じないまちの持ち送り

富田林じないまちのいろいろな風景を見て回りました。今回は「持ち送り」。

 

〈仲村家住宅〉富筋西林町　大阪府指定文化財

建築年代　天明２年～３年（1782～83）建設　屋号：佐渡屋　生業：酒造業　享保１９年（1734）以降は「徳兵衛」を名乗る。正徳５年（1715）に酒造株を取得。

道路側：表屋（おもてや）造り＝店舗としての建屋。奥側：主屋は厨子（つし）二階平入り・入母屋・桟瓦葺き・八棟造・煙出し・駒寄せ

 

表屋の入口横に大きな「持ち送り」。

 

〈仲村家住宅東〉灯家（ａｋａｒｉｅ）

仲村家の敷地内にある平屋平入り　切妻の建物。錣（しころ）葺き（大棟から軒まで一枚の面ではなく、一段の区切りをつけてすぐその下から軒までを葺く形式）。南河内の民家に非常に多い屋根の形状です。

 

非常に大きい自然木の「持ち送り」がダブルの特徴のある入口。「持ち送り」が地面まで達していて柱代わりのようになっています。

 

「持ち送り」は張り出した重量を支持する建築技術の1つ。経年変化によりどうしても屋根や庇（ひさし）が重力で下がってくるのを防ぐ意味があります。そしてその建物の玄関の表情を示す意匠にもなっていますね。

 

〈奥谷家住宅〉　城之門筋富山町

　文化元年（1818）～文政十二年（1829）建設　　屋号：岩瀬屋　材木業　平屋平入り・入母屋・本瓦葺き・兜造り・煙出し・駒寄せ・犬矢来

 

奥谷家住宅の入口もダブルの「持ち送り」ですが、形状がまったく異なります。

 

入口右側は一枚板を利用した「持ち送り」。

 

入口左側はかなり白蟻にやられていますが、曲がった自然木をうまく加工した「持ち送り」と思われます。

 

〈東奥谷家住宅〉城之門筋富山町

　文政九年（1826）に建設　　屋号：岩瀬屋　生業：油屋　厨子二階平入り・入母屋/切妻・桟葺き・煙出し・持ち送り

 

大きな単板の「持ち送り」。

 

厨子二階の屋根を支える「持ち送り」。

 

屋根は左が入母屋、右が切妻になっており、切妻部分にある小窓の庇を支える「持ち送り」。デザインが先ほどの柄によく似ています。

 

〈葛原家住宅〉富筋南会所町

建築年代　19世紀初期　屋号：十津川屋　生業：酒造業　銘柄「天下一正宗」

厨子二階平入り・切妻・一部本瓦葺き・持ち送り

天明元年（1781年）頃に当地で酒屋を始めたと伝えられている。

 

白蟻にやられていますが、曲がった自然木をうまく加工した「持ち送り」と思われます。

 

〈南葛原家住宅〉富筋南会所町　安政元年（1854年）建設　屋号：十津川屋　生業：味醂醸造業

厨子（つし）二階平入り・入母屋・桟葺き・三階蔵・忍び返し・持ち送り

 

単板を加工した「持ち送り」。

 

しかもダブルで付いています。

 

〈旧杉山家住宅〉

市場筋西林町　寛永元年（1644）建設（じないまちでは一番古い）　国の重要文化財　屋号：わた屋　酒造業　代々「杉山長左衛門」

厨子（つし）二階平入り・入母屋・八棟造り・本瓦葺き・忍び返し・煙出し・駒つなぎ（跡）・駒寄せ

 

入口の横ではなく、少し離れた１階の屋根を支える形で存在する「持ち送り」。

 

〈杉田家住宅〉城之門筋堺町　１８世紀後半の建設　屋号：樽屋　生業：油屋　代々「樽屋善兵衛」

厨子（つし）二階平入り・切妻／入母屋・本瓦葺き・鍾馗さん・忍び返し・煙出し・駒寄せ

 

大きく出っ張った庇を支えるダブルの大きな「持ち送り」。屋根が本葺きなので重いようです。

 

〈橋本家住宅〉　城之門筋東林町　１８世紀後半建築　屋号：別井屋　酒造業　厨子（つし）二階平入り・入母屋・二階桟瓦・一階本瓦葺き・駒つなぎ・駒寄せ

 

自然木をうまく利用した「持ち送り」。

 

なぜかとても高い位置に「駒つなぎ」？が付いています。ほんとに「駒つなぎ」かどうかわかりません。

 

厨子二階のかどを支える「持ち送り」。

 

切妻部分の四連の「持ち送り」。

 

〈佐藤家住宅〉亀ヶ坂筋北会所町　

文政３（1820）建築　屋号：佐渡藤　紅梅味醂醸造　厨子（つし）二階平入り・入母屋／切妻・本瓦葺き・駒つなぎ・駒寄せ・起り屋根（むくりやね）

 

分厚い単板を加工したと思われる「持ち送り」。すごく大きい部材が使われています。

 

〈森家住宅〉亀ヶ坂筋東林町

厨子（つし）二階平入り・切妻/入母屋・桟瓦葺き・駒寄せ

 

自然木を加工して作られた「持ち送り」。この湾曲があるので頭を打たなくてすみます。

 

〈橋本家住宅　堺筋入口〉

厨子（つし）二階平入り・切妻・桟瓦葺き・駒つなぎ

 

単板を加工して作られた「持ち送り」。その下に駒つなぎ。

ほかにも２ヶ所にシンプルな「持ち送り」があります。富田林じないまちの「持ち送り」のご紹介でした。

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