このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
Kさんはざしき童子に会ったことがあるかと唐突に尋ねられた時は、あまりに思いがけなくて、もう一度聞き返してしまった。
なんでも、最近友人が岩手県北の金田一温泉にある、ざしき童子が出現することで有名な温泉旅館に宿泊して、とてもよかったからと彼女にもしきりに薦めているのだという。
「その旅館は以前火事で全焼していて、てっきり再建はないと思っていたよ。
ざしき童子には、会ったことがある。
僕の祖父も若いころ、大正時代に会ったことがあるらしく、そのざしき童子は若い女性だったそう。
一般的にざしき童子というとおかっぱで着物姿の少女のイメージだけれど、宮沢賢治の童話に登場するのは紋付き袴姿の男の子だし、金田一温泉のそれも、元々は南北朝時代の貴族の男の子だ。
僕が会ったざしき童子は、グレーのスーツを着た若い女性で、履歴書を携えていた。
あ、笑ったね。
思うに、ざしき童子はさまざまな容姿で時と場所を選ばずに現れるので、よほど注意していないと見逃してしまう。
実際、祖父と僕は会っているけれど、父はない。息子も会えるかどうかわからない。
でも一つ言えるのは、人を大事にしていればざしき童子に会えるかもしれないということ。
いつも丁寧に接し、一緒にいる短い時間を双方気分良く過ごせるよう心掛けていれば、会える確率は高くなるように思える。
ただね、ひとたびざしき童子に会ってしまったら、彼、あるいは彼女に見切られないよう、常に襟を正して生きなければならない。
去られた家はみな一様に傾いてしまうのだから。
ひょっとすると、そうならないようにと覚悟を持ってしっかりやるから、幸運が増すのかもしれないね。
え?僕がざしき童子かもしれないって?それはどうかな。」