モンテ・クリスト伯はパリにおもむき、かたきの一人で今はモルセール伯爵と名乗っているフェルナンの息子アルベール子爵を訪ねます。ダングラールの娘ウージェニーと婚約中のアルベールをからかいながら居合わせたパリの伊達男たちも、モンテ・クリスト伯の機知と物腰の貴族的な立派さに感嘆します。従軍先で新聞記者シャトー・ルノーを助けた若い軍人マクシミリヤン・モレルは伯爵に好感を持ちますが、モルセール伯爵は鈍感で儀礼的です。アルベールの母メルセデスだけは、モンテ・クリスト伯が誰であるのか、気づいています。このへんの会話は、実に多くの伏線を含みながら、互いの関係を描いていきます。
続いて物語の描写はモンテ・クリスト伯の使用人のほうに移っていきます。ブゾーニ神父から紹介された有能な従僕のベルトゥッチョは、パリ近郊のオートゥイユの屋敷で、ヴィルフォールがさる若い未亡人との間に生まれたばかりの嬰児を生き埋めにしたところを襲撃し、コルシカ流の復讐をしていたことを伯爵に告白します。しかし、この嬰児を助け出したのはどうやら不幸の種だったようで、成長するにつれて悪の素質が花開き、育ててくれた養母を火だるまにして金を奪い逃走します。ベルトゥッチョは、ベネディットと名づけたこの悪徳養子の行方を探しているのでした。伯爵は、無実を知りながら14年間も投獄した検事ヴィルフォールへの復讐のために、ベルトゥッチョの因縁を雇ったのでしょう。しかも彼は、さえない旅館の親父となっていたかたきの一人カドルッスの、欲に目がくらんだ宝石商殺しの目撃者だったのですから。
次にモンテ・クリスト伯は、莫大な財力にものを言わせて、今は男爵となっているダングラールの銀行で無制限信用貸出を要求します。吝嗇で欲深なダングラールを、札束でひっぱたいたようなものでしょう。ナルゴンヌ侯爵未亡人からダングラールと再婚し男爵夫人となったエルミーヌが自慢にしていた連銭葦毛の名馬が暴走したところを、現在のヴィルフォール夫人と息子は、モンテ・クリスト伯の使用人アリに助けられます。若いヴィルフォール夫人はすっかり伯爵のファンになりますが、息子のほうはなんとも小憎らしい。助けてくれたヌビア人のアリを、面前で侮辱するのですから。それをたしなめもしない過保護のエロイーズ・ド・ヴィルフォール夫人の心がけもひどいものです。
優雅な上流階級にひそむ悪徳の毒に辟易したモンテ・クリスト伯が、ひとときの憩いを求めたのは、美しいエデのひたむきな愛情と、マクシミリヤン・モレルとその妹夫婦の家庭でした。ここは信頼と感謝の家です。そこで聞いたモレル氏の臨終の言葉は、感動的です。
「マクシミリヤン、あれはエドモン・ダンテスだったのだ!」
死の床で、考えに考え抜いた結論だったのでしょう。死んだはずのエドモン・ダンテスが、自分の破滅を救うためにあの世から来てくれた。それが、死に向かうモレル氏にきらめいた啓示の光だったのでしょうか。それとも、ダンテスは生きている、と確信した結果だったのでしょうか。
続いて物語の描写はモンテ・クリスト伯の使用人のほうに移っていきます。ブゾーニ神父から紹介された有能な従僕のベルトゥッチョは、パリ近郊のオートゥイユの屋敷で、ヴィルフォールがさる若い未亡人との間に生まれたばかりの嬰児を生き埋めにしたところを襲撃し、コルシカ流の復讐をしていたことを伯爵に告白します。しかし、この嬰児を助け出したのはどうやら不幸の種だったようで、成長するにつれて悪の素質が花開き、育ててくれた養母を火だるまにして金を奪い逃走します。ベルトゥッチョは、ベネディットと名づけたこの悪徳養子の行方を探しているのでした。伯爵は、無実を知りながら14年間も投獄した検事ヴィルフォールへの復讐のために、ベルトゥッチョの因縁を雇ったのでしょう。しかも彼は、さえない旅館の親父となっていたかたきの一人カドルッスの、欲に目がくらんだ宝石商殺しの目撃者だったのですから。
次にモンテ・クリスト伯は、莫大な財力にものを言わせて、今は男爵となっているダングラールの銀行で無制限信用貸出を要求します。吝嗇で欲深なダングラールを、札束でひっぱたいたようなものでしょう。ナルゴンヌ侯爵未亡人からダングラールと再婚し男爵夫人となったエルミーヌが自慢にしていた連銭葦毛の名馬が暴走したところを、現在のヴィルフォール夫人と息子は、モンテ・クリスト伯の使用人アリに助けられます。若いヴィルフォール夫人はすっかり伯爵のファンになりますが、息子のほうはなんとも小憎らしい。助けてくれたヌビア人のアリを、面前で侮辱するのですから。それをたしなめもしない過保護のエロイーズ・ド・ヴィルフォール夫人の心がけもひどいものです。
優雅な上流階級にひそむ悪徳の毒に辟易したモンテ・クリスト伯が、ひとときの憩いを求めたのは、美しいエデのひたむきな愛情と、マクシミリヤン・モレルとその妹夫婦の家庭でした。ここは信頼と感謝の家です。そこで聞いたモレル氏の臨終の言葉は、感動的です。
「マクシミリヤン、あれはエドモン・ダンテスだったのだ!」
死の床で、考えに考え抜いた結論だったのでしょう。死んだはずのエドモン・ダンテスが、自分の破滅を救うためにあの世から来てくれた。それが、死に向かうモレル氏にきらめいた啓示の光だったのでしょうか。それとも、ダンテスは生きている、と確信した結果だったのでしょうか。