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このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

「墨東綺譚」

2021年09月27日 | 日記

 山本富士子の映画は、やはりミス日本だけあって、時代劇や和服姿の純日本調現代劇・文芸作品が多い。

ざっと挙げてみると、林不忘の「丹下左膳」、尾崎紅葉の「金色夜叉」、泉鏡花の「湯島の白梅」(「婦系図」)、「白鷺」、「日本橋」、「歌行燈」、志賀直哉の「暗夜行路」、井上靖の「氷壁」、(彼女が映画界から逐われる原因となった)「憂愁平野」、谷崎潤一郎の「春琴抄」、そして「細雪」。ほかに珍しいところでは、川端康成の「川のある下町の話」、高見順の「如何なる星の下に」。

 昭和35年(1960年)制作の「墨東綺譚」も彼女が主演だった。

映画の印象は永井荷風の原作に驚くほど近かったのだが(たぶん大映ではなく東宝作品だからか)、薄幸のヒロインを演じる山本が顔も手も体もまるまるとして貫禄十分で、玉ノ井にこんな健康的な女娼など居そうにないと思えてしまう。

共演が鶴のようにやせて深刻な芥川比呂志だからよけい目立つのかもしれない。

 「墨東綺譚」は1992年に新藤兼人監督で再映画化された。主役の津川雅彦が生理的に苦手なため封切時には観なかったが、お雪を演じた墨田ユキはとても雰囲気があった。

その後、NHKで94年正月に放映された「新藤兼人が読む・正岡子規の病牀六尺」というドラマの中で、正岡律(妹)を演じていた。「坂の上の雲」で菅野美穂が演じた役柄だ。

献身的な菅野のキャラクターとは違い、死の床にあって情緒不安定な正岡子規(木場勝巳)を母八重(渡辺美佐子)と二人して励まし、時にからかったりいなしたりする軽妙な役どころがこれまたよかった。夏目漱石は風間杜夫が、高浜虚子は塩野谷正幸が演じていた。

 

 

 

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