今年の2月には、ぬえの近所の小学校で能楽のデモンストレーションを行いました。去年から、ぬえはちょっとご近所の小学校や保育園で子どもたちにお話しさせて頂ける機会が増えたのですが、この「都立光が丘第八小学校」でのデモンストレーションもそういった機会から発展した催しでした。去年 ぬえが同小学校で行ったデモンストレーションは、PTAが主催して子どもたちのために催される「音楽会」の一環として招かれたものだったのですが、そこに参加された校長先生に気に入って頂けたようで、今度は授業の一部として採り上げてくださったのです。
子どもたちに教えることは、すでに伊豆で長い経験もある ぬえではありますが、この催しでは ちょっと思い切って囃子のプチ体験をさせてみたり、また小学生に面を掛けさせてみたりもしました。もちろん道具や面の扱いについては厳格に指導はしたうえでの事ですが。能面を見せて日本の神様の姿のお話をしたり、できるだけ子どもたちが体験できるように工夫したり。。能面についての印象を尋ねると、中には思いも寄らぬ斬新な発想をする子がいたりして、こういう機会はじつに発見が尽きない。同小学校では来年も引き続いて1日授業をする予定になっていまして、今からとっても楽しみです。またこの2月には東京都下の中学校で、やや障害を持つ子どもたちへの体験授業の機会も持たせて頂きました。
3月には ぬえが仕舞を教えている外国人の発表会がありました。この催しはボランティアで外国人に長唄の三味線を教えておられる西村真琴さんが催す「インターナショナル邦楽の集い」で、主に西村さんから三味線を習った外国人が長唄を発表する会です。西村さんの姿勢に共鳴した ぬえは、その生徒さんの中でさらに仕舞を習いたい、という希望者にやはりボランティアで教えているのですが、そういった形での西村さんとのお付き合いも もうすでに6年に及びます。ぬえ自身も何度も海外で教えているし、英語はうまくないけれどもコミュニケーションは得意なので、爆笑させたり感心させたり、舞だけではなく日本文化を教える事に心を砕いてお稽古しています。
今年は米国、香港、そしてニュージーランドの若者に仕舞を教えましたが、彼らもこの日、立派に舞台を勤めることができましたし、ぬえも番外仕舞『橋弁慶』を上演しました。毎年、この催しのあとには打ち上げがあって、いや~パーティーはやっぱり外国人のパワーには驚かされます~。出演者に加えてその友人たちも参加させなけらばならないのが外国人のパーティーの「掟」なので、毎度100名ほどの打ち上げになってしまいますが、もう大騒ぎもいいところで、これは毎度会場選びには細心の注意がいることであろう。。ぬえはさらに数人の外国人の生徒さんたちと一緒に飲みますが、この結果、毎回終電を逃しちゃいますな。。惜しむらくは彼ら、どうしても日本に滞在するのは1年程度の短期間であることが多くて、なかなか何年間も稽古を続けられる人が育たないことかな。それと苦学生が多いから仕事と稽古の両立が難しかったりもします。
彼らの「職業」は多くの場合「英語教師」であることが多いのですが、純粋に日本文化に興味を持って来日する若い外国人にとって、滞在費を捻出するためのアルバイトとして、この仕事は手頃であるようです。高い求人の需要があるために採用もされやすく、日本語が話せなくても授業することは可能。。でも、今年の ぬえの生徒の中にも、やっぱり「NOVA」の教師がいて、倒産の影響をもろに受けて収入のメドがつかず、先日聞いた近況では。。とうとう帰国せざるを得ない状況になったようです。。
このほかにも 外国人に教えていると、日本の入国ビザを取得する事がいかに難しいか、とか、入国管理の仕事がいかに意地悪で非情なのか、という実情も知ったりします。これらの問題に直面するとき、ぬえはもう、日本人として恥ずかしく思うこともあります。日本文化を愛してくれる彼らが受けた仕打ちに対して、ぬえが謝りたく思うことさえ。。
でもまあ。。来年もすでに「インターナショナル邦楽の集い」は6月1日(日)に梅若能楽学院で開催される事が決定しました。ぬえもすでにカナダ、ニュージーランド、オーストラリアの生徒さんに稽古を開始しています。このうちの何人が半年後の舞台で仕舞を勤めるところまでこぎ着けるかは まだわからないけれど、また深夜まで祝杯をあげるような良い催しになればいいな、と思っています。