何らかの障碍を持っていることは表現活動の妨げにはならない。生きるとは想像すること、創造することにほかならない。劇団態変のパフォーマンスは多くの観客を鼓舞し続けているにちがいないと思う。なかなか観劇できる機会はない。しかし、舞台作品映像が公開されることになっている。『ニライカナイー命の分水嶺』なども視聴できる。金さんの舞台表現に共感する詩人や研究者との対談がこちらの意識を喚起しつづけるのも事実だ。舞台表現は単にきれいな造花だけではない。生身の人間の全実存が顕になる『晒の場』でもあるのだと~。その怖さと陶酔が混じり合った空間で表出する者たちは常に眼差しを受けて精神が裸になり、浄化されていくのかもしれない。
全ての存在に意義がある。個々の人生は個々の輝きを放っている。この地球の秘密を、この世界の秘密を実はよく知らずにいるにしても~。この現実がマトリックスの空間だとしても、子猫のみーちゃんは可愛いい。家の中を駆けずり回っている。菜園のモンシロチョウの乱舞はリアルで、パクチーは花を開き、ミニトマトは実を付けている。リアルはそこにしかないのだろうか。仮想空間には、思いもよらない真実がこぼれてくる。見える世界が隠蔽されていると気がついたのは今世紀のはじめだった。テレビが嘘を報じることを直に認識したのも21世紀の始まりだった。今狂想曲が流れるこの世界の幻惑から逃れる日はいつだろうか。否、方向は一つだろうか?SFはすでに未来を指し示しているのではないか~。宇宙の中の、太陽系の惑星である地球はすでに古代から宇宙人(エイリアン)と接していたのだと、物語は続いているのらしい。←嘘か虚構か?いずれにしても物語は夢幻に無限に再生されていく?
学生によると、日本で(世界で?)人気のあるアニメのシンボリズムは世界の動向を指し示していると言う。初耳だった。
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藤原辰史(FUJIHARA Tatsushi)
1976年、北海道旭川市生まれ、島根県横田町(現奥出雲町)出身。1995年、島根県立横田高校卒業。1999年、京都大学総合人間学部卒業。2002年、京都大学人間・環境学研究科中途退学、同年、京都大学人文科学研究所助手(2002.11-2009.5)、東京大学農学生命科学研究科講師(2009.6-2013.3)を経て、現在、京都大学人文科学研究所准教授。(写真の撮影は新井卓)
主な著書に『ナチス・ドイツの有機農業』(第1回日本ドイツ学会奨励賞)、『カブラの冬』、『稲の大東亜共栄圏』、『ナチスのキッチン』(第1回河合隼雄学芸賞)、『食べること考えること 』、『トラクターの世界史』、『戦争と農業』、『給食の歴史』(第10回辻静雄食文化賞)、『食べるとはどういうことか』、『分解の哲学』(第41回 サントリー学芸賞)、『縁食論』、『農の原理の史的研究』がある。2019年2月には、第15回日本学術振興会賞受賞。