ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第14次支援活動<気仙沼05/25~05/29>(その1)~はじめての夜行バス

2013-06-17 13:46:20 | 能楽の心と癒しプロジェクト
ようやくご報告することができます、先月の東北地方での活動。

去る5月25日(土)と28日(火)~29日(水)、「能楽の心と癒やしプロジェクト」では気仙沼市で第14次となる活動を行って参りました。今回は気仙沼で震災よりずっと以前から活動を続けておられる障害児童の支援NPO団体「ネットワークオレンジ」さんが新拠点となる建物を新築されまして、その落成式にお呼ばれしての訪問となり、併せて鹿折の仮設商店街でも活動させて頂きました。

「ネットワークオレンジ」さんは、以前に 気仙沼の児童劇団「うを座」さんの関係者がこちらの団体のメンバーである関係からご紹介を頂き、昨年のGWの頃に活動させて頂きまして、それ以来のおつきあいということになります。このときも若手スタッフの白幡さんが労を厭わず準備にご協力頂き、そのうえ上演時間が近づくと会場の前の道路で通行人の呼び込みさえしてくださるご厚意で。。このときも印象が深かったのですが、その後この会場に音楽家からグランドピアノが寄贈されたそうで、それでは会場ではもうイベントを開けるスペースはないかな。。? とも思い、その後は時折、気仙沼で活動をする際に連絡を差し上げる程度のおつきあいになっていました。

ところがこの春に白幡さんから連絡を頂きまして、それが今回の活動となりました。その内容というのが、気仙沼市の中心部にある三日町の事務所(兼・児童の作業所)のほかに、もう1箇所の活動拠点の建物を新築されることが決まったそうで、その落成式で能を上演してほしい、というものでした。しかも、この新拠点「東新城オレンジ」の建物は日本の協力者の募金もあたものの、ドイツの協力者から寄贈されたものなのだそうです(!)

どうも「ネットワークオレンジ」さんが展開されている事業の規模を見誤っていたようです。実際、障害児童の支援団体、という情報しか それまでの ぬえは持っておらず、まあ、そういうNPO団体は割と多いと思うので、正直に言って ぬえにはその程度の認識しかありませんでした。

この度「ネットワークオレンジ」さんのリーダー、小野寺美厚さんと じっくり話し合う機会があり、それは ぬえにとって大変な衝撃でした。こんな事を考えている人がいるのか。。被災地で出会ったスゴい人。それは石巻で会った「チーム神戸」のリーダー、金田真須美さん以来の衝撃かもしれないです。そのどちらもが女性だ、というのも感慨深いものがありますが、しかも小野寺さんはボランティアさんではなく、震災前から気仙沼で活動を展開していた市民。震災によって「ネットワークオレンジ」さん自体も新たな方針を立てられたそうですが、「次の災害が起こったとき。。それがこの東北地方であれ、よその土地であれ、避難したり支援する拠点」。。について考えておられました。いや、 ぬえの管見では、ただ単純にそう言う方に巡り会うことがなかっただけなのかも知れないのですが、実際のところ、ぬえが2年間東北地方で活動を続けている中で、被災地の方で「次の災害」に対する大規模な備えを計画されておられる方に出会ったのは、これが初めてです。

さてそれは追々ご紹介するとして、まずは「ネットワークオレンジ」さんから落成式への出演のご招待を頂きましたが、あいにく 笛のTさんがその日は都合が悪く、能の上演は落成式当日ではなく、「落成記念週間」というか、関連イベントとして別の日に行うことになりました。。が、ぬえ自身は落成式当日のスケジュールが空いていたので、せっかくの機会ですので ぬえ一人で出席させて頂くことになりました。

一人では装束を着ることはできないので、この落成式は裃で舞囃子を勤めることにしましたが、それならば荷物も少なくて済みますし、なにより東京でのスケジュールを考えると、落成式その日だけしか気仙沼にいられない予定でしたので、交通費の節約と体力温存のために初めて往復とも夜行バスを利用して訪問することにしました。

東北支援をしている友人からは「え?夜行バス、はじめてなんですか?」と驚かれますが、ぬえは装束やら支援物資を持参するので公共の交通機関は使いづらいのです。これまでに2度、新幹線を利用して気仙沼と松島町、女川町に行ったことがありますが、装束のトランクを引きずりながら歩いた最初の気仙沼の1回目でギブアップ。。2度と電車では来ない! と誓ったのです。。が、昨年秋に家族で松島町と女川町で活動した際は一人ではなかったし、現地では友人の車に乗せてもらったり、レンタカーを借りたりと条件が恵まれていたので、まあ、苦もなく移動できました。。ので、場合によっては公共交通機関の利用もありかなあ、とも。

そういうワケで、今回ははじめて夜行バスを利用したのですが、ネットで調べるといろいろあるんですね~。発着時間の違い。4列シート、3列シート、2+1列シート。休憩のあり、なし。こんなにたくさんの運行会社や運賃の差があるのかとまずビックリ。あとで夜行バスのエキスパートの笛のTさんに聞いたところでは、やはり運賃によって設備。。だけでなく車内の雰囲気にも微妙な違いがあるそうですが、さすがに初の夜行バスということで隣りのお客さんと肘が触れ合わない3列シートに絞って探すことに。。って、東京から気仙沼に行く高速バスは岩手県交通が運行する「けせんライナー」だけであった。。

深夜23時に池袋を出発し、翌早朝6時に気仙沼市役所前に到着する「けせんライナー」。3列シートなのがまずは安心でしたが、さて当日バスの発着所に着いたときは初めての夜行バスにドキドキでした~。だいたいいつも ぬえ、寝ないのに。。いいのか?

で、休憩もない長距離移動なので一応、文庫本と胸ポケットに入れようと小さなペンライトを用意したのですが。。まずは3列シートの窓際の席のうえ、隣りが2席とも空席でひと安心。でも出発してすぐに車内は消灯。。そしたら話し声ひとつ聞こえない静寂。。み~んな熟睡モードです。厚いカーテンでほとんど外光も入らず。。ん~なんか不気味な。とても文庫本を読める雰囲気でないので音楽を聴きながらおとなしくしてをりました~。

。。それでもなんとか眠ったようで、夜明け頃に目を覚まし、カーテンをちょっとめくって(隣人がいたら迷惑がられる。。)いつのまにか一関から気仙沼に到る、通い慣れた道を通っているようでした。やがて朝6時、気仙沼市役所前に無事到着。はじめての夜行バス旅は退屈ではありましたが、苦痛ではなかったのでまあ、こんなもんか。