ハクスレーは「知覚の扉」の中で、脳は知覚を働かせるところではなく、宇宙の森羅万象を、人間の営みに支障ないレベルにコントロールする「減量バルブの役目」をしている、だから、この減量バルブを外せば、人間の知覚の扉が開き、あるがままの神秘と真実があらわれる、と考えた。
この「減量バルブ」と「脳の機能」に対する考えがユニーク、これまでの逆の発想、あのH・ベルクソン(1859~1941)は、脳は楽器のオルガンのようなもので演奏者は別にいる、と言っているが、演奏者が宇宙の現象ということだろう、通じるところがあるようだ。
ところで、森羅万象とは、英語では“everything”、これでは、味もそっけもない。
古代文明には奇想天外なものがあるが、おそらく、これと無縁ではないだろう、彼らは、この減量バルブをコントロールすることによって、とんでもない情報を得ていたのではなかろうか、それが、あの数々のモニュメントになった。
あの、カミソリの刃一枚通らないインカの石組みやアンデスの高地に敷かれた水道も、その発想から生まれたのかもしれない。