全国燗酒コンテスト 2021
お値打ちぬる燗部門 最高金賞 7/10 「杉錦 山廃本醸造」
杉錦 山廃本醸造 燗酒コンテスト2021最高金賞受賞
8月に東京で開催された2021全国燗酒コンテストの「お値打ちぬる燗部門」で「杉錦山廃本醸造」が251点の同部門出品酒のうち上位5%に与えられる「最高金賞」に選ばれました。またプレミアム燗酒部門で「杉錦生酛特別純米」が「金賞」を受賞しました。全国燗酒コンテストについては主催者のHPで以下のように紹介されています。
全国燗酒コンテストは“世界で唯一、温めておいしい酒を選ぶコンテストとして開催されてきました。日本酒は温めるとうまみが増し、味わいが軟らかく膨らみます。油脂を溶かしてさらりとし、料理を引き立てます。燗酒が究極の食中酒と呼ばれる所以です。また燗酒は徳利や盃などの酒器を発達させ、豊かな酒文化を育みました。
吟醸酒や生酒が普及し始めたのは1980年ごろのこと。フレッシュで華やか、繊細な味わいは人々を魅了しましたが、「上質な酒は燗をしない」と誤解も広がります。こうした誤解を解こうとするかのように、一部の専門機関が燗酒での酒質審査に着手しました。全国燗酒コンテストはこれを引き継ぐ、専門家による厳正な審査会です。「温めておいしい酒」を周知することによって、「燗」という日本酒ならではの魅力をアピ―ルすることを目的としています。 引用終わり
今回最高金賞を受賞した「杉錦 山廃本醸造」は杉井酒造の一番ベ―シックなお酒です。原料米は麹が「ひとめぼれ」掛米が「あいちのかおり」という一般米で70%精米です。 一般的に酒造りでは米を磨くほど雑味が減ってすっきりした味わいになると言われますが、敢えて高精白にせず、お米由来の味わいを生かす事を意図しています。麹造りにあたっては原料米を10kgずつ丁寧に洗い、小ぶりの麹箱で吟醸麹に近い造り方をしています。
乳酸醗酵の工程がある伝統的な「山廃造り」で造りました。山廃造りの酒は味わいに”コク””幅”があり熟成により味わいが深まり、燗に向くと言われています。
本醸造は強いキャラクターがある酒ではないので、広くいろいろなお料理に合わせられますが、しずおかおでんのような素朴な味わいのお料理、お刺身なら白身やマグロよりカツオ、さらにカツオのへそ、はらも、など特徴のあるものがお勧めです。
「杉錦生酛特別純米」は山田錦を60%まで磨いて生酛で造っています。山田錦60%という規格はきれいな味わいを目指したものですが、生酛造りにする事により味わいの幅、深みもでる事を意図して造っています。日本酒度の切れ具合は「山廃本醸造」と同じくらで、米を磨いていてありますが、純米酒なので酸味は本醸造より感じられこちらのほうがより辛口の印象です。
日本酒度 +8
酸度 1.4
アルコール分 15.5%
原料米 国産米100%
精米歩合 70%
使用酵母 きょうかい701号
杉井酒造 静岡県藤枝市小石川町4丁目6番4号
杉井酒造のラインナップ
「杉錦」菩提もと純米・純米大吟醸・生酛純米大吟醸 など
私たちの目指す酒造り
日本の長い稲作と食文化の歴史と共に歩んできた清酒は「日本人が大昔から育て上げてきた一大芸術作品である」(坂口謹一郎著 日本の酒)と言われます。その中にはうまい酒を生み出すための先人の知恵と工夫が凝縮されており、米と水、麹菌、酵母、乳酸菌などの人知を超えた自然の働きによって醸しだされる深い味わいの可能性が宿っているに違いありません。私たちは米から自然の働きによって醸しだされるその深い味わいを実現した酒を造りたいと思います。その手段として私たちが大事にしているのが「生酛・山廃」といわれる自然の微生物の働きを使った伝統的な醸造方法と「熟成」の工程です。
消費者離れが進んでしまった日本酒をもう一度お客様においしいと納得して頂くために、現在の多くは「吟醸造り」に力を入れています。吟醸造りは高精白した原料米と特別に手をかけて造られる吟醸麹を使って、選抜を重ねた吟醸酵母による低温発酵により吟醸香といわれる果実様の香りを穀物である米から生み出す日本酒の芸術品といわれる酒造りの方法です。私たちも吟醸造りには特別の情熱をもって取り組んでいます。
しかしながら、吟醸酒が日本酒の一つの理想を体現した酒である事は確かですが、現代の吟醸酒の一部は香りの華やかさに重きをおきすぎて、食事との相性が悪く飲みあきしやすいという欠点があります。飲やすさを優先して酸味を抑え甘味を多くすべしという思想で造られた酒は飲み屋で一杯やる分には良いお酒です。一方で家でじっくり飲まれることが多い純米酒や本醸造については、香り重視で、低酸志向で造ろうという吟醸酒志向ではなく、別の思想、理屈、技術を持って酒造りを行う必要があります。
私たちは吟醸酒とは異なる思想で純米酒の味わいの可能性を探求したいと考えています。原料米を磨かない酒造りでは雑味や酸味が多くなりますが、生酛・山廃造りと組み合わせる事により野趣に富んだ複雑な味わいが生まれます。またこのような酒は熟成により味わいが深まり、普段の生活の中で楽しんで頂く酒として、食事との相性も優れています。私たちの酒は吟醸酒のような飲みやすさを持ち合わせていないかもしれませんが、飲み進むにつれ体に馴染み飲み飽きしない酒だと考えています。私たちの造った酒の味わいに共鳴してくださるお客様に一人でも多くめぐり逢えたなら幸いです。
2015年8月吉日 杉井酒造 代表/杜氏 杉井均乃介