電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ハイドンの「太陽四重奏曲集」から弦楽四重奏曲第33番ト短調を聴く

2013年10月15日 06時02分03秒 | -室内楽
通勤の音楽に、ハイドンの「太陽四重奏曲集」から、弦楽四重奏曲第33番ト短調、作品20-3を聴いています。もちろん、10月19日(土)に山形市の文翔館議場ホールで予定されている、山形弦楽四重奏団(*1)第49回定期演奏会のための予習です。



聴いているCDは、DENON のクレスト1000シリーズから、COCO-70733~4 という型番のもので、二枚組1,500円というお財布に優しいもの(^o^)。ウルブリヒ弦楽四重奏団による演奏です。添付のリーフレットによれば、作曲年は、1772年と記載がありますから、1732年生まれのハイドンは、ちょうど40歳になります。この時代のハイドンは、後年の優しく穏やかな作風からは意外なほどに、こういう内面的な激しさや憂愁を見せることがあり、この曲集でも顕著に感じられます。おそらく「作曲家が表情を強め、かつ深めようとしている証拠」という大宮真琴氏の指摘のとおりなのでしょう。

第1楽章:アレグロ・コン・スピリト、4分の2拍子、ト短調、ソナタ形式。ト短調の出だしはかなり強い印象があります。そしてこの主題が、全曲を通して曲の性格の一面を強く印象づけているように感じます。いっぽう、もう一つの主題はやや明るい性格を持ち、曲全体が暗鬱な印象となることから逃れているようです。
第2楽章:メヌエット。アレグレット、4分の3拍子、ト短調。メヌエットというにしてはいささか暗い楽章です。曲は前進する活力を持ち、同様に明暗を描き分けますが、全体的には憂愁の色調が支配的で、終わりは結末が明瞭でないままに、自然に次の楽章に移っていきます。
第3楽章:ポコ・アダージョ、4分の3拍子、ト長調。唯一の長調の楽章で、この曲のもう一つの性格が、この楽章のような穏やかな慰めを感じさせるものです。曲全体の中では最も長い演奏時間を要する楽章で、でも、ずっと聴いていたいと思ってしまう、とくに後半部でチェロの歌う旋律がたいへんに魅力的な音楽です。これは、ぜひ生で聴きたい!と強く思ってしまいます。
第4楽章:フィナーレ、アレグロ・モルト、4分の4拍子、ト短調。大宮真琴氏の言葉を借りれば「ソナタ形式の枠組みの中に対位法的な書法のタッチを盛り込」んだ緊密さを持った短い楽章で、最後はフッと消えるように終わります。これも、印象的な終結です。

1970年の4月に、ドレスデンのルカ教会で収録されたアナログ録音で、制作は Heinz Wegner、録音担当が Horst Kunze、ドイツ・シャルプラッテンによるもの。DENON はオイロディスク社からライセンスを得たもののようです。ウルブリヒ弦楽四重奏団は、ドレスデンのシュターツカペレのメンバーによって組織されたもので、レコード会社の宣伝政策上は地味な存在ですが、演奏は見事なものだと感じます。

参考までに、CDに記載された演奏時間を示します。
■ウルブリヒ弦楽四重奏団
I=4'04" II=4'35" III=7'00" IV=2'40" total=18'19"

(*1):山形弦楽四重奏団公式ブログ

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