15歳の勝昭は護郷隊に入って日本軍将兵の斥候として村に降りて行った。真面目に成果を誇示するように、(その純な心を利用する軍隊)、母親が渡した二人の名前の書いた紙切れを手渡した結果、少年は、戦後村を離れざるを得なかった。
勝昭の密告によって日本兵に惨殺されたのは同級生の父親だった。罪悪感を隠し持って戦後を生きた勝昭の心を追った物語になっている。母親の笑いなど、人間の心の奥底に潜んでいる複雑な心の綾がくっきりと描かれる。
戦争の修羅は日々の営み(社会生活)に連なっている。
戦時中に、米軍と日本軍や敗残兵が山の中を徘徊していた本部半島の状況、すでに村の中心部にあったサカナヤー(料亭)の客は日本兵から米兵へと様変わりする。(沖縄の遊郭の女性たちが慰安婦として動員された事実は市町村史などに記録が残されている。しかし戦時中すでに米兵がサカナヤーに出入りした記録は....)
対話に今帰仁(やんばる)ことばのルビがついているのがいい。朗読して読みたくなる物語。
「斥候(せっこう、英: point)とは、地上戦闘の際に、敵情・地形などを偵察あるいは秘密裏に監視するために本隊から派遣される、単独兵または小人数の部隊のことである。また、その偵察行為そのものを指すこともある。」ウィキピディア