電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

上田岳弘『私の恋人』を読む

2017年05月18日 06時01分17秒 | 読書
新潮社刊の単行本で、上田岳弘著『私の恋人』を読みました。2015年の6月に1刷が刊行されており、私が手にしたのは2017年2月の第3刷です。帯カバーには「第28回三島賞受賞作」とか「アメトーク!読書芸人で又吉直樹さんが大推薦!」などの惹句が並びます。一応、新刊に近いので、ネタバレしないようにあらすじは省略します。

物語は、「はるか10万年前から、何度も生まれ変わり、運命の恋人を探し続ける」存在としての「私」の話です。「10万年前、クロマニョン人だった私は、並外れた想像力でその後の世界情勢を洞窟の壁に書きつけながら、未来に息づくひとりの女性のことを考え」る井上由祐の前に一人の女性が現れた後のラブストーリーという位置づけの、複数の記憶を持つ意識の物語。

もちろん、理系の石頭(当方)には、クロマニヨン人から現代まで、DNAの連続性は保たれているのかとか、歴代の記憶のうち、その特定の記憶が保たれる理由は何なのかとか、脳内に多数の疑問符が点滅しながら読むことになる、そういうお話です。まあ、そこは「そういうお話なんだよ」ということにして読み進めますが、おもしろいけれどなんだか不思議な読後感です。

10万年前の記憶を持つ人が、どうして自然や気候や文明のことではなく、手っ取り早く女性のことに興味をフォーカスするのか。それは多分、作者が若いからなのでしょう。もっと年寄りならば、特定の女性よりも、もっと別のことに興味をフォーカスするような気がします(^o^)/

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