〈リバイバル・アーカイブス〉2024.9.30~10.14
原本:2023年11月21日
2023年11月12日 すばるホール 『地車化粧幕展』
『河秋会』が主催で、南河内の各町の地車化粧幕を一堂に集めた化粧幕展がすばるホールで開催されました。
11:34 なんと太子町、河南町、富田林市、羽曳野市の16町もの地車化粧幕が展示されました。
〈画面をクリックすると拡大します〉 *以下化粧幕の写真は画面をクリックすると拡大します。
地車愛好会の『河秋会』が主催され企画された化粧幕展です。地車曳行中ではなかなか細部まで見れない化粧幕を見ることができました。出展された各町の化粧幕をご紹介します。
西町(太子町)「竹林の七賢人」
「竹林の七賢人」:中国の晉代に、俗世間を避けて竹林に集まり、酒を飲み琴をひき、清談(古代中国における知識人たちの哲学的な談話)をした七人の隠者(俗世間を逃れた人)
2014.7.27 三番叟を奉納する西町の地車
寛弘寺(河南町) 「富士の巻狩り」より
題材としては一番多く化粧幕に使われています。16台中6台。
地車祭礼用品みやび 「拝み龍」より
尺度(羽曳野市) 「天の岩戸開き」より
夜明けと共に鳴く雄鶏を集めたという神話による。題材としては2番目に多く使われています。16台中3台。
【上】中佐備(富田林市)「富士の巻狩り」、【下】山中田(富田林市) 「源満仲の龍退治」
中佐備 「富士の巻狩り」 左
「富士の巻狩り」:建久4年(1193)5月から6月にかけて、源頼朝が多くの御家人を集め駿河国の富士山麓の藍沢(現在の静岡県御殿場市・裾野市一帯)・富士野(静岡県富士宮市)にて行った壮大な巻狩り(遊興や神事祭礼や軍事訓練のために行われた鹿や猪などが生息する狩場を多人数で四方から取り囲み、囲いを縮めながら獲物を追いつめて射止める大規模な狩猟)。
中佐備 「富士の巻狩り」 右 猪に乗った武者が描かれています。
「富士の巻狩り」を描いた化粧幕はいちばん多くて、今回展示の16地車中6台(37.5%)
中佐備・寺田・寛弘寺・宮甲田・長坂・大道の地車。
山中田 「源満仲の龍退治」 中
「源満仲の龍退治」:摂津多田源氏の頭領、源満仲が悪さをする大蛇を退治する武勇伝。
【上】下佐備(富田林市) 「天の岩戸開き」、【下】尺度(羽曳野市) 「天の岩戸開き」
下佐備 「天の岩戸開き」 中
「天の岩戸開き」:太陽神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸に隠れ、世界が暗闇に包まれます。それを八百万の神が相談して策を練り、ついに大御神を引き出すことに成功します。
下佐備 「天の岩戸開き」 左
案内役の猿田彦命(左)。右は籠られていた天照大御神(あまてらすおおみかみ)。
「天の岩戸開き」の化粧幕の地車は「富士の巻狩り」の次に多く、3台。
下佐備・尺度・中。
尺度 「天の岩戸開き」 左
尺度 「天の岩戸開き」 中
尺度 「天の岩戸開き」 右
「天の岩戸開き」には案内役の猿田彦命(さるたひこのみこと)が描かれています。
2023年10月22日 尺度のにわか奉納 美具久留御魂(みぐくるみたま)神社(喜志の宮)。
【上】寺田(河南町) 「富士の巻狩り」、【下】寛弘寺(河南町) 「富士の巻狩り」
寺田 「富士の巻狩り」 中 「富士の巻狩り」には富士山が描かれています。
寺田 「富士の巻狩り」 左
寺田 「富士の巻狩り」 右
「富士の巻狩り」には猛り狂う猪に逆乗りした武者が描かれています。
2023年10月21日 建水分神社 比叡前での寺田地区の宮入り。
寛弘寺 「富士の巻狩り」中
寛弘寺 富士の巻狩り 左
寛弘寺 「富士の巻狩り」 右
2023年10月21日 建水分神社 比叡前での寛弘寺地区の宮入り。
【上】中(河南町) 「天の岩戸開き」、【下】廿山(つづやま)(富田林市) 「在原業平 東下り」
中 「天の岩戸開き」 中
中 天の岩戸開き 左
中 天の岩戸開き 右
2023年10月21日 中村の宮入り 建水分神社 御旅所「比叡前」
廿山 「在原業平 東下り」 中
在原業平は平安初期の歌人。六歌仙、三十六歌仙の一人。平城天皇の皇子阿保親王の五男。
廿山 「在原業平 東下り」 左
