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幸喜良秀演出は、進化する。時代の空気を吸い込んで変容していく。そして作品のエキスをくっきりと浮き彫りにする!知念正真さんのこの作品は色褪せるどころか、ますます鮮やかになっている。第37回(知念正真追悼)公演記念パンフの表紙は日の丸であり、裏表紙はキャンプシュワーブと辺野古崎の海である。調教師当銘、陳列された男花城、そして陳列された女小嶺、3人の演技の自然な気負いのなさのような雰囲気に引き込まれていた。時間が人類館の中で流れていくそのメタシアターのからくりがすんなりとはいってきたのだ。花城さん、小嶺さんは2009年から5年ぶりだが、演出に差異が感じられたのは、不思議と「人類館」は時代の空気を常に吸い込んでいくということだ。時代の空気が乗り移っていく作品である。幸喜さんの感覚はまた異なっていく。同様役者もまた違った空気・表情を見せる。今回当銘由亮さんが調教師として加わった。内間さん、上江洲さんともまた異なる個性が見えた。
願わくばこのチームとスタッフでアジアなど諸外国で上演を続けてほしい。字幕といういいものもあるので、きっと世界で受けるに違いない。そのままのウチナーグチ、ウチナーヤマト口、ヤマト口でいい。そのことばのニュアンスは十分、伝わる。ことばのもつリズムは身体全体から観客に伝わっていく。1879年に日本に併合されて以来、沖縄の位相はさほど変わっていないのかもしれない。
日本のアメリカの防波堤であり続ける沖縄、ああ沖縄、変わらない姿をさらし続ける沖縄!沖縄を世界と共有するためにも、「人類館」は、日本全国で、アジアでアメリカで南米で、EUで上演されなければならない沖縄を代表する演劇である。沖縄県の文化振興関連部局は、軽い観光用作品を世界に高い予算で派遣するより、琉球舞踊のアレンジの類など、この琉球舞踊もチョンダラーも、ジオポリティックスも明らかに見せる「人類館」こそ、まず30ステを予算化して世界に発信すべきである。戦争のトラウマは消えない。消えない沖縄は米軍基地、自衛隊基地の巣(砦)でありつづける。その根本的な癌を切開していく度量が試されている。知念さんは作品によってその構造を明らかにした。そして変わらない現在を私たちは生き生かされている。これでいいのだろうか沖縄!軽いPERFORMING ARTSの押し売りではだめなんですよね。沖縄県首脳の「センスの向上」を願ってやまない。