電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『春霞ノ乱~居眠り磐音江戸双紙(40)』を読む

2012年11月01日 06時02分17秒 | -佐伯泰英
双葉文庫の新刊で、佐伯泰英著『春霞ノ乱~居眠り磐音江戸双紙(40)』を読みました。表紙は舟着き場での祖母と孫の遭遇の場面のようで、青緑を基調とした絵は、いかにも時代を感じさせます。

第1章:「思わぬ来訪者」。国家老の奥方の江戸入りとは、それだけで敵方に大きな攻撃材料を与えるようなものでしょうに、そんなことは本作のような講談調大江戸エンターテインメントには問題外、ひたすら祖母と孫の対面の場面を盛り上げます。
第2章:「突き傷」。関前藩の新造船で阿片の抜け荷が行われているとの疑惑が浮上し、藩主実高と国家老・坂崎正能とが合意の上で、江戸屋敷に直接乗り込むことを計画したらしいことが判明。ところが、正能は何者かに拉致されてしまいます。中居半蔵が命じていた陰目付もまた、背中からの突きで殺害されてしまいます。
第3章:「必殺の突き」。坂崎正能にひそかに随行した者の情報によれば、かつて同じ突き傷で死者が出た船にも乗っていた者は二名。帳付方の内藤朔次郎を試しますが、尻尾を出しません。江戸家老の名前は、何かやりかねない鑓兼参右衛門というもので、怪しさ満開です。
第4章:「正能の行方」。父の行方を探索する磐音は、江戸家老の鑓兼参右衛門の身元調査を始めます。紀伊藩の御目付の情報をたどると、紀伊和歌山の伊丹家から豊後関前の鑓兼家に養子に入ったことなどをつかみます。また、紀伊徳川家当主の治貞公直々に、紀伊藩江戸屋敷の剣術指南を命じられます。そして、正能の行方は、意外な場所でした。
第5章:「照埜の憂い」。磐音、平助、弥助、霧子、辰平、利次郎らによる正能救出作戦と、関前藩新造船・明和三丸における争闘が描かれて、前編の幕となります。どうやらこの事件は、まだまだ後まで尾を引きそうです。



それにしても豊後関前藩というのは、なんと争い事が絶えない藩であることか、という批判を予想したのか、小藩の阿片抜け荷も実は田沼意次・意知父子がらみで、江戸家老も田沼につながる人物ときては、いくらなんでも出来杉君でしょう(^o^)/
それほどに用意周到な田沼父子が、公儀隠密も動かせる立場にありながら、なぜ金兵衛や由蔵や幸吉、おそめ等の身近な人々を人質としないのか、案外に田沼さん(*)もうっかり者なのでしょう、きっと(^o^)/

(*):時代小説における田沼意次の描き方~「電網郊外散歩道」2009年1月
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