「笹巻き」
主な伝承地域 県内全域
主な使用食材 もち米、笹の葉、きなこ、砂糖
歴史・由来・関連行事
「笹巻き」は、浸水後に水切りしたもち米を笹の葉で巻き、結びひもをかけた後、熱湯でゆで上げた食べ物。ほかの県では「ちまき」とも呼ばれる。笹の葉には防腐性や抗菌性があるといわれていて、昔から保存食や携帯食の包装によく使われる材料だった。
山形県では、年越しや正月のほか、祭りや祝い事など、年間を通してよく餅をついて食べる。こうした餅文化は米どころであればそう珍しくはないが、もち米を粒のまま使用する「笹巻き」や、鶴岡市の南部でつくられているような灰汁水で煮る「笹巻き」は珍しい郷土食として知られている。灰汁水で煮る「笹巻き」は、戊辰戦争をきっかけに保存食として伝わったという説がある。
「笹巻き」は、特に5月5日の端午の節句に供えられ、子どもの健康と元気な成長を願い、「柏餅」などとともに各家庭で食べられてきた。
食習の機会や時季
「笹巻き」は、端午の節句で食べる行事食。また、庄内地域の中央に位置する庄内町余目地区では、正月、七つ祝い(人日の節句)のために笹の葉を50枚近く使った大きな「笹巻き」をつくり、集落の一軒一軒にお祝いとして配っていくという風習がある。
昔は、雪の多い山形県では上巳の節句、端午の節句をひと月遅れで祝うことが多かった。5月末から6月ごろになると笹の葉が大きくなり、笹巻きをつくるのにちょうど良い大きさになった。現在は月遅れで祝うことは少なく、笹の葉はゆでて冷凍にしておくことで、1年中使える。
いまでは、家庭で「笹巻き」つくることは少なくなったが、スーパーマーケットや直売所等で購入して食べる家庭も増えている。
飲食方法
笹の葉をほどいて、きなこ砂糖をかけて食べる。なかには、そこに塩を加えたり、砂糖ではなくきなこと黒蜜を合わせたりする地域もある。灰汁水で煮た笹巻きには黒蜜ときなこをかけて食べることが多い。
「笹巻き」は飲食方法だけでなく、笹の葉の巻き方や結びひものかけ方、煮る時間などレシピに地域性があり、どれも少しずつ違っている。たとえば、笹の葉は三角に巻くのが主流だが、最上地域では円すい型、置賜地域ではげんこつ型に巻かれることもある。笹を結う材料は「いぐさ」、「すげ」、「みご」など手に入る材料を使う。
笹の葉で巻いたもち米を熱湯で煮る調理方法が広く浸透しているが、鶴岡市南部では灰汁水の上澄みで煮る調理方法が定着している。灰汁水のつくり方はナラやブナ、桜の木などを焼いてできた木灰100gを水900mLに入れ、火にかけ、沸騰させて、上澄み液をとる。灰汁水の上澄みで煮るともち米に含まれるフラボノイド色素がアルカリで黄変し、米粒は軟化してぷるんとした食感に変化し、口当たりはお湯で煮るタイプの「笹巻き」とは異なる。下準備の段階から、もち米を灰汁水に浸けていたり、煮る時間に差があったりと地域内でもレシピは多彩。
保存・継承の取組(伝承者の概要、保存会、SNSの活用、商品化等現代的な取組等について)
「笹巻き」を巻ける人が高齢化しており、技術の伝承が途絶えてしまう危機を迎えている。この文化を守ろうと、地域のNPO法人や食育ボランティア団体、グリーン・ツーリズム実践団体が主催する体験教室が開催されている。また、JA女性部や地域の女性達がつくった「笹巻き」がスーパーマーケットや直売所で購入できる地域もある。
*https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sasamaki_yamagata.html より
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