母屋のリフォームのために書棚を整理していたときに処分し残した本の中から、『リーダーズダイジェスト選集:世界の名作16編』を手に取り、読み返してみました。この本は、わが祖父のためにその弟(大叔父)の一人が贈ってくれたものらしいです。そういえば、子供のころに『リーダーズダイジェスト』というB6判くらいの小冊子が毎月送られてきていましたが、あれも大叔父が兄のために送ってくれていたもののようでした。
1957年当時の世界のベストセラーを要約し、単行本としてまとめた本書の内容は、次のとおりです。
たしか、初めて読んだのは中高生の頃だと思いますが、目次を見ただけでパッと記憶が甦るものがいくつかありました。よほど印象が強かったのでしょう。
今の視点でとりわけ注目されるのは、「皇太子と私」でしょうか。これは、現在の平成の天皇陛下がまだ皇太子だった頃、1946(昭和21)年に、昭和天皇の依頼でアメリカ人の家庭教師エリザベス・ヴァイニング夫人が招かれて来日した際に経験した四年間の回想記です。
侍従の顔色をうかがっていたローティーンの皇太子が、日本語を全く使わない英語のレッスンを通してアメリカ流のスタイルを身につけて行く。同級生と隔意なく親しんだり、同年代の外国人の子供たちと交流したりする中で、それまで宮内省の役人たちがしきたりとして押し付けていたものから少しずつ離れ、自由の価値を見出して行く、そういうエピソードが続きます。少年皇太子が占領軍のマッカーサー司令官と面会する際の様子は、自立しようとする少年の意識の中に、敗戦国の未来を見ようとする目が感じられるようです。
『死よ驕るなかれ』は、内幕ものの作家ジョン・ガンサーが、脳腫瘍に侵された息子の闘病のようすと、その精神の輝きを記録したものです。まさしく同年代の頃に本書を読み、大きな影響を受けました。要約ではなく全文を読みたいと、岩波新書の『死よ驕るなかれ』を購入したのは、たしか高一の頃ではなかったか。
今思えば、脳腫瘍の診断と治療はずいぶん進歩し変化しているのだろうとは思いますが、子どもが病気になりそれを見守る立場になった親の心情は、時代や洋の東西を問わないものでしょう。主人公である若者の立場ではなく、親の視点から読み返し、思わずホロリとなり、また厳粛な気持ちになりました。
1957年の刊行から2017年の現在まで60年。読み返してみて、実に感銘深いものがありました。
1957年当時の世界のベストセラーを要約し、単行本としてまとめた本書の内容は、次のとおりです。
- 楽園に生まれて フォン・テンプスキー
- 皇太子と私 エリザベス・ヴァイニング
- 白光に輝く天才 C.B.ウォール
- コンチキ号漂流記 トール・ヘイエルダール
- 1ダースなら安くなる F.B.ギルブレイスII世他
- 一天才と共にした冒険 アレイン・アイルランド
- 草原に生きる ラルフ・ムーディ
- 天から降ってきた1セント マックス・ウィンクラー
- 秘境に降りた婦人部隊員 M.ヘースティングス
- 名犬物語 ジョン T. フット
- 死よ驕るなかれ ジョン・ガンサー
- 私はモントゴメリー原水の身代わり クリフトン・ジェームズ
- 新米おやじ活躍記 ジョン・ファント
- 卵と私 ベティー・マクドナルド
- 海のロマンス レイチェル・カースン
- トレーラー自動車放浪記 クリントン・トゥイス
たしか、初めて読んだのは中高生の頃だと思いますが、目次を見ただけでパッと記憶が甦るものがいくつかありました。よほど印象が強かったのでしょう。
今の視点でとりわけ注目されるのは、「皇太子と私」でしょうか。これは、現在の平成の天皇陛下がまだ皇太子だった頃、1946(昭和21)年に、昭和天皇の依頼でアメリカ人の家庭教師エリザベス・ヴァイニング夫人が招かれて来日した際に経験した四年間の回想記です。
侍従の顔色をうかがっていたローティーンの皇太子が、日本語を全く使わない英語のレッスンを通してアメリカ流のスタイルを身につけて行く。同級生と隔意なく親しんだり、同年代の外国人の子供たちと交流したりする中で、それまで宮内省の役人たちがしきたりとして押し付けていたものから少しずつ離れ、自由の価値を見出して行く、そういうエピソードが続きます。少年皇太子が占領軍のマッカーサー司令官と面会する際の様子は、自立しようとする少年の意識の中に、敗戦国の未来を見ようとする目が感じられるようです。
『死よ驕るなかれ』は、内幕ものの作家ジョン・ガンサーが、脳腫瘍に侵された息子の闘病のようすと、その精神の輝きを記録したものです。まさしく同年代の頃に本書を読み、大きな影響を受けました。要約ではなく全文を読みたいと、岩波新書の『死よ驕るなかれ』を購入したのは、たしか高一の頃ではなかったか。
今思えば、脳腫瘍の診断と治療はずいぶん進歩し変化しているのだろうとは思いますが、子どもが病気になりそれを見守る立場になった親の心情は、時代や洋の東西を問わないものでしょう。主人公である若者の立場ではなく、親の視点から読み返し、思わずホロリとなり、また厳粛な気持ちになりました。
1957年の刊行から2017年の現在まで60年。読み返してみて、実に感銘深いものがありました。