第128回 2016年6月7日 「輝く絹“しぼ”の奥深い世界~京都 丹後ちりめん~」リサーチャー: 小野ゆり子
番組内容
“しぼ”という細かな凹凸が生み出す柔らかな風合いと、絹の美しい光沢で、長らく愛されてきた丹後ちりめんの風呂敷。和のもてなしを演出する不動のロングセラーだ。なかでも“鬼しぼ”と呼ばれる大きな“しぼ”は作るのが難しく、希少なもの。その驚くべき制作過程とは?また近年はちりめんの「浴用タオル」まで登場。“しぼ”が、肌に心地よいと大好評だ。京都の丹後地方で作られるちりめん製品の奥深い世界に小野ゆり子が案内。
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201606071930001301000 より
東京・神楽坂の風呂敷専門店「やまとなでしこ」には、様々な柄の風呂敷が並んでいます。
絹製のものは京都の「丹後ちりめん」が多いです。
「丹後ちりめん」とは、京都府・丹後地方で織られている、生地表面にシボと呼ばれる凹凸があることが特徴の織物です。
江戸から明治・大正・昭和初期にかけて、高級織物「丹後ちりめん」は隆盛を極めました。
多くの工程を経て作られる、丹後縮緬の特質とは、
1.しわになりにくく、しなやかで優美です。
2.シボがあるので、肌触りの感触がすばらしい。
3.染付けが良く、美しい模様や柄に染められます。
4.強撚糸織物で、耐久力があって丈夫です。
5.染め直しがきくので、再生できて経済的です。
(丹後織物工業組合の「丹後縮緬」より)
今、「丹後ちりめん」は、風呂敷や着物以外のものにも変身して、注目を集めています。
1.丹後ちりめんの風呂敷(山藤)
京都府の日本海側に面した日本三景の一つ「天橋立」の近くにある与謝野町にある「山藤」(やまとう)。
「天橋立」(あまのはしだて)は、日本神話でイザナギノミコトとイザナミノミコトが逢瀬のために作ったハシゴが地上に倒れて陸地になったものと言われ、皇祖神・天照大神がかつて祀られていた「元伊勢 龍神社このじんじゃ」が近くに鎮座しています。
「山藤」は、江戸時代の天保4(1833)年創業してから約190年に渡って今日も八丁撚糸機(はっちょうねんしきき)を使って強撚糸(きょうねんし)を作り、「丹後ちりめん」を織り上げています。
「山藤」は従来、白生地を生産するだけの織物工場でしたが、現在、風呂敷メーカーとして、「正絹無地風呂敷しょうけんむじふろしき」「友禅風呂敷ゆうぜんふろしき」「正絹袱紗しょうけんふくさ」などの風呂敷を専門に300種類を作っています。
八丁撚糸機(はっちょうねんしきき)は、ちりめんの特徴である「シボ」と呼ばれる細かい凸凹を生み出すため、水を注ぎながら糸に撚(よ)りを掛ける機械です。
「鬼しぼ」の浮いた高級な生地は、絹糸を80本束ねた極太の糸で編まれた高級品だそうです。
分厚い生地の風呂敷は、結ばず包むだけでも高級感が現れるのだそうです。
山藤 京都府与謝郡与謝野町弓木493
2.丹後ちりめんの浴用タオル(「田勇機業」3代目・田茂井勇人さん、専務取締役・濱岡義晴さん)
京都府の北端・京丹後市にある「田勇機業」(たゆうきぎょう)は、「丹後ちりめん」の一番の特徴である「水撚り八丁強撚糸みずよりはっちょうきょうねんし」から、織り、染めまで一貫した生地作りを行っています。
日本国内はもとより、「JAPANブランド」として毎年パリで開催されている「丹後テキスタイル展」において、大手メゾン等から高い評価を得ています。
「田勇機業」の3代目社長の田茂井勇人(たもい はやと)さんは、幼い頃からガシャンガシャンという「八丁撚糸機」(はっちょうねんしきき)の音に囲まれて育った方です。
そんな田茂井さんが開発した新しいちりめん、「丹後ちりめん織元の絹の浴用タオル」が、若者にも人気です。
絹は人間の皮膚と同じタンパク質から出来ていますから、お肌に余計な負担を掛けないため、毎日肌に触れる素材には最適です。
