史上最狂のセットだった(写真はルースターズ)
あれから40年(1983年9月23日、日比谷野外音楽堂)
オープニングアクトは大江が復帰したばかりのルースターズと、ARB。
陽が完全に落ちた頃、ピンク・フロイドの「狂ったダイアモンド」が流れる中、メンバーが登場した。マコちゃん(鮎川誠)はグレーのトニック・スーツ。
アンコールの「やらないか」途中でキク(柴山俊之)はハーモニカを客席に放り入れ、さらにマイクを床に投げつけると(3分51秒)、演奏中の3人を残して一足先に悠然とステージ裏へ消えて行った。
明日でちょうど40年前のことになる。
6月に渋谷ライブ・インで披露した「アイム・ア・マン」がなかったのがほんのちょっとだけ、残念だった。
全曲試聴できます。
「ソウル・マン」
埃っぽい道を
お前に会いにきた
愛をたっぷりトラックに積んで
お前がこれを受け取ったら
とてつもないことになるぜ
だから心配するな
すぐに着くからさ
オレはソウル・マン
魂の男
オレはソウル・マン
魂の男だ
オレが苦労して手に入れたもの
そいつを毎日磨いて行く
だからハニー、イライラするなよ
だってお前はまだ見てないのだからさ
オレはソウル・マン
魂の男
オレはソウル・マン
魂の男だ
聴いてくれ
オレは脇道育ちだ
食べることより先に
愛することを覚えた
いい学校で学んだろ
だから愛し始めたら
自分でも止められないのさ
オレはソウル・マン
魂の男
オレはソウル・マン
魂の男だ
さあ、ロープをつかんで
お前を手繰り寄せる
お前に希望をやるよ
お前の彼氏になるからさ
オレはソウル・マン
魂の男
オレはソウル・マン
魂の男だ
上は、黒人デュオのサム&デイヴが1967年に大ヒットさせた「ソウル・マン」を、ブルース・ブラザースが出身番組の「サタデー・ナイト・ライブ」でカバーした映像(1978年)。大男ダン・エイクロイドの身軽でコミカルなダンスが秀逸だ。
下はそれから31年後、とあるブルースバンドの結成40周年ライブにゲスト出演したエイクロイド。横に2倍になり、汗だくで、歌い終えたあとは息も絶え絶えだ。
面白いのは、2番と4番での彼のステージアクトというかジェスチャー。
2番ではスコップで穴を掘り、4番ではロープを手繰り寄せている。
ぜひ歌詞と併せて観て欲しい。
soul man
Comin' to ya on a dusty road
Good lovin' I got a truck load
And when you get it you got something
So don't worry cause I'm coming
I'm a soul man
I'm a soul man
I'm a soul man
I'm a soul man
Got what I got the hard way
And I'll make it better
each and every day
So honey don't you fret
Cause you ain't seen nothing yet
I'm a soul man
I'm a soul man
I'm a soul man
I'm a soul man
Listen
I was brought up
on a side street
I learned how to love
before I could eat
I was educated at goodstock
When I start lovin'
I just can't stop
I'm a soul man
I'm a soul man
I'm a soul man
I'm a soul man
Well grab the rope
and I'll pull you in
Give you hope
and be your only boyfriend
Yeah, yeah, yeah, yeah
I'm a soul man
I'm a soul man
I'm a soul man
I'm a soul man
I'm a soul man
I'm a soul man
映画「ブルース・ブラザース」(1980年)より。ダン・エイクロイド最狂にして最高!
なぜそんなにもブルースが好きなのかと時々尋ねられる。
理由などないのだけれど、強いて言えば、ブルースは人生をリアルに表すもので、生活そのものだからか。
ロバート・ジョンソンが作曲した「スイート・ホーム・シカゴ」は高名なブルース・ナンバーだが、広く歌われるようになったのは、シカゴのご当地ソングというニュアンスからで、代表的なのが「ブルース・ブラザース」での派手で楽しい演奏だ。
けれども、ロバート・ジョンソンの原曲は大きく趣を異にしている。
歌詞を訳してみる。
ブルースはとにかく歌詞が単純なので、かえって解釈が難しい。
おお、ベイビー、行きたくないか
おお、ベイビー、行きたくないか
カリフォルニアの地へと戻り
そして懐かしの故郷シカゴへ
さてと、1足す1は2で、
2足す2は4だ
オレは重荷を背負っているが
予定があるから行かなくちゃならない
オレは泣いてるよ、ベイビー
ハニー、行きたくないか
カリフォルニアの地へと戻り
そして懐かしの故郷シカゴへ
さてと、2足す2は4で、
4足す2は6だ
お前は男たちをもて遊び続けるだろう
お前のやることはすべていかさまだ
でもオレは泣いてるよ、ベイビー
ハニー、行きたくないか
カリフォルニアの地へと戻り
そして懐かしの故郷シカゴへ
さてと、6足す2は8で、
8足す2は10だ
友よ、以前彼女はお前を騙したっけな
必ずまたやるだろうよ
オレはカリフォルニアへ行く
そこからアイオワ州デモインへと
誰かがオレに言うだろう、お前が
オレの助けを求めてると、泣けるぜ
なあ、なあ
ベイビー、行きたくないか
おお、ベイビー、行きたくないか
カリフォルニアの地へと戻り
そして懐かしの故郷シカゴへ
この曲が好まれる理由の一つが、歌詞の奇妙な数遊びだ。
1番では、
「1足す1は2で、
2足す2は4だ」、
それが2番では、
「2足す2は4で、
4足す2は6だ」、
そして3番になると、
「6足す2は8で、
8足す2は10だ」、と増えて行く。
いったいこれは何だと思います?
