モーツァルトのピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」K.271について、先に「目覚めの音楽にモーツァルトは適さない?」とする記事を書きました(*)が、以後しばらく通勤の音楽として毎日聞いておりました。これなら、たいへんに快適です。演奏は田部京子(Pf)さんとヘスス・ロペス=コボス指揮ローザンヌ室内管弦楽団で、1995年6月、スイスでデジタル録音されたCD(DENON COCO-70537)です。
第1楽章、アレグロ、変ホ長調。静けさの中から、オーケストラが「皆のもの!威儀を正せ」とばかりに開始宣言すると、すぐに人懐こくピアノが入り、再びオーケストラがえらそうに鳴るのですが、ピアノは相変わらず人懐こく、「私のほうが人気者なのよ!」とばかりに天衣無縫の活躍を始めます。なお、この録音ではモーツァルト自身のカデンツァが用いられているそうです。
第2楽章、アンダンティーノ。いかにもモーツァルトのハ短調らしい開始です。荘重な雰囲気の中で、ピアノも時には表現力豊かに、また時にはつぶやくように、悲しげなメロディーを歌います。
第3楽章、ロンド:プレスト、変ホ長調。雰囲気はがらりと変わり、ピアノの名技性を誇示するように、沸き立つような快速演奏になります。オーケストラも、時に競い合うような激しさを見せます。中間部のメヌエットは、弦のピチカートに乗せてピアノがゆるやかに散歩。ただし、ためいきが出るような見事な足取りです。そして、再びオケと独奏ピアノの協奏曲らしい快速演奏の再現。献呈者となった当時の名ピアニスト、ジュノーム嬢の腕前と音楽性は、相当なものだったのでしょう。
先ごろ文化勲章を受けられた吉田秀和さんは、『私の好きな曲』の中でこの曲を取り上げています。しかし、その取り上げ方は普通ではありません。手元の新潮文庫の目次を例に取ると、同じモーツァルトのクラリネット協奏曲が最も少なく12頁で終わっており、大部分の曲がおおむね17~18頁をさいて書かれているのに対し、この「ジュノーム」協奏曲だけは、なんと50ページをあてているのです。本文の内容も、学生時代に楽譜を購入し、ひと夏をこの楽譜を読むことに費やした話から初めながら、モーツァルトの革新性について詳細に説明しています。数十年間の蓄積を展開した解説や考察のあとを読むと、一種、厳粛な気持ちになります。
写真は、お堀を越えてのぞむ鶴岡市の大寶館。昭和60年までは市立図書館として使われていました。現在は、高山樗牛や田沢稲舟、相良守峯、丸谷才一、藤沢周平といった鶴岡市にゆかりの文人たちを展示しています。この北側に、藤沢周平ゆかりの記念館を設ける話がまとまったとのことです。これも楽しみです。
(*):目ざめの音楽にモーツァルトは適さない?
第1楽章、アレグロ、変ホ長調。静けさの中から、オーケストラが「皆のもの!威儀を正せ」とばかりに開始宣言すると、すぐに人懐こくピアノが入り、再びオーケストラがえらそうに鳴るのですが、ピアノは相変わらず人懐こく、「私のほうが人気者なのよ!」とばかりに天衣無縫の活躍を始めます。なお、この録音ではモーツァルト自身のカデンツァが用いられているそうです。
第2楽章、アンダンティーノ。いかにもモーツァルトのハ短調らしい開始です。荘重な雰囲気の中で、ピアノも時には表現力豊かに、また時にはつぶやくように、悲しげなメロディーを歌います。
第3楽章、ロンド:プレスト、変ホ長調。雰囲気はがらりと変わり、ピアノの名技性を誇示するように、沸き立つような快速演奏になります。オーケストラも、時に競い合うような激しさを見せます。中間部のメヌエットは、弦のピチカートに乗せてピアノがゆるやかに散歩。ただし、ためいきが出るような見事な足取りです。そして、再びオケと独奏ピアノの協奏曲らしい快速演奏の再現。献呈者となった当時の名ピアニスト、ジュノーム嬢の腕前と音楽性は、相当なものだったのでしょう。
先ごろ文化勲章を受けられた吉田秀和さんは、『私の好きな曲』の中でこの曲を取り上げています。しかし、その取り上げ方は普通ではありません。手元の新潮文庫の目次を例に取ると、同じモーツァルトのクラリネット協奏曲が最も少なく12頁で終わっており、大部分の曲がおおむね17~18頁をさいて書かれているのに対し、この「ジュノーム」協奏曲だけは、なんと50ページをあてているのです。本文の内容も、学生時代に楽譜を購入し、ひと夏をこの楽譜を読むことに費やした話から初めながら、モーツァルトの革新性について詳細に説明しています。数十年間の蓄積を展開した解説や考察のあとを読むと、一種、厳粛な気持ちになります。
写真は、お堀を越えてのぞむ鶴岡市の大寶館。昭和60年までは市立図書館として使われていました。現在は、高山樗牛や田沢稲舟、相良守峯、丸谷才一、藤沢周平といった鶴岡市にゆかりの文人たちを展示しています。この北側に、藤沢周平ゆかりの記念館を設ける話がまとまったとのことです。これも楽しみです。
(*):目ざめの音楽にモーツァルトは適さない?