交省が新規参入規制の厳格化に乗り出すのは、2002年の規制緩和以降、過当競争が進み、事故の増加や賃金の低下などの弊害が目立ってきたためだ。
 タクシー業界は2002年に、免許制が許可制に緩和され、参入や増車が行いやすくなった。同時に、過当競争を防ぐため、監視地域や調整地域の制度を導入したが、過去に緊急調整地域に指定されたのは、沖縄本島地区のみで、実効性が薄いとの批判があった。
と政府は今までの規制緩和の方針を見直すことにしたそうだ。

  それでは最初に指定された仙台市の業界には歓迎ムードが広がっているそうだ。
  その理由は、
・同市では2002年の規制緩和以降、違法駐車や賃金の低下などの弊害が目立ち始めた。
・市内のタクシーの06年の延べ稼働台数は、01年の約1・3倍に増大し運転手の平均年収は225万円(県タクシー協会)で、ピーク時の半分程度になった。
・過当競争の激化→運転手の労働条件の悪化→事故の増加で宮城県内のタクシー事故は、445件(うち1人死亡、30人重傷)に上っている。
・仙台中央署には9月末現在で、タクシーの違法駐車に関する苦情が963件寄せられ、取り締まり件数は810件に上った。
 (2007年11月21日  読売新聞)
などの弊害に悩まされていたからだそうだ。

 私は規制緩和はある節度を持って行うべきだと考えているので、今回の決定は歓迎できないことかもかも知れないが致し方ないと思っている。

 この業界の歓迎ムードに対して、使用者側からの批判者は何故タクシー業界が、過当競争にならぬよう自主規制をしないのかと言うだろう。

 然し、もし業界の人達が話し合って新規の参入や台数の増加への自主規制を行ったとしたら、批判者達は業界の利益を確保するための縄張りの確保や、一種の談合行為だと批判するだろう。

 私は規制緩和は、その結果雇用者に低賃金や過重な労働を強いるなどの、企業のモラルに反することのないよう、また企業が苦し紛れに違法行為をすることのない程度のブレーキを掛けた上で行うべきだと思っている。

 雇用者と被雇用者の関係で言えば欠如した企業経営者の倫理観 
で書いたように雇用の規制緩和を目的とした労働者派遣法から多くのモラル上の問題が出てきている。

  その要点を纏めると、
[労働者側]
・4次孫請けの人材派遣会社の労働者の給料がが各段階にピン跳ねされ。
・法律で義務づけられている、厚生年金や健康保険の加入も拒否され、自腹で健康保険を払った残りは僅か月10万前後の文字通りワーキング・プアの生活をしている。
・勤務年限3年を超えた派遣労働者が、労働者派遣法に基づいて、直接雇用の申し入れを派遣先企業側に行った所、拒否されたでその企業を訴えた。
 裁判で負けた企業側は、やむなく直接雇用したのは良いが、派遣法の規定にないことを利用して雇用期限を半年にし、期限を過ぎて解雇された。
[派遣会社]
・惨憺たる生活をしている派遣社員がいる一方、莫大な利益を上げている。
・中にはたった一人で曾孫請けの会社を持っている人は人材を親請けに紹介するだけで、月に150万もの収入を得ている。
・人材派遣会社の中には、先に書いた様に法で定められた健康保険、厚生年金などの加入をしないなどの違法行為をしている。
・人材の教育なしで完全な人入れ稼業に徹していること。(完全な違法行為)

  このように労働者派遣法は数々の問題を引き起こしている一方で経団連は企業の経営改善のために更なる労働者の雇用に関する規制緩和を申しいれているそうだ

[経団連の政府への申し入れ]
  ところが驚くことに経団連は今まで書いた問題と全く逆の方向の労働者派遣法の改正の申し入れを政府にしている。
・偽装請け負い禁止の廃止
・最大三年の派遣期間後の派遣先企業の直接雇用の義務化の廃止
・「残業代ゼロ法案」と世論の批判をあびた、「ホワイトカラー・エグゼンプション」(労働時間規制の適用除外)制度の早期導入
・時間外労働の上限規制の緩和
・“サービス残業根絶”通達(労働時間規制)の緩和
・労働時間規制の適用除外者の範囲の拡大
・労働時間規制の適用除外者への割増賃金支払い義務の見直し
・派遣禁止業務の解禁

以上を並べて見ると、
・現在の賃金格差、社会格差・ワーキング・プアなどの社会現象に対する配慮が全くないこと。
・大企業を統合する経団連、ある意味では日本をリードする立場の人達の倫理観が全く感じられないこと。
が直ぐ頭に浮かんで来る。
と書いた。

 勿論、国民からの反発も考慮に入れながらの、彼らの提案は中国企業の台頭に当たって企業競争力の強化の努めたいことは良く理解できる。

 然し日本全体を見ている政府としては、今回のタクシーの問題のように、雇用者、被雇用者の問題が、両者のモラルの低下、社会格差の増大やそれに伴う社会劣化に繋がることにならない様に規制緩和にも適正なブレーキを掛けて行く必要性をいつも忘れないで欲しいと思う。


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