6月初めのある日が 婚礼と決められた
その日の朝
まだ朝靄がたちこめる庭は
しっとりと露を吸った 薔薇の花が咲き乱れていた
窓辺に立ち それをぼんやり眺める花嫁・・・
血の気を失った白い横顔に
胸を突かれた乳母は
「ローズヒップ・ティーをお持ちしましょうね」
そう呟き 重い心で 部屋を出た
赤ちゃんの頃から 大事に育てた お嬢様だもの・・・
心の中は 隅から隅まで分かる
喜ばしいはずの 婚礼の日なのに・・・
何故か 悲しくて
無理に 心を浮き立たせても
すぐに笑顔は 凍りついてしまう
広間ではもう 宴席の準備が 滞りなく 進められていた
何日も前から運び込まれた さまざまな食材は
料理人の腕前で 極上の料理に仕上げられ
お客さまたちを 待つばかり
調理場は まだ 火事場のような騒ぎ
慌ただしさのまっただ中だった
美しく整えられた褥を飾る 薔薇の花
あとは ウェディングドレスを身につければいい
氷のような純白に 身震いしながら
腕を通す