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黒澤明監督の『乱』を見た時の印象が強い。人間の内面のドス黒さも、つまり怒りや、絶望、怨念、嫉妬、復讐心、自暴自棄、飢餓感、トラウマを含め、演じられる女優原田美枝子は清純なイメージの吉永小百合とは個性が異なる。
映画「OUT」も印象的だった。「愛を乞うひと」が代表作でしょうか。
舞台女優としても、迫力があるのではないだろうか。しかし、彼女の舞台を見たことはない。たまたま最近アマゾン・プライムで「60歳のラブレター」を観た。原田美枝子が30年主婦として生きてきて、愛人のいる夫に見捨てられてきた役を演じている。彼女は美しい。美しさの中に魔精、魔性のようなものを潜ませている。
この映画の中では、夫には愛人がいる普通の地味な主婦の役だったけれど、離婚の後の変貌が良かったね。人生様々で、映画の構成が良かった。最初と最後のどんでん返しがうまくできていた。還暦前後に人は失われた何かを取り返したいと思うものかもしれない。人生60年の間に叶えられなかった何か、夢とか、愛とか、幸せとか、なぜか抽象的な観念を追いかけているようだ。一人一人の人生のドラマがある。学生たちに、「あなた方の人生の主人公はあなた方なのだから、主人公として精一杯生きることは大事よね」と、話すのは簡単だけど、「実際それぞれのドラマの主人公として、自分の人生について語ったり、書いたりして残こすのもいいね」と付け加える。彼らが60歳前後になった時、振り返って何を取り返したいと思うだろうか。
すでに人生に絶望している若者がいたりするけれど~。一回きりの人生だから、存分に挑戦したり、探求したり、何かに夢中になってほしい。ただこの世の中、生きていくこと、サバイバルが厳しくなっている。膨大な世界という見えない、見えるものが広がっている。便利になって息苦しい世の中であってほしくないけれど、若年ホームレスや児童生徒の自殺は増えているデータが
IT技術のおかげで世界が身近になっているが、同調圧力に丸め込まれていく若者たちも少なからず多いということは、不安を掻き立てる。科学技術の進化と監視社会の強度が比例している。個人のデータが収集され販売され、データーを数多く集積したものたちが、権力になっていく昨今。時代の波に、風潮に、技術に翻弄される。翻弄されないブレることのない生き方とは何だろう。
ところでWikipediaを見ると、原田美枝子さんが映画だけではなくかなり多くのテレビ作品に出演していることに驚く。昨今は秀逸な映画への出演がなく残念ですね。2020年にお母さまの映画「女優原田ヒサ子」をリリースしたのですね。認知症を描いています。沖縄では公開されていません。
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