志情(しなさき)の海へ

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『近現代演劇研究』第4号の論文は読み応えがあった。世良利和さんの「執念の毒蛇」の論も興味深い!

2013-11-09 12:35:12 | Theatre Study(演劇批評)

久しぶりの論文集だ。博士課程の学生も含め、緻密な掘り下げに関心する。

テネシーウイリアムズのかの有名な「欲望という名の電車」をゲームとして解釈した分析も興味深かった。男と女のゲームというより状況におけるサバイバルゲームの要素がある。スタンレーとブランチ、ステラ、ミッチ、アメリカ南部と北部の歴史の背景も見え隠れする。シンボリズムが多様で、当初からパージされる南部の女のイメージが胸を締め付ける作品だ。演劇のメタファー、リズムは何度再演されても、勧興があるのは、そこに人間の属性なりある種の真実がにじみ出ているからなのだと言えるが、また舞台を見たくなったが、敗北する女、精神病院に収容される結末が見たくないという思いが浮かぶのはなぜだろう。「ガラスの動物園」もガラスのようにもろい女がイメージする。ウイリアムズの姉妹がやはり精神を病んで精神病院に収容されたと以前読んだことがある。実体験・経験が作品に網羅されていくのは必然かもしれない。

世良さんの映画研究は沖縄芝居と重なる点が多く、参考になる。ハワイが絡んでいる。資料的にもいいね。しかし自分の研究テーマをまとめる作業にすぐ取り組む必要があってこんなことを書いている。備忘録と『近現代演劇研究』の宣伝のつもりでもあるが、今回何とか一本いい論文をまとめて査読に挑戦したいね。資料があっても構成力が弱いと論として成り立たない。やれやれ、でも絶望はしないでおこう。

「糸地獄」岸田理生作・和田喜夫演出のクロノトポスは刺激的な論稿である。オーストラリア公演を中心となっているが、フェミニズム演劇の旗手だと称される岸田の作品の面白さの謎解きを綿密に追っている。西欧演劇の影響から歌舞伎的な日本的感性・パフォーマティヴィティを含め、マザーグースのリズム、ハムレットマシーンの影響も含め(ヒントを得た構造など)、上演の比較、オーストラリアのコンテキストの分析も含め、力作だね。

名もない女たちの声を結晶させた作品に感動。わたしも批評や研究と異なる作品へと編むことを考えたいと思う。琉球歌劇の中に、埋もれた女たちの感性を編み込むこと、劇団「うない」さんのレパートリーになれるような作品を生み出したい。創作するエネルギーを浴びたい。

注★≪文学における時間と空間とが融合した相関関係を「クロノトポス」« chronotope » ≫


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