電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

筆記具の多様性は実は軸のデザインの多様性

2012年11月15日 06時01分15秒 | 手帳文具書斎
手元に集まった様々な筆記具の多様性には我ながら驚き呆れてしまうほどですが、ふと思いがけない事実に気づいてしまいました。例えば

Jetstream
Jetstream ラバー軸
Jetstream 3色
Jetstream 4+1
Jetstream インサイド・ピュアモルト
StyleFit - Jetstream

これらは、黒や青などのインクが共通で、多種多様な軸に対応しているだけだ、ということです。0.9mmとか0.5mmなどの違いがありますが、事情はシャープペンシルでも同じことで、同じシャープ芯を使って、様々な軸が展開されているだけのことです。

なるほど、筆記具の多様性とは見かけのものであって、実は軸のデザインの多様性なのではないか。音楽で言えば

「インクの主題による変奏曲」

のようなもので、筆記具においても多彩なヴァリエーションを楽しむべきものなのかもしれません。

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藤沢周平『長門守の陰謀』を読む

2012年11月14日 06時02分39秒 | -藤沢周平
少し前の出張の際に、藤沢周平『長門守の陰謀』を読みました。文春文庫の新装版は活字も大きく明瞭で、たいへん読みやすく感じられます。

第1話:「夢ぞ見し」。楽しい話です。藩主の交代に絡む相同の結末までを、妻の側から見た形で描かれます。明朗で屈託のない若い武士が居候して、少しばかり様々な夢を見るところは楽しい。肩を揉んでもらったその若い居候が藩主になったら、というところに、くすぐったいような面白さがあるのでしょう。山本周五郎あたりにありそうな小編です。
第2話:「春の雪」。やはりどことなく山本周五郎を連想させる市井ものの短篇で、幼いころから互いによく知っている、グズでのろまの茂太と、頭もよく男らしい作次郎と、同じ店に勤めるみさの三人のお話です。悪い男たちに連れ去られそうになったみさをかばって逃してくれた茂太は、散々に痛めつけられ、怪我をします。自分への思いを知ったみさが取った精一杯の対応を、作次郎は理解できない。不幸な若者たちが、それぞれの道へ分かれていく姿が簡潔に描かれて終わります。
第3話:「夕べの光」。先妻が捨てて行った乳飲み子を育てながら、力仕事で生活を支える後家のおりん。後添いの話や犯罪に加担させられる話なども折り込みながら、おりんは幸助という子供を育てることを優先します。どうやらそれが、おりんを転落させずにすむ結果となっているようです。
第4話:「遠い少女」。脇目もふらずに歩いてきた一本の道を振り帰り、その道からはみ出したことがなかったことに気づいた中年男が、子供のころに周囲からはやし立てられていた美しい少女の現在の境遇を知り、裾継の店を訪ねます。殺人者の情婦としての顔までは知り得なかったのは、やむを得ないでしょう。歳月と境遇は、無惨に人間を変えてしまいます。
第5話:表題作「長門守の陰謀」。これはまた、簡潔で見事な歴史小説です。荘内藩酒井家最大の危機となった長門守事件を描きます。藩主の弟で、白岩で苛政をしく酒井長門守忠重は、兄の長子のかわりに、自分の息子の九八郎を姪のおまんと縁組させ、荘内藩の乗っ取りを企てます。長子忠当を江戸に逃がし、暗殺を防いだものの、家老一派は追放や切腹など、陰謀が勝利したかに見えました。ところが、藩主の急死で事態は一変してしまいます。忠当の妻の実家である松平伊豆守信綱のおかげで陰謀は阻止され、後に長門守は白岩百姓一揆の責任を問われ、改易となってしまいます。

地名や人名も、どこかで聞いたことのある固有名詞が多く、事件の結末も、なるほどそうだったのかと頷けるものでした。やっぱり藤沢周平はおもしろい。今回も、期待を裏切らぬ佳品ばかりです。ふと目を上げると、そこはすでに都会の風景で、思わず現実に引き戻されてしまいました。