保湿性に優れていると言われます。
また、撚糸によって出来る「シボ」がお肌の汚れを取ってくれます。
厳選した最高品質の絹で織り上げた着物用の厚めのちりめんですから、丈夫で破れにくい素材です。
この絹の浴用タオルを手掛けたのは、京都現代の名工に選ばれた「田勇機業」の専務取締役、濱岡義晴さんです。
ちりめんで浴用タオルを作ったのは、着物用の生地で出荷出来ないものがあったためだそうです。
強撚糸と普通の糸を混ぜて使って織っています。
強撚糸はお湯につけると縮んでしまいますが、普通の糸は縮まないからです。
両方のバランスを取った製品を作るのに半年掛かりました。
田勇 京都府京丹後市網野町浅茂川112
3.谷勝織物(三代目・谷口能啓さん)
「丹後ちりめん」は、戦後の高度経済成長期に生産量のピークを迎えましたが、着物の需要が減るにつれて衰退していきました。
「谷勝織物工場」は、丹後で唯一となった伝統的な織り方を貫き、丹後ちりめんの特徴である「水撚り八丁撚糸(強撚糸)機」で伝統的な丹後ちりめんを糸を掛けるところから一貫製造を行っています。
「谷勝織物工場」では、「水撚り八丁撚糸(強撚糸)」を緯糸に使い、経糸と交互に打ち込む「平織」のシルクの「無地ちりめん」のみを
織っています。
最もシンプルな構造なため、全ての工程において、わずかな傷さえごまかせない高い技術が要求されます。
<谷勝織物工場>
柔らかでシンプルな生地だからこそ高い技術が要求される、シルクの無地着物生地に力を入れている谷勝織物工場。丹後で希少となってきた伝統的な織り方を貫いている。
— DESIGN WEEK KYOTO|2/16-19京都府南部の丹波・京都・山城の現場が一斉オープン! (@DesignWeekKyoto) October 11, 2022
「谷勝織物工場」の三代目・谷口能啓さんは、大学で遺伝子工学を学んでいましたが、就職活動中に地元の魅力に気づいて家業を継ぐことに決め、京都室町の呉服屋で5年間の修行してUターンしてからは、最も伝統的な織り方にこだわる一方、「他ではやっていないことを」模索し、
新たな製品の企画開発にも積極的に取り組んでいます。
海外に渡る日本人が現地でスーツの代わりに着られる着物「MISOGI」(ミソギ)や軽くて持ち運べ、見た目の美しさと、極上の肌触りだけでなく、機能性にも富んだ旅用羽織物「SAIUN」(サイウン)です。
どのプロジェクトも、谷勝織物工場が得意とする「水撚り八丁撚糸を使った無地ちりめん」を現代的なプロダクトに着地させたものです。
着物「MISOGI」(ミソギ)は、スーツケースに小さく畳んでも、ハンガーに一日掛けるとシワがほとんど目立たなくなります。
強撚糸(きょうねんし)は扱いが難しいため、加工した強撚糸を使用されることが多いそうですが、谷口さんは本来の強撚糸を使って、
「本一越」(ほんひとこし)という織り方をしています。
現在は、滅多に使用されない織り方だそうです。
「本一越」は緯糸が10分毎になくなるため、交換する必要があります。
その交換に時間が掛かるとすぐに織ムラが出来てしまいます。
【名古屋黒紋付染 × 丹後ちりめん - Makuake】
「名古屋黒紋付染」と「丹後ちりめん」によるシルクシャツ。
谷勝織物工場 京都府京丹後市網野町掛津762
4.アシヨネ(旧・足米機業場)
京丹後市網野町にあるアシヨネ(旧名「足米機業場あしよねきぎょうじょう」)は天保元(1830)年創業の、現存する最古の機業場です。
昭和初期の織物工場特有の、ノコギリ型の三角屋根の建物が残っています。
アシヨネ 京都府京丹後市網野町島津636
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Kyoto/Tangochirimen より
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