(三宅唯尊(?)は編集者 作家の久行順子、みちるの福永武史)←役柄と演技者がしっかり書いていない???
江戸川乱歩、あまり好んで読んでいません。でも奇想天外ないい短編ですね!脚本が新しいセンスで、演出も沖縄で初出の舞台です!なかなか良かったです!明日24日もあります!ぜひどうぞ!この奇妙な恋の物語が現代のタッチでスリラーのような心理劇の逆転に驚きマス!
1時間ほどの短編の舞台。真っ赤な椅子が一つ、舞台に置かれていて、着物姿の女性作家がゆったり座っている。傍らに編集者の宗男がいて書けないスランプに陥っている橋田桂子の想像を刺戟するために奇想天外な仕掛けを試みる。佳子の書いた「ヨンギュの恋」は愛しているはずの雅子に勘違いでDVをする男の物語、「どこもかしこも壁ドンに忖度、ポリバレント」と時流のことばが飛び込んでくる。恋愛小説のはずで、恋愛にDVが近影に迫ってくる。筋書きは「人間椅子」でその中身は作家と編集者、人間椅子の物語を書いたみちるの創作が取り込まれる。しかしリアリティと新城が脚本にしたためた不気味さが最後まで惹きつける。書けない佳子を刺戟するためにみちるの小説の朗読がなされる。しかし実在するみちるとその友達タケルと付き合っている女性の関係が創作として織り込まれる。みちるの人間椅子が二人の関係を目撃する役割である。つまりみちるのリアルの姿とみちるの書いた小説が舞台上で朗読される。
椅子人間は椅子の中に住み込み、ふくろうのように夜動き回った。物語は語りとリアリティが交差し、不気味さが漂う。物語世界がリアルな世界と並存している。物語→リアル→物語→殺人が起こったのか?原作小説にはない殺人がみちるの小説には書き込まれている。臀部、体温、愛の妄執の物語、本筋の書けない作家の原稿の行方とその穴埋めの怪奇小説の行方?
役者陣がいい!不思議なミステリー物語は江戸川乱歩の小説にない複雑な物語を織り込んでいる。恋愛の伏線である。DVせざるをえない男の女の愛を描いている。DVをする男の心理が描かれる。一方で臀部が好きなみちる(木工職人、小説家志望)の物語(恋慕の殺人に及ぶ造形)である。これらは全く原作(告白と懺悔)にない新城の創作になっている。そこが不気味な結末の曖昧さをもたらしている。小説の短直な筋立てを演劇の立体性の中でより巧妙なサイキック・ミステリーに仕上げている。演技はまた冴えている。リアルにシュールさと不気味さが醸す舞台は、女王のような作家佳子に迫っていく。桂子の原稿はみちるの怪奇小説に置き換えられるのだろうか。それとも殺人現場を見せ付けられているのか、不可解の中で閉じられる。
江戸川乱歩「人間椅子」(朗読:佐野史郎)
https://www.youtube.com/watch?v=8azhg305nbY
朗読は他のバージョンもあります。
明智小五郎が出る映画も公開されていますね。1984年バージョンです。
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新城さんから脚本をいただいて、読みました。現代の男女の愛がテーマに見えます。しかし江戸川乱歩のその小説を読んだことがなかったので、『青空文庫』で読みました。それからウィキピディアをみて、映像を一つ見ました。その殺人事件のインパクトが大きいですね。脚色はかなり原作と異なります。翻案で台詞劇にして物語を新たに紡いでいるので、いかようにもこの小説は再生できるのですね。椅子人間は中心でも椅子人間と女流作家と編集者の関係、そして木工職人が醜男の設定です。
新城さんの脚本を丁寧に読み解きたいですね。福永さんの演出は、舞台ステージが固定化しているゆえに、演技者の力量がいいので、ハットさせられる一方で、すこし分かりにくいところがあり、見る側の想像力が要求されます。本筋は明瞭で、リアルなみちるとタケル、ミユの関係があり(?)、殺人者の予見があり、実際にDVを繰り返すタケルがミチルに殺される場面もあります。これもミチルの物語の中の物語かもしれません。
椅子人間が何ヶ月も一緒に暮らしていたという告白の手紙が届く女性作家の恐怖はショックだったに違いないですね。みちるもまた椅子人間として佳子の部屋に暮らしていたと想像すると、ぞーっとしますね。