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「六花コンサート」を聴く

2012年11月13日 06時02分34秒 | -オペラ・声楽
出張続きでだいぶ間があいてしまいましたが、過日の「六花コンサート」のレポートを残しておきましょう。去る11月の初日、新庄市の某セレモニーホールにあるエヴァネックスという会場で、震災孤児支援コンサートが開かれました。たまたまご案内をいただきましたので、出張先から会場に向かい、なんとか開演ぎりぎりに間に合いました。

出演は、佐藤美喜子(Sop)、菅紀子(Fl)、鈴木信哉(Vc)、鈴木布美子(Pf)の4人。出身地は様々ですが、いずれも山形県内在住の音楽家です。ソプラノの佐藤美喜子さんは、山形交響楽団のモーツァルト定期で「魔笛」を取り上げた際に、三人の侍女の一人として出演(*1)していましたし、「コシ・ファン・トゥッテ」でもフィオルディリージ役で出演(*2)していました。フルートの菅紀子さんは、この夏にシェーネスハイム金山で、フルートの演奏会を聴いた(*3)ばかりです。お二人の鈴木さんの演奏は、たぶん初めて。

さて、曲目は、こんな感じ。



カッチーニの「アヴェ・マリア」から始まり、「小さい秋みつけた」、「小さな空」と続きます。ソプラノにフルートとチェロとピアノがバックを勤めますが、武満徹の合唱曲「小さな空」は、情感豊かな♪いたずらが過ぎて叱られて泣いた~子どもの頃を思い出した~♪というところで思い出しました。この後に、ベネディックの「ラ・カピネラ(みそさざい)」が続きます。佐藤さんも声が乗ってきた感じで、高い声とフルートの競演です。歌に合わせたフルートもお見事でした。

ここで佐藤さんが退き、久石譲の「Stand Alone」。これは「坂の上の雲」のテーマ音楽だそうです。フルートとチェロとピアノが、ドラマティックに盛り上げます。続いてシューマンの「子供の情景」より「異国から」と、ドビュッシーの「夢想」。三つの楽器の組み合わせが、なかなかお洒落です。

ここで、佐藤さんが再び登場、「おひさま~大切なあなたへ~」と、プッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」より「私のお父様」を歌います。歌もお見事ですが、プッチー二の繊細なオーケストレーションを、ピアノとフルートとチェロでよく表現していると感心してしまいました。続いて賛美歌より「アメイジング・グレイス」。フルートにピアノが続いて歌い出され、ソプラノとピアノのみになり、声の恵みを感じます。そして、これにチェロとフルートが加わると、さらに感じられる音楽の豊かさ!最後は、会場のお客さんと一緒に、復興支援ソングとなっている「花は咲く」を歌いました。

アンコールの声に、フルート、チェロ、ピアノの三重奏で、「おくりびと」のテーマが演奏され、さらに佐藤さんが「見上げてごらん夜の星を」を歌います。鳴り止まぬ拍手とアンコールの声に、再びカッチー二の「アヴェ・マリア」でコンサートは終わりました。

東日本大震災から20ヶ月になります。被災地支援は、まだまだ続けられる必要があるでしょう。募金のあり方に対してはいろいろな考えがあることと思いますが、被災者支援が途絶えるよりはずっと良いだろうと思います。今回は、とくに震災孤児への支援を目指しているとのこと。良い雰囲気でコンサートを楽しんだお礼もかねて、私も募金に応じてきました。

(*1):山響モーツァルト定期で交響曲第21番と「魔笛」ハイライトを聴く~「電網郊外散歩道」2011年2月
(*2):山響のモーツァルト「コシ・ファン・トゥッテ」を楽しむ~「電網郊外散歩道」2005年8月
(*3):シェーネスハイムでフルートの演奏会を聴く~「電網郊外散歩道」2012年8月
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パワータンク・ボールペンのアルミ軸とノートを選ぶ

2012年11月12日 06時03分00秒 | 手帳文具書斎
愛用していた初代パワータンクのクリップが壊れてしまったので、後継を探して、出張先のLoftで文具売り場をのぞきました。



