キョウヨウとキョウイクがない。わたしには、ない。
*
キョウヨウは今日用事があること。キョウイクは今日行くところがあること。らしい。
*
なんの用もない。どこにも行くところがない。
*
このお爺さんは毎日毎日これだ。退屈だ。家の中にじっとしているしかない。
*
人の顔も見ない。おしゃべりもしない。
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庭先に来る雀を眺めているだけだ。
キョウヨウとキョウイクがない。わたしには、ない。
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キョウヨウは今日用事があること。キョウイクは今日行くところがあること。らしい。
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なんの用もない。どこにも行くところがない。
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このお爺さんは毎日毎日これだ。退屈だ。家の中にじっとしているしかない。
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人の顔も見ない。おしゃべりもしない。
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庭先に来る雀を眺めているだけだ。
恋人募集中。って、わけにもいかないかな。お爺さんだからな。
優しくしてくれる人の傍にいたいな。別に話はしなくてもいいかな。
お爺さんは人を好きになってはいけない、という戒めがある。ある。だから、その戒めを破ってはいけない。
で、禁固中の人のようにしているしかない。
でも、お爺さんでも感情は動く。人に惹かれる。通りかかった美女にはよよよよ、となる。靡く。枯れ木じゃない。石じゃない。
幸い、そういう人にお目に掛からずにいる。家の中に引き籠もっているから、安全だ。禁を犯さないで済んでいる。
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物質の肉体は老人でも、こころは物質ではないから、老いてない。死んでしまうまでは人はみな生木(なまき)だ。
ふっと若い頃に戻る。戻っている。こころが肉体を離れて、軽々と軽くなって、華やいで、るんるんしたくなって、浮かれて、遊びだす。困ったものだ。
「わたしあなたの恋人になります」は10000ボルトの電流を起こす発電機。これを言ってくれるのは、しかし、空を吹き渡る風くらいだ。せいぜいが春の霞くらいだ。
ちょっとだけ、公民館の近くにある梅の木の、梅の蕾が膨らんで来たようだ。色はまだついていない。
今朝は寒かった、ひどく。冷えた。1℃しかなかった。車のフロントにびっしり霜が降りていた。
うん、梅が咲き出すにはまだ寒すぎるかなあ。待ち遠しいなあ。
お空がいい顔をしています。爽やかな顔です。お空のいい顔はいいなあ。それを見ていられるだけでいい気持ちになれるなあ。
気温は12・5℃。じっとしていると肌寒い。
お昼ご飯の後で、しばらく外に出ていた。小さな低い椅子に座って庭の草取りをして、遊んだ。アネモネが発芽をしているところをの草を取った。
草取りをすると魂が安らいで来る。フシギだなあ。右手に農具を握り、草を根っこから抜く。左手でこれを拾って籠に収める。籠が一杯になると捨てに行く。それだけなのになあ。
誰も居ない。一人でいる。お喋りもしない。口笛を吹くことがある。歌謡曲をハミングしていることもある。
*
山から山鳥のジョウビタキさんが降りて来て、1m近くの木の枝に止まり、チ、チッチッと鳴いて挨拶をする。今日は背中に紋のあるオスの方だった。
やあ、こんにちは。遊びに来たの? 今日はお天気がよくていいね。気持ちいいね。などと話しかけてみた。ずっとこちらを見ていた。どうしてそんなに人間に興味があるのかなあ?