昨年の台風19号で被害を被った県南の鉄工場のミニ特集をテレビで観た。
たしか、今年1月にも別の局の番組でこの会社を観た記憶がある。
グループ補助金で見積り金額3億円の工場を再建する、という内容だった。
まだ若い経営者のその熱っぽい表情は、かつて大震災直後に本市の多くの男たちの顔に浮かんでいたものとよく似ていて、とても不安な気持ちになった。
NHKの地方ドキュメンタリーや地方紙の特集企画で、グループ補助金を活用した石巻市や釜石市の企業の窮状および破綻が繰り返し報じられているが、自分自身、多額の二重ローンを経験してはっきり分かったことがある。
それは、大きな災害で負った大きな負債は、平時の事業ではとても返せない、という一点だ。
今から20年ほど前、一関市K町という小さな町が北上川の支流の氾濫で水没し、そこから復興バブルが起こったものの、その結末は、いっときの好況に沸いた建設会社がすべて倒産するという、惨事だった。
その時僕はずいぶん前に観たNHKのドキュメンタリー番組を思い出していた。
奥尻島が地震と火災から復興したけれど、工事が終わった後は巨大な堤防だけが残り、島民の多くは流出、収賄で逮捕された町長がヘリコプターで島外へ護送されるという、苦い結末だった。
3億円の自己負担分1/4=借入れは7500万円、僕のそれよりは少ないけれど、子供が会社を継ぐと言ってくれても、そんな気にはなれない金額である。
道の入り口や途中では分からないことだけに心配になったが、その鉄工場さんは地域の復旧復興の熱が冷めないうちに返済を終えてくれることを願うばかりだ。
グループ補助金の特集記事の中に、(ほとんど唯一の)成功例が記されていた。
石巻の女性経営者で、二つあった工場のどちらも流されたのを集約して、一つだけ再建した。
事業規模は縮小したものの、着実に復興を遂げており、時が満ちたらもう一つを自費で再建したいと語っているとのことだった。
思うに、最大のポイントは、経営者が女性だったということだ。
男性の意味のないプライドや見栄を持たず、時には負けを認め、今の自分の身の丈に合ったことを行なう。
僕もそうだったが、3つ流されたら3つ再建しないでどうするのだ、といった内外のヘンな熱気と圧力に巻かれてしまうことなく。
やはり、聡明な女性たちの判断やアドバイスに、われわれ男たちはいつも虚心に耳を傾けなければならないのだろう。