そこで見つけたのが、パワータンク・スマートのアルミ軸のやつです。お値段は、税別で1,000円。田舎の良心的文具店とは違って、まったく値引きはなし。でも、さすがに都会だけあって、ちゃんと各種製品がもれなく展示されています。色は、手帳やノートカバーの色にあわせてブラウンを選びました。軸は細身ですが、なんとか実用になるようです。さっそくクリップが折れた初代パワータンクから1.0mmの芯を移し替えて、上向きにもビニールにも書くことができる、携帯用・万能太字環境が復活しました。

その他に、キャンパスノートのルーズリーフとらせん綴じノート「エッジタイトル」もあわせて購入。ルーズリーフの方は、「さらさら」タイプと「しっかり」書けるタイプの二種類が発売されていますが、田舎の文具店では「しっかり」タイプは見たことがありませんでしたので、万年筆で書くときの書き味を比較してみようと、好奇心で一冊を確保。らせん綴じノートの方は、サイズがA5判のものです。これも当地ではあまり見かけないタイプですので、予備に確保したものです。

出張中のハプニングも、これでなんとか解決。良かった良かった。

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初代パワータンク・ボールペンのクリップが折れた

2012年11月11日 06時05分29秒 | 手帳文具書斎
愛用していた初代パワータンク(PowerTank)ボールペンのクリップが、出張の最中に、突然ポキッと折れてしまいました。クリップの付け根の部分の、負荷のかかる箇所でしたので、素材の耐久性の面で寿命がきていたのかもしれません。購入したのがたしか2005年の9月(*1)でしたので、もう7年を超えています。プラスチックの劣化もあったのでしょう。Made in Japan にしては弱いのではないかと思わないでもありませんが、だからこそ金属クリップの意味があるとも言えます。

さて、上向きでもビニールにでも書くことができるパワータンクは、身の回りになくてはならない筆記具の一つです。なんとか代替品を探さなければ。

(*1):午後から外出、成果は?

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これは何と呼ぶのだろう

2012年11月10日 06時03分59秒 | 手帳文具書斎
読書の秋です。愛用している読書グッズの中で、名前を知らないものがあります。たぶん、「ブックなんとか」というような名前があるのだろうと思いますが、プレゼントされたときに、名前をメモするのを忘れてしまいまして(^o^;)>poripori

要するに、金属製のしおりです。ナイフのような形をしていますが、もちろん刃はありません。手元に置き、読みかけのページにはさんでおけば、続きはすぐに開くことができます。実用的には便利な製品ですが、なにせハイカラな世界には縁遠い田舎暮らしですので、名前がわからないのです(^o^;)>poripori

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田村明『まちづくりの実践』を読む

2012年11月09日 06時04分48秒 | -ノンフィクション
だいぶ前から少しずつ読んでいた岩波新書で、田村明著『まちづくりの実践』を読みました。本書は、次のような構成になっています。

序章 市民の「まちづくり」
第1章 「まちづくり」の実践
第2章 地域の価値発見
第3章 価値の創造
第4章 誰が「まち」をつくるのか
第5章 「まちづくり」の構造
第6章 「まちづくり」の実践のヒトとシクミ
第7章 「まちづくり」の実践の力

すこし前に、「まちづくり」という言葉が流行した時期がありました。ところが、景気が停滞し、田舎では人口減少が顕著になるころには、「まちづくり」よりも少子化や高齢化対策、あるいは人口減少をいかにして食い止めるかといった課題がクローズアップされてきました。例えば1年に1,000人ずつ人口が減少するときには、10年で10,000人が減ってしまうことになります。そんな状態のときには、局所的な「まちづくり」よりも、地域全体の産業振興や若者が定住できる職場の確保のほうが大切だ、というような考え方です。一方で、誘致した企業が撤退し、活力が低下している地域では、特定の企業に依存する地域振興策の脆さを指摘されます。

