黄色のクロッカスの花は あどけなく笑いかける 赤ちゃんの顔のよう
茎がなく 土の上に ポッと 花ひらいたように見えるからかもしれません
屈み込んで見ている私も にっこりしてしまいます
でも ギリシャ神話には クロッカスにまつわる こんな悲しい話があります
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ヘルメスには 美しい婚約者がいました
ある冬の日 降り積もった雪の上で 二人は遊んでいました
すると 俄かに空が暗くなり 風が吹き荒れました
婚約者をそりに乗せ 帰ろうとしたその時 一陣の風が そりをさらい 谷に突き落としました
彼女を乗せたまま・・・
谷底に下りたヘルメスの前には 砕け散ったそりと 血を流し息絶えた彼女の姿がありました
必死になって生き返らせようとしても 彼女は息を吹き返すことはありませんでした
次の年の春 ヘルメスが その場所へ行くと 愛らしい花が咲いていました
ヘルメスは その花に 彼女の名「 クロッカス 」と 名づけたということです