第191回 2018年4月17日 「世界を魅せる上品モダン~佐賀 有田焼~」リサーチャー: 南沢奈央
番組内容
華麗な絵付けで古くから盛んにヨーロッパに輸出されていた伝統ある磁器「有田焼」。その有田焼がいま世界で再び脚光を浴びている。ミラノのデザイン見本市で話題をさらったのは、これまでのイメージをくつがえす、スタイリッシュでマットな質感のパステルカラーのカップ。さらに深い青の濃淡で染め付けた皿や、金の彩色が映えるエレガントな花模様の皿など、新たな表現に挑戦する職人たちの繊細な技を女優の南沢奈央がリサーチ!
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201804171930001301000 より
日本の磁器の歴史を築き上げてきた「有田焼」は、時代と共に変化しながら我々の食卓に潤いを与えてくれます。
そして、今、世界を目指した「有田焼」が続々登場しており、世界で高い評価を受けている「有田焼」もあります。
1.フカガワブルー「ブルーワイナリー」(深川製磁)
佐賀県西部の有田町。日本最古の磁器の産地で、今も100軒以上の窯元があります。
その中の一つ「深川製磁」は、明治27(1894)年に深川忠次が理想とするやきものを表現するために設立した工房です。
深川家では、1650年頃よりこの有田で代々窯焚き業を営んできました。
開窯以前から、若くして渡欧を重ねてきた忠次は、ドイツの「マイセン」を始めとする各国の窯元が台頭している様子を目の当たりにし、「世界一のやきものづくり」を目指すようになりました。
「富士に流水」の商標に、創業時に忠次が世界進出への思いを込められています。
そして、英国のウェッジウッド家に長期滞在した時に見たオールドスタイルの磁器工場と有田の細工場(さいくば)を複雑に組み合わせた工房を築いたのでした。
忠次は1900年の「パリ万博」に、極めて高い装飾技術によって作られた「染錦金襴手丸紋鳳凰文様 大花瓶」を出品して金牌を受賞。
その後も各国の万国博覧会で賞を得て、国際的な注目を集め、世界にやきものの魅力を発信します。
また、明治43(1910)年には「宮内省御用達」となり、戦後まもなく制度が廃止されて以降も令和の現在に至るまで、宮中食器を納めています。
「深川製磁」では、忠次がパリ万博で金牌を受賞した100年後の現在も、2005年にイタリア ミラノにスタジオを開設、世界最大級のインテリア見本市イタリア「ミラノ・サローネ」や、フランス・パリの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」への出展など、受け継がれた日本の美感を、海外へ発信し続けています。
なお、「染錦金襴手丸紋鳳凰文様 大花瓶」は、現在、「チャイナ・オン・ザ・パーク 忠次舘」に展示されています。
「深川」の名を世界に知らしめたのは、染付の澄んだ美しさでした。
忠次が何よりこだわったのは、1350℃の高温焼成によって生み出される「透白磁」と、その上に描かれる品格ある「フカガワブルー」と評された「青」でした。
また、古伊万里・柿右衛門・色鍋島など、従来の有田焼のデザイン様式と一線を画した斬新な意匠は「深川様式」と評されました。
歴史的な工房の中では、職人達がオーケストラのように、それぞれの技を発揮しながら、一貫製作でやきものを作っています。
有田焼の基本は分業制です。
最高の作品を実現するには、それぞれの工程において完璧な仕事をしてくれる職人達の熟練の技を集結させることで高品質の独自の意匠を生み出すことが出来ると忠次は考えていました。
「深川製磁」には、現在も有田で最多となる7名の伝統工芸士が在籍しています。
深川製磁 佐賀県西松浦郡有田町原明乙111
2.1616/AritaJapan(百田陶園・百田暁生さん)
「有田焼」は世界からも高く評価され、多くの作品が輸出されていますが、平成2(1990)年をピークに売上が低迷し、現在は最盛期の5分の1まで減少しています。
そこで、日常の食卓に有田焼を作ってもらおうとシンプルなデザインの作品が登場しています。
平成24(2012)年、デザイナー柳原照弘がクリエイティブディレクターとなり、有田焼の伝統を踏襲しながらもこれまでの有田焼とは異なるデザインアプローチを試みた、
有田焼を世界へと伝える新ブランド「1616/AritaJapan」が誕生しました。
「1616/AritaJapan」は同年初出店したミラノサローネにおいて、世界中のデザイン関係者から高い評価を得、現在はヨーロッパを中心に、18カ国以上で展開しています。
「百田陶園」(ももたとうえん)の百田暁生(ももた あきお)さんは、その製造元です。
百田家は正保4(1647)年〜明治4(1871)年)まで鍋島藩有田皿山代官所統括の元で窯焼きの仕事に従事していました。
百田さん自身は、平成3(1991)年にロクロの修業を始め、平成7(1995)年に独立・開窯。