本書は、こうした大上段に振りかぶった問いに対する処方箋というよりは、現在において可能な取り組みの実践例を集めて検証し、市民的な「まちづくり」の方法を提案する、という立場からのものでした。どうやら、先に理論編があって、本書はその実践編として書かれたもののようです。

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旅の空で聴く音楽

2012年11月08日 06時04分17秒 | クラシック音楽
出張の旅の空の下、ホテルの朝食時に、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタが流れてきました。「あっ、モーツァルト」とすぐにわかる個性はすごいものです。もちろん、何番の、何調の、ケッヘル何番のものか、などはまったく不明ですが、誰のものでもない、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの曲だということはすぐにわかります。しばし音楽に耳を傾けながら、一人の朝食を食べました。

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葉室麟『銀漢の賦』を読む

2012年11月07日 06時05分07秒 | 読書
先に『蜩の記』を読んでおもしろかったので、同じ著者の作品から、『銀漢の賦』を読みました。手頃な厚さ(薄さ?)もありますが、初刷が2010年刊の文春文庫で、2012年7月に第7刷となっています。わずか二年半の間に六回も増刷となるほど読まれている作品のようです。

主な登場人物として、月ヶ瀬藩家老の松浦将監、新田開発を指導してきた郡方の日下部源吾、百姓の十蔵の三名に周囲の人たちが加わる形です。おおむねこの三名が中心となる物語と言ってよいでしょう。なんとなく、藤沢周平の『風の果て』を思わせる想定です。少しずつ事態が判明していき、最後に全貌が明かになるという、推理小説風の展開も、『風の果て』を意識しているのでしょうか。



普請組70石・岡本家の小弥太は、道場の仲間である日下部源吾と、鰻の縁で笠原村の百姓の子・十蔵と共に、母・千鶴が作った手料理を食べ、友情を育みます。小弥太は、遠縁の松浦家に養子に入り、次女みつと縁組をします。代々執政を多く出してきた名家である松浦家では、長女・志乃が藩主惟常の側室となり、男子を産みます。これが、長じて新藩主となる惟忠で、小弥太から将監と名を変え、百姓一揆をきっかけとして前藩主に連なる旧執政グループを追い落とし、藩政を刷新します。飢饉の時にも救荒米を放出するなどして餓死者を防ぎ、新田を開発して実高を増やすなど、名君・名宰相と高い評価を得ています。

ところが、気ままに暮らす鉄砲組の日下部源吾は、将監が不治の病で余命一年の宣告を受けたことと、現藩主・惟忠との確執や、藩主の恣意に追随する勢力との権力闘争を知ることとなります。先の政変の際、一揆の首謀者として刑死した十蔵を悼み、将監と絶交していた源吾は、将監への刺客を命じられています。さて、この結末はどうなるのか?





1日1章ずつと思って読み始めたのでしたが、思わず引き込まれ、夜更かししてしまったほどのおもしろさでした。迫力があります。作者は、『蜩の記』でも感じましたが、生を希求する藤沢周平に対して、ほのかに死を美化する傾向が感じられます。その点を割り引いても、たいへん印象的な作品でした。

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今日から旅の空

2012年11月06日 06時00分18秒 | 散歩外出ドライブ
今日から、旅の空です。しばらくはホテル暮らしとなります。ここ数日、風邪をひいてしまい、せっかくの連休も寝て過ごしましたので、体力の回復状況は心許ないところですが、大事な仕事とあればそうも言ってはいられません。できるだけ荷を軽くして、行ってきたいと思います。

さて、旅行カバンの中に詰めるものは?

