私たちデイサービスの職員は、利用者様の朝夕の送迎の際に家族様と接することも多い。
その短いひとときの間に挨拶を交わし、連絡ノートでは伝えきれない申し送りや、時には家族様から相談事を受けることもある。
今朝は家族様の体の悩みごとというか愚痴だった。
加齢のせいか乾燥した肌がどうにもむずがゆく、無意識のうちに強く掻いてあちこち掻きこわしてしまった。
しかたなく皮膚科を受診すると、ステロイド系の軟膏を出されたのだが、医師のアドバイスはたったひと言、「綿のものを着なさい」だったのよ、そう言われてもねえ、と彼女は笑った。
このエピソードを、打ち合わせのついでにNPO法人なごやか理事長に話したところ、予想以上に面白がられた。
「確かに、女性は入り口からまずストッキングの問題があるから、綿100%のものをと言われても難しいかもしれないね。
かく言う僕は、子供のころから病気とまではいかないものの肌がとても弱くて、自分で洋服を買うようになった十代半ばからは、化学繊維のものをほとんど身に着けていないんだ。
セーターやカーディガンは一枚も持っていない。化繊が入っていなくても、首や手首がチクチクして。
今も、下着は上下コットンで、シャツもそう。スーツはウール100%に裏地はキュプラだ。キュプラは綿素材だから安心。ちなみにレーヨンはパルプが原料だよ。
マフラーはシックな柄が入ったシルク。信じられないだろうけど、意外と安価だし、薄い割に暖かいんだ。
唯一の例外は、靴下だ。こればかりは、綿だけ、ウールだけだと(改良が進んではいるものの)強度不足から靴の中で動いたりして具合が悪い。それでやむを得ず、化繊入りのものを履いている。
ともあれ、こんな風に男性なら、ずぼらな僕ですらも、綿、毛、絹、麻、革など混ざりものなしだけを着るのことができるのだがね。しかも、大した出費なしで。
それにしても、そのドクターのアドバイスは僕のこれまでの歩みを肯定されたようで、すごく嬉しいな。教えてくれてありがとう!」
シャツ
スーツ。「ベンベルグ」は旭化成の登録商標。
ステンカラーコート
チェスターコート
ニットシャツ