平成24年に本屋大賞を受賞した作品、三浦しをん著『舟を編む』を読みました。
第1章:玄武書房辞書編集部の荒木公平は、監修者の松本先生との二人三脚で、国語辞典『大渡海』の編纂作業を続けて来ましたが、定年退職を前にして、後任となる編集担当者を探しておかなければならないことに気づきます。ようやく探し出したのは、なんとも風采のあがらない、馬締光也という男でした。
第2章:馬締光也の日常生活と恋愛、辞書編集者としての適性が描かれます。真面目な馬締、タケ(竹)おばあちゃんの孫娘が香具矢(かぐや)さんで、「月の裏」という料理屋で板前修行中というのですから、まさに「竹取物語」の世界。伝統的駄洒落保存会会員の当方といたしましては、思わずうれしくなってしまいます(^o^)/
第3章:馬締とは正反対の性格の西岡正志が、国語辞書の編纂事業から離れ、広告宣伝部に移ることになり、悩みます。あまり向いているとは思わなかった実務とは別に、辞書編纂の事業に別の角度から愛着を感じるようになっていたのでした。
第4章:新人が辞書編集部に配属になります。女性向けファッション雑誌編集部から来た岸辺みどりです。彼女の役割は、辞書に最適な用紙の選定。あけぼの製紙の宮本と組んで、究極の辞書用紙を開発選定しながら、ちゃっかり恋人もできてしまうあたりが、いかにもな展開ではあります。
第5章:四校の段階で、一語欠落が判明し、泊まり込みで校閲作業のやり直しに突入します。辞書編纂も大詰めです。そこへ松本先生が入院したとの報せが入り、馬締は社外編集者となっている荒木とともに、試し刷りを持って見舞いに行きます。大きなプロジェクトの完成の喜びと悲しみ。見事なエンディングです。
○
うーむ、なるほど。本屋大賞を受賞したのも頷けます。個人的には『ピエタ』(*)が一押しでしたが、国語辞書とヴィヴァルディの楽譜とでは、前者のほうがより一般性があるのは否めません。一冊の本の中で2組が結婚し1組が恋愛関係に入るという展開は、読者の期待に応えたのか作者の好みなのかはわかりませんが、よりハッピーエンドに近い『舟を編む』のほうが、悲哀の色濃い『ピエタ』よりも人気が出たのは無理もないことかと思います。
(*):大島真寿美『ピエタ』を読む~「電網郊外散歩道」2011年7月
【追記】
主人公となる馬締光也には、だれかモデルがいるのではないかと感じていました。さすがは Google です。それらしい取材記事(*2)を探してくれました。
(*2): 朝日新聞デジタル:「舟」を編む 果てはない
第1章:玄武書房辞書編集部の荒木公平は、監修者の松本先生との二人三脚で、国語辞典『大渡海』の編纂作業を続けて来ましたが、定年退職を前にして、後任となる編集担当者を探しておかなければならないことに気づきます。ようやく探し出したのは、なんとも風采のあがらない、馬締光也という男でした。
第2章:馬締光也の日常生活と恋愛、辞書編集者としての適性が描かれます。真面目な馬締、タケ(竹)おばあちゃんの孫娘が香具矢(かぐや)さんで、「月の裏」という料理屋で板前修行中というのですから、まさに「竹取物語」の世界。伝統的駄洒落保存会会員の当方といたしましては、思わずうれしくなってしまいます(^o^)/
第3章:馬締とは正反対の性格の西岡正志が、国語辞書の編纂事業から離れ、広告宣伝部に移ることになり、悩みます。あまり向いているとは思わなかった実務とは別に、辞書編纂の事業に別の角度から愛着を感じるようになっていたのでした。
第4章:新人が辞書編集部に配属になります。女性向けファッション雑誌編集部から来た岸辺みどりです。彼女の役割は、辞書に最適な用紙の選定。あけぼの製紙の宮本と組んで、究極の辞書用紙を開発選定しながら、ちゃっかり恋人もできてしまうあたりが、いかにもな展開ではあります。
第5章:四校の段階で、一語欠落が判明し、泊まり込みで校閲作業のやり直しに突入します。辞書編纂も大詰めです。そこへ松本先生が入院したとの報せが入り、馬締は社外編集者となっている荒木とともに、試し刷りを持って見舞いに行きます。大きなプロジェクトの完成の喜びと悲しみ。見事なエンディングです。
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うーむ、なるほど。本屋大賞を受賞したのも頷けます。個人的には『ピエタ』(*)が一押しでしたが、国語辞書とヴィヴァルディの楽譜とでは、前者のほうがより一般性があるのは否めません。一冊の本の中で2組が結婚し1組が恋愛関係に入るという展開は、読者の期待に応えたのか作者の好みなのかはわかりませんが、よりハッピーエンドに近い『舟を編む』のほうが、悲哀の色濃い『ピエタ』よりも人気が出たのは無理もないことかと思います。
(*):大島真寿美『ピエタ』を読む~「電網郊外散歩道」2011年7月
【追記】
主人公となる馬締光也には、だれかモデルがいるのではないかと感じていました。さすがは Google です。それらしい取材記事(*2)を探してくれました。
(*2): 朝日新聞デジタル:「舟」を編む 果てはない