僕は若いころ、これはウイスキーのコップの数だと、やはりブルース好きの先輩から教わった。
「1杯足す1杯は2、2杯足す2杯は4」
「4杯足す2杯は6」
「6杯足す2杯は8、8杯足す2杯は10」
右が2杯で止まっていて、左がどんどん増えている。
この曲の中には男が二人と女が一人存在していて、二人の男は安酒場で酒を酌み交わしているが、一人の男の頭の中は(この場にはいない)昔の女のことでいっぱいだ。
そして、相手が遠慮なく飲んでいる酒の勘定のことも同じくらい大きな心配事だ。
頭の中にいる女のことで飲めないのか、それとも懐が心配だから手が止まっているのか。
シカゴへの旅費を使ってしまっては一大事だから。
女への思いがブルースで、懐(会計)の心配もブルース。
このむき出しの生活描写が、ブルースの面白さ、魅力だと僕は思っている。
このLPが発売されたころ(1961年。日本発売は1981年)、ロバート・ジョンソンの写真はまだ発見されていなかった。ジャケットのイラストはレコーディングの想像図だ。
「ブルースはロックの親父やけん(会場爆笑)、、リズム&ブルースは叔父さんや。」
マコちゃん(鮎川誠)の独特のMCは外見とのギャップもあって、いつも観客をなごませた。
あれはシーナが産休中のライブだったから、1983年のことだ。下北沢の本多劇場で開催された下北沢音楽祭での一コマだ。
ギター、ベース、ドラムスのトリオで持ち歌を数曲演奏した後、京都出身のウエストロード・ブルース・バンドのボーカルで、当時はR&B色の強いブルー・ヘブンを率いていたホトケこと永井隆をゲストに、マディ・ウォータースの「マニッシュ・ボーイ」やリトル・リチャードの「ルシール」を披露した。ホトケはそれまでもシナロケのステージに招かれることがあったが、彼もマコちゃんも、好きなブルースを信頼できる相手とセッションできて、観ているほうが幸せになるほど、毎回楽しそうだった。
「今日6月9日はロックの日やろ?明日10日はブルースの日や。」
翌日、ブルースのフェスティバルが日比谷公会堂で開催されるとの告知だったが、行った記憶がないは、苦学生だった僕は土日に多摩動物公園のバイトが入っていたか何かで断念したのだろう。
ちょうど40年がたったとは。
このオムニバス・ライブは行った。会場はたしか池袋東映(映画館)だった。とにかく暑かった。
自分にしては珍しく、ネット上で「父のなくしもの」という漫画を読んだ。
強烈な昭和の父親のキャラクターとエピソードがあまりにも自分の父親に似ていて、いや~な気分になりながら時々馬鹿笑いしては、そのたびあたりを見回してしまった。
作者の自伝だというこの漫画、東京に憧れる高校時代の場面に描かれていた映画館のスクリーンを見て、おやと思った。
この映画、(まだ終わったわけではないけれど)僕が生涯で一度だけ、エキストラ出演した「爆裂都市(バースト・シティ)」(1982年)だ。
気になって調べてみたら、作者は僕より三つ年下だった。
81年の暮れから翌年初頭にかけて、映画に出演しているルースターズやロッカーズ(陣内孝則)、スターリン、INU(町田町蔵)のファンたちにコンサート会場で声がかかり、ギャラも出るからと川口市郊外に建設されたセットまで動員されたのだが、行ってみたところがとにかく寒く、地面は泥だらけで、あたり一面、火薬とガソリンなどの異臭が充満していた。
僕が振り当てられたのは、観客や暴徒を制圧する機動隊員役だった。「チッ、体制側かよ。」
ステージ上から遠藤ミチロウ(スターリン)が当時お約束だったブタの臓器を投げ、それをジェラルミンの盾で必死によけながら、後悔と、とにかく一刻も早く帰ることだけを考えていた。
さらには撮影中の騒音や爆発音を聞きつけて地元のヤンキーや暴走族が押しかけたり、通報で本物のポリが大挙やってきたりと、大混乱の現場だった。
結局ギャラはもらえず(2千円やのり弁が出たという説あり)、名簿の受付所が見当たらなかったため、完成した映画のエンドタイトルに名前も載らず、本当にくたびれ損の一夜だった。
そんなこともあって、完成試写会+記念ライブは行ったものの、その後40年近く一度も観返していない。
「土曜の夜だぜ!騒ごうぜ!」、、「花金」や「週休二日制」などまだない近未来のお話。
「兄貴!」 チキンレーサー(コント赤信号)とその女(室井滋)