(1) チケット類、お金
(2) とりあえず必要な身の回りのもの(衣類、日用品等)
(3) 目的地での資料、地図等
(4) 移動中の楽しみ(本、備忘録、ウォークマン等)

うーむ、「安心と少しの自由」というところでしょうか(^o^)/

今回は飛行機ですので、ゆっくりと移動の時間を楽しむというわけにはいかないようですが、上空から見る秋の山形盆地の風情に期待するとしましょう。

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新しいカテゴリーの検討

2012年11月05日 06時04分12秒 | ブログ運営
当ブログでは、雑多な内容の記事を「Weblog」として一括し、その中で一定の数が集まってきた時に、一つのカテゴリーとして独立するようなやり方を取っています。現在、Weblog カテゴリーは 500 を越えており、999 まで残すところを心配する必要が出てきました。そこで、独立できる候補を考えていますが、さて、何が良いのだろう。

「季節と行事」「健康」

などはどうか、いやいやそれよりも「散歩」を「散歩外出旅行」くらいに拡大してはどうか、などと考えていますが、さて、これらの区分を追加したとして、独立させられる記事数はどの程度あるのだろう?

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紋次郎ではなさそうだが………ゴン太が来た

2012年11月04日 06時03分43秒 | アホ猫やんちゃ猫
玄関の網戸ごしに、赤毛の猫の姿が見えました。一瞬、性悪な野良猫・紋次郎かと思いましたが、カメラを向けても逃げようとしないところをみると、紋次郎ではなさそうで、どこかの飼い猫のようです。それにしても、ずいぶん体格の良い猫で、我が家のアホ猫にとっては新たなライバルの登場でしょうか。おいおい、大丈夫かい?

「鈍くさいのは相手にしないの!アタシは最強よ!」

本当でしょうか。どうも、最近は知らぬ間にエサを食われてしまうケースが目立つのですが(^o^;)>poripori
飼い主に似て、アホ猫たちも、本当は人畜無害なのかもしれません(^o^)/
いや、もちろんネズミ等は「人畜」の中に入っておりませんが(^o^)/

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UCCコーヒーのクーポンプレゼント品が届く

2012年11月03日 06時02分34秒 | Weblog
先日、帰宅したら UCC コーヒーから、何やら「ゆうパック」が届いておりました。クーポン・プレゼントに応募した景品が、早くも到着したもののようです。

コーヒーは毎朝飲んでおりますが、とくに銘柄にこだわりはなく、行きつけのスーパーで日付の新しいものを購入してくると UCC になってしまう、という程度のファンではありますが、ポイントはけっこうたまっていて、600点を超えておりました。

コーヒーの景品は、やっぱりコーヒーだべ(^o^)、というわけで、同社のコーヒーを指名したところ、この日に到着したという次第です。さて、今あるコーヒーを飲みきったら、こちらを楽しむことといたしましょう。

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モーツァルト「ピアノ協奏曲第11番」を聴く

2012年11月02日 06時02分13秒 | -協奏曲
深まる秋の日に、モーツァルトのピアノ協奏曲を聴きながら通勤しています。お天気の良いときなどにはまことに喜ばしく、雨模様の時には慰められながら、ハンドルを握っています。今回は、第11番ヘ長調、K.413(387a) を取り上げます。アンネローゼ・シュミットのピアノ、クルト・マズア指揮のドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による全集の Disk-2 にあたります。

たいへん充実した添付リーフレットによれば、ザルツブルグを離れたモーツァルトは、1782年の秋から1783年はじめにかけて作曲された三曲(第11番、第12番、第13番)で、ウィーンにおける新しい活動を始めたとのことです。なるほど、映画「アマデウス」で、多くの人々がピアノを担ぎ、ついでにヴォルフガング君も肩車して演奏会場に運んでいき、予約演奏会を開催する場面がありましたが、あんなイメージでしょうか。もっとも、実際にはまだ市民向けのコンサートホールなどは普及せず、貴族の館の広間などが会場となっていたことでしょうが。

楽器編成は、Ob(2), Fg(2), Hrn(2), 弦5部 というもので、管と弦楽四重奏にても可、とされているそうです。なるほど、山響のモーツァルト定期でときどき聴くことができる、曲の途中で管のトップと弦楽トップだけのアンサンブルを聴かせる場面は、そうした想定を実際にやっているわけですね。

