僕が大男であることはすでに何度か書いてきたが、地元紙の広告営業担当のOさんは身長こそわずかに僕より足りないものの、誰が見ても掛け値なしの巨漢だった。
だったと書いたのには訳がある。
お互い忙しい上にコロナ禍もあって夏以来、電話や伝言でのやりとりが続き、年末に4か月ぶりで会った彼の顔は、マスク着用でもはっきりわかるほど小さくほっそりとなっていた。
驚いて病気でも患ったのかと尋ねると、ダイエットしたんです、と答えた。
120キロ超だった体重を95キロまで落としたという。
元々は75キロだったのが、毎回食べ過ぎているうちに増えて行ったらしい。
僕もUターンしてきた時は185センチ、68キロだった。けれども、そんな青い顔のやせっぽちだとほとんど肉体労働の家業では半日と持たず、対策として食べて体を大きくしたのだ、と話すと、分かります分かります、と相変わらずの大声で笑った。
なんでも食事量を6割に減らし、ランニングと筋トレでここまでにしたのだそう。
やっぱり米食はてきめん太るよね、と二人で頷きながらまた笑った。
新しく当法人の担当になった20代の銀行マンYさんは187センチあるそうで、本当に久しぶりに見おろされる感覚を僕にくれた。
その日必要な書類にサインした後、僕は思い切って尋ねた。
Yさん、スーツのサイズはY9くらいですか?僕は若いころY7だったのですが、今はAB8でピッタリなんですよ。
彼の答えに驚いた。
「袖丈が合わなくて、全部オーダーです。」
それは―ある意味うらやましいですね。僕は残念ながら合うサイズがあるので吊るしとオーダーが半々くらいです。ちなみにシャツは43-86(首回りと桁丈)です。
「あ、そうですか、私は既製品だと一応43-90ですが、やっぱりしっくりこないんですよ。」
僕はさらに目を丸くした。
そして自分のことを棚に上げて思った、いやー、大男ってホントいろいろ驚かせてくれるよ。