その後は有田焼の総合商社として、有田の窯元と共に妥協のないものづくりを続けています。
デザインは現代風だが、作り方は昔の手法のままだだそうです。
海外で高い評価を受けたのは、そのシャープな直線的なフォルム。
ですが直線を作り出すのは大変だそうです。
また「ミラノサローネ」で話題をさらったのは、これまでのイメージを覆す、スタイリッシュでマットな質感のパステルカラーの色です。
「錦右エ門窯」の山口幸一郎さんが作りました。
色付けに使う顔料をエアブラシで霧状にして吹き付けることにより、グラデーションなどをの色合いを生み出せるのだそうです。
なお「1616 / arita japan」は、シリーズごとに新たなデザイナーを迎えて発表されています。
柳原照弘さんがデザインした、シンプルな形状の陶磁器のシリーズです。
用途を限定しないフレキシブルな形状でありながらも、非常に強度のある高密度の陶土を用いたライトグレーの器です。
オランダ人デザイナーのショルテン&バーイングスさんが担当した、日本の伝統色である、淡く果敢ない色の層を重ねながら、陶磁器という文脈の中で再解釈したテーブルウェアのシリーズです。
ピエール・シャルパンがデザインした、中央部には色を付けずに、縁に沿って作られたわずかな隆起によって生まれた陰影が器です。
セシリエ・マンツのシリーズです。
スタッキング可能なプレートやボウルなど、フラット、ディープ、ロー、トールの4つの要素で構成されています。
豊富な経験と技術をもつ有田の人々と共に、遥か昔の記憶を引き継ぐようにと名付けられた「1616 / arita japan」は、
日本の伝統に新たな解釈をもたらし、これからの未来に寄り添っていきます。
百田陶園 佐賀県西松浦郡有田町赤坂丙2351-169
3.「GALLERY」シリーズ(アリタポーセリンラボ・7代目 松本哲さん)
「ARITA PORCELAIN LAB」(アリタポーセリンラボ)は、シンプル・モダンでスタイリッシュなデザインが魅力で人気のブランドです。
現代のライフスタイルにマッチし、機能的にも使いやすさを考慮したデザインで、普段使いのテーブルウエアとしてもおススメです。
手掛けたのは、佐賀県有田で200年以上続く「有田製窯」、現・「ARITA PORCELAIN LAB」(アリタ・ポーセリン・ラボ)です。
「有田製窯」(「アリタポーセリンラボ」)の源流である「弥左ヱ門」を初代が立ち上げたのは、200年以上前の文化元(1804)年のこと。
以来200年の間、「弥左ヱ門窯」の歩んだ道は、まさに波乱万丈。
何度も有田焼事業を失いながらも、そのたびに復活してきました。
松本 哲さんが七代目弥左ヱ門に就任したのも、20億円の借金を抱えて民事再生法の適用を受け、事業継続の危機に陥っていた時でした。
事業を継承した松本さんは、「日本発のラグジュアリーブランド」というコンセプトを掲げ、商品ラインナップや見せ方を抜本的に改革。
新たなファンを獲得し、15年かけて20億円の借金の整理を終えました。
かつては古伊万里様式を得意としていた窯元でしたが、「ARITA PORCELAIN LAB」(アリタポーセリンラボ)は若手がアイデアやデザインを出し合い、それを熟練の職人たちが具現化することによって、その重厚で華美なイメージを覆し、
現代のライフスタイルに合う有田焼を提案しています。
ジャパンシリーズは、有田焼の伝統的な様式をそのままに、配色をモダンにしたアリタポーセリンラボを代表するシリーズです。
コニックシリーズは、個別でもセットでも使える新しい松花堂スタイルのお重です。
ギャラリーは、熟練の職人が絵画のように手書きした限定商品です。
番組では、絵つけを行っている吉永さんに絵つけの様子を見せていただきました。
吉永さんは、柄を皿に転写して、絵付けを行っていました。
大部分の絵つけが終わると最後に、細い筆で金の縁取りをつけ、窯で焼いたら完成です。
ゴーフルは、有田焼の伝統的な吉祥文様の美しい陰影を表現しているシリーズです。
スタンダードシリーズは、弥左ヱ門窯の技術を活かしたカジュアルでモダンなシリーズです。
岡 晋吾 監修シリーズは、陶芸家 岡晋吾のデザインや想いと、200年の歴史が生み出す手仕事の温かみを感じられるシリーズです。
新弥左ヱ門は、シンプルで伝統的な古伊万里様式のデザインをお楽しみいただけるシリーズです。
ゴールドイマリは、伝統的な金襴手古伊万里様式をモダンにリデザインしたシリーズです。
ARITA PORCELAIN LAB(アリタ・ポーセリン・ラボ) 佐賀県西松浦郡有田町上幸平1-11-3
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Saga/Arita_2 より
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