第1楽章:アレグロ、ヘ長調、4分の3拍子。協奏曲の形式によるソナタ形式。弦楽による序奏から。「後宮からの誘拐」のような華やかさと、ワクワク感があります。独奏ピアノも、低音を大胆に使っています。現代ピアノによる録音だけあって、どきっとするほど効果的です。
第2楽章:ラルゲット、変ロ長調、4分の4拍子。ソナチネ形式。低音弦のピツィカートをバックにヴァイオリンが穏やかな旋律を奏します。これを独奏ピアノが引き継いだのち、さらに夢見るように演奏が展開されます。
第3楽章:テンポ・ディ・メヌエット、ヘ長調、4分の3拍子。ロンド形式。優雅なメヌエットのテンポで、あまり速くなく始まると、独奏ピアノが入ってきます。こちらは華やかで、けっこう力強さも感じさせながら演奏されます。モーツァルト自身の言葉を借りれば、あまり難し過ぎず、また易しすぎず、ちょうど中間だそうで、音楽だけでなく、そのあたりの配慮にも、当時のモーツァルトが持っていた社交性を感じさせます。



録音は、アリオラ・オイロディスク原盤で、1974年の2月に東独ドレスデンのルカ教会で収録されています。録音は良好です。

■アンネローゼ・シュミット盤
I=9'16" II=5'54" III=5'14" total=20'24"

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佐伯泰英『春霞ノ乱~居眠り磐音江戸双紙(40)』を読む

2012年11月01日 06時02分17秒 | -佐伯泰英
双葉文庫の新刊で、佐伯泰英著『春霞ノ乱~居眠り磐音江戸双紙(40)』を読みました。表紙は舟着き場での祖母と孫の遭遇の場面のようで、青緑を基調とした絵は、いかにも時代を感じさせます。

第1章:「思わぬ来訪者」。国家老の奥方の江戸入りとは、それだけで敵方に大きな攻撃材料を与えるようなものでしょうに、そんなことは本作のような講談調大江戸エンターテインメントには問題外、ひたすら祖母と孫の対面の場面を盛り上げます。
第2章:「突き傷」。関前藩の新造船で阿片の抜け荷が行われているとの疑惑が浮上し、藩主実高と国家老・坂崎正能とが合意の上で、江戸屋敷に直接乗り込むことを計画したらしいことが判明。ところが、正能は何者かに拉致されてしまいます。中居半蔵が命じていた陰目付もまた、背中からの突きで殺害されてしまいます。
第3章:「必殺の突き」。坂崎正能にひそかに随行した者の情報によれば、かつて同じ突き傷で死者が出た船にも乗っていた者は二名。帳付方の内藤朔次郎を試しますが、尻尾を出しません。江戸家老の名前は、何かやりかねない鑓兼参右衛門というもので、怪しさ満開です。
第4章:「正能の行方」。父の行方を探索する磐音は、江戸家老の鑓兼参右衛門の身元調査を始めます。紀伊藩の御目付の情報をたどると、紀伊和歌山の伊丹家から豊後関前の鑓兼家に養子に入ったことなどをつかみます。また、紀伊徳川家当主の治貞公直々に、紀伊藩江戸屋敷の剣術指南を命じられます。そして、正能の行方は、意外な場所でした。
第5章:「照埜の憂い」。磐音、平助、弥助、霧子、辰平、利次郎らによる正能救出作戦と、関前藩新造船・明和三丸における争闘が描かれて、前編の幕となります。どうやらこの事件は、まだまだ後まで尾を引きそうです。



それにしても豊後関前藩というのは、なんと争い事が絶えない藩であることか、という批判を予想したのか、小藩の阿片抜け荷も実は田沼意次・意知父子がらみで、江戸家老も田沼につながる人物ときては、いくらなんでも出来杉君でしょう(^o^)/
それほどに用意周到な田沼父子が、公儀隠密も動かせる立場にありながら、なぜ金兵衛や由蔵や幸吉、おそめ等の身近な人々を人質としないのか、案外に田沼さん(*)もうっかり者なのでしょう、きっと(^o^)/

(*):時代小説における田沼意次の描き方~「電網郊外散歩道」2009年1月
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