ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第14次支援活動<気仙沼>(その4)~小野寺美厚さんのこと(2)

2013-06-22 18:12:02 | 能楽の心と癒しプロジェクト
ぬえ、ただいまマリモ姫と一緒に旅行中です~。こないだ気仙沼から帰る夜行バスのチケットかじったあの方。

震災以来はじめて茨城県の鹿島港を見て来ました。思ったより被害が大きくてビックリ。海釣り公園だった「魚釣園」は壊滅、それがあった小さな漁港は岸壁が真新しいコンクリートで作り直されていましたが、使用できるのはまだ先のようです。「港公園」は元のままでしたが、展望台のチケット売り場で聞けば、震災の日の群発地震では茨城県沖が震源の地震もあって、すさまじい揺れがあったそうです。津波の前に海の底が見えるほど潮が引き、芝生の庭は海から数メートルは津波の引き波でえぐり取られてしまったのを復旧したのだそう。近所には液状化現象で傷ついた道路がまだ工事中で、ここより南の千葉県では死者もあったそう。。

。。。

さてご報告の続きです。

美厚さんの話題で面白いのはバンドの「TUBE」とのつながりでしょうか。双子のお子さんに障害があることが解ってつらい思いをされていた頃、「TUBE」の音楽に勇気づけられたのが、どうも美厚さんの出発点らしいです。その後ずっと時間が経って、「ネットワークオレンジ」さんの活動がだんだんと大きくなってきた頃、ふとしたキッカケで「TUBE」の事務所の社長さんと知り合いになり、美厚さんが活動の契機となったのが「TUBE」の音楽であることをうち明けたのだそうです。

社長さんもこれに応えて、「TUBE」のメンバーや関係者といろいろと調整を重ねて、曲を「ネットワークオレンジ」さんが活動の中で使うことが許されるようになったとのこと(これが実は大変な作業であるらしい事は東北地方での活動の中で ぬえも耳にしたことです)。

そのうえ「TUBE」のメンバーも粋な計らいを。前回ご紹介させて頂いた「東北マルシェ」のイベント当日に、「TUBE」がサプライズで登場したこともあるんだそう。そういえばこの日の「東新城オレンジ」落成式にも「TUBE」から届けられた大きな花が飾ってありました。坂本龍一さん、中井正広さん、庄野真代さん。。ぬえが見てきただけでも、いろいろな有名人さんも復興支援に携わっておられるんですね~

それからもうひとつ美厚さんら「ネットワークオレンジ」さんの活動で特筆しておかなければならないのは、起業支援の活動ですね。この日の落成式で。。正確にはそれが終わって ぬえが「東新城オレンジ」を失礼して次の活動場所に移動する際に、ぬえは落成式に出席された気仙沼の女性3人さんとなんとなくお話していたのですが、この方々は「ネットワークオレンジ」さんの支援活動の成果として起業された方々だったのでした。お仕事は足つぼマッサージとか、ちょっとした、趣味から高じたような印象のものでしたが、こういう地元に密着するような小規模の事業が地域を活性化させる、と「ネットワークオレンジ」さんでは考えておられるのでしょう。

こうして起業に必要な知識やノウハウ、必要書類の書き方などを指導することで、単なる特技から経営に結びつけ、前述のような地域産業の振興や、ひいては「東北マルシェ」のように、それらを結集するような大きな活動に結びつける意味があるのだと思いますが、これら起業家の方から聞いて印象的だったのは、行政からの補助?を受けるまでにこれらの方々が成長したことで、「ネットワークオレンジ」さんで指導を受けた起業家の方には、こういった補助の審査の合格率が高いのだ、とのこと。

美厚さんには「ああ、それで税金がそちらに廻りすぎだ、と国会に呼び出されて怒られたんですね?」なんて軽口をたたいて笑わせた ぬえですが、ご自分たちも被災されたにもかかわらず(家や実家が震災で流されたメンバーもある模様)、気仙沼全体の活性化から、次の災害にまで視野を広げられ、さらにそれを実践している美厚さんらの活動は、ちょっと ぬえには驚きを通り越した感銘を与えました。

ついでながら。。余計なことではありましたが、ぬえにはどうしても美厚さんに聞いておきたいことが。。それは、これほどの活動を展開している中で、バッシングは受けなかったですか? というもの。答えは案の定「大変な非難もありました~」と。笑っておられたが、。お察し致します。。

これは震災には関係なく、あまねく人々が共同で生きている社会の中で避けて通れない事なのかもしれませんが。。ぬえには東北で支援活動をする団体や個人が、誹謗中傷を受けたり、ときにはそれが暴力にまで拡大したり、ということを何度となく目にしてしまいました。そのために活動そのものを断念してしまったり、ちょっとこれは。。と思いますが、社会を逆恨みしてしまった人も。。

混乱と復興のための強い情熱と。人が集まれば当然いさかいも起きるもので、今回の震災の支援活動の負の側面というものも同じようにあったし、それは混乱と情熱が大きかった分だけ増幅されていたようにも ぬえには思えました。ありきたりの言葉で結ぶのもどうかと思いますが、これらの困難をも克服して次々と活動を展開されている美厚さんや「ネットワークオレンジ」さんの活動に敬服した ぬえなのでありました。

ぬえの方も、プロジェクトの目標のひとつとして昨年から展開している「文化の復興」(あいかわらず、ナマイキかなあ、とも思っておりますが)という事について美厚さんにご説明させて頂きました。美厚さんは「それは素敵ですね~」と。美厚さんに褒められると、なんか嬉しい(笑)。