電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

シベリウス「交響曲第5番」を聴く

2011年09月15日 06時02分15秒 | -オーケストラ
最近の通勤の音楽は、シベリウスの「交響曲第5番」です。カラヤン指揮ベルリンフィルの演奏で、第4番とのカップリングです。カラヤンは、シベリウスを何度も録音しているようですが、このCDに収録されているのは、1976年9月のEMI録音(CD:CE28-5186)です。

添付のリーフレットによれば、この曲は、1914~15年、シベリウス生誕50年の記念行事の中心として計画された祝賀演奏会の曲目として作曲され、その演奏会で初演されたのだそうです。1919年に改訂を加え、これが決定稿となったとのこと。この演奏は、たぶんこの決定稿に基づいたものなのでしょう。時代的には、第一次世界大戦とロシア革命の激動期にあたりますが、ロシア、オーストリア、ドイツの三つの帝国が崩壊し、1917年にはフィンランドが独立を果たします。作曲家シベリウスにとっても、最も油の乗り切った頃の力作です。たぶん、「フィンランディア」の作曲家シベリウスの生誕50年を祝う記念行事とは、フィンランドの民族主義運動の象徴でもあったのでしょう。

楽器編成は、Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(4), Tp(3), Tb(3), Timp., 弦5部という、一部拡大された二管編成となっています。

第1楽章:テンポ・モルト・モデラート~ラルガメンテ~アレグロ・モデラート。伸びやかな、ゆったりした出だしは、北欧の大自然の夜明けか、春の到来を連想させるような、素朴で牧歌的なものです。しかし、曲調は暗く不安気で陰鬱なものから、明るい農民舞曲ふうなものに変わり、楽章の終わりは堂々たるものです。
第2楽章:アンダンテ・モッソ、クアジ・アレグレット。ヴィオラとチェロとが、ピツィカートで、森の小動物か、あるいは鉄腕アトムの妹のウランちゃんが小走りに歩くような旋律を奏でます。なんともチャーミング。これが主題となり、あたたかな雰囲気の変奏が展開されます。こういう音楽は、カラヤンはうまいですね!
第3楽章:アレグロ・モルト。ヴィオラの忙しいトレモロで始まり、ゆったりした旋律が堂々と立ち上がります。ひそひそ噂話が広がるようなトレモロと、やや悲しげでヒロイックな旋律が交代するように展開され、ドラマティックな盛り上がりを見せて、六つの和音で曲は終了します。

カラヤンが指揮した、ベルリン・フィルという大ヴィルトゥオーゾ・オーケストラによる、重厚で壮大な演奏と言ってよいでしょう。北欧の冷涼で神秘的な側面が語られることの多いシベリウスにしては、伸びやかで祝祭的な気分が現れた、繊細・精緻な作品であり、演奏であると感じます。シベリウスの作品の中では、好きなものの一つです。

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