『伊勢物語』には東下りと呼ばれる段があります。業平が都である京都を出て愛知、静岡、東京、埼玉へと旅する物語です。『昔、男ありけり。その男、身を要なきものに思ひなして、「京にはあらじ、東の方に住むべき国求めに」とて行きけり』
廿山 「在原業平 東下り」 右
廿山の地車 2018年10月13日 錦織神社 宮入り
【上】宮甲田(富田林市) 「富士の巻狩り」、【下】長坂(河南町) 「富士の巻狩り」
宮甲田 「富士の巻狩り」 中
「富士の巻狩り」では真ん中に富士山、多くの追われる動物、狐、鹿、猿、兎、猪が描かれています。
宮甲田 「富士の巻狩り」 左
宮甲田 「富士の巻狩り」 右
2018年10月13日 宮甲田の宮入り 富田林市宮甲田町 錦織神社
長坂 「富士の巻狩り」 中
長坂 「富士の巻狩り」 左
長坂 「富士の巻狩り」 右
2023年10月21日 長坂の宮入り 建水分神社 御旅所「比叡前」
【上】大道(だいどう)(太子町)「富士の巻狩り」、【下】後屋(ごや)(太子町)「仙人列伝」
大道 「富士の巻狩り」 中
大道 「富士の巻狩り」 左
大道 「富士の巻狩り」 右
2023年7月29日 大道の地車 南河内郡太子町山田 夏真っ盛りに行われる太子町山田の地車祭り。
後屋 「仙人列伝」 中
「仙人列伝」:中国の動物を共とした仙人が描かれています。亀、龍、鯉、白鹿、虎などの動物が出てきます。
後屋 「仙人列伝」 左
後屋 仙人列伝 右
後屋の地車は舟形地車。
【上】(川西)新家(富田林市)「須佐之男命の八岐大蛇退治(ヤマタノオロチ)」
【下】喜志(大深 おおけ)(富田林市)「楠公父子の別れ」
新家 「須佐之男命の八岐大蛇退治」 中
「須佐之男命の八岐大蛇退治」:八岐大蛇(ヤマタノオロチ)、体ひとつに八つの頭をもち、また、八つの尾を持ったオロチ(大蛇)を須佐之男命が酒に酔わせて眠りこけたところを、十拳剣(とつかのつるぎ)で退治する神話。
新家 「須佐之男命の八岐大蛇退治」 左
新家 「須佐之男命の八岐大蛇退治」 右
新家の地車 2018年10月13日 錦織神社 宮入り
喜志 「楠公父子の別れ」 中
地元の楠公を題材とした化粧幕は意外に少なく、喜志地車の化粧幕だけでした。
中央で白馬を従え立っているのが楠木正成公で、その横で菊水の紋の入った着物を着てすわり、巻物を持っているのが息子の正行(まさつら)かと思われます。
喜志 「楠公父子の別れ」 左
喜志 「楠公父子の別れ」 右
2023年10月22日 美具久留御魂(みぐくるみたま)神社(喜志の宮)から宮出する喜志の地車。
【上】地車祭礼用品「みやび」の「拝み龍」、
【下】甲田(富田林市) 「平景清 錣(しころ)引き伝説」、「源義経 八艘飛び伝説」、「那須与一 扇の的伝説」
*甲田の化粧幕は源平の3つの伝説をひとつの化粧幕で表わしています。
地車祭礼用品「みやび」の「拝み龍」
岸和田にある地車・祭礼装飾「みやび」さんの出品。
甲田 中 源義経 八艘飛び伝説
甲田 左 那須与一 扇の的伝説
甲田 右 平景清 錣(しころ)引き伝説
*錣とは兜の後頭部から首にかけての部位を守る目的で付けられた部分。
甲田地車 2018年10月13日 錦織神社宮入り
猿田彦命 尺度
特徴のあるお姿の猿田彦命。3つある化粧幕で比べてみます。天狗さんとよく似ているのでよく間違えられます。私も間違えていました。天狗は羽(翼)があるよな...
猿田彦命 下佐備 「天の岩戸開き」に案内役として出てきます。
猿田彦命 中(中村)いろんな表情があっておもしろいです。
天狗さんとは違うらしい。2022年10月15日 美具久留御魂神社(喜志の宮)の神輿渡御で御旅所に神輿を先導する猿田彦命。
楠公父子の別れ 喜志
やっぱり楠公さんがいないとね...千早赤阪村の地車にもあったと思います。
熱心に見入る入場者。
主催の河秋会のみなさま。よくぞこれだけ集められました。地元の町会や保存会の協力があり実現できた展示会です。
にわかの実演や『にわかシンポジウム』も開催されましたが、残念ながら私は別の用事でみることができませんでした。
まとめ
〈化粧幕のテーマ〉16化粧幕中
・1位:「富士の巻狩り」 6地車 37.5%
中佐備、寺田、寛弘寺、宮甲田、長坂、大道
・2位:「天の岩戸開き」 3地車 18.8%
下佐備、尺度、中
・以下、各1地車 6.25%
「源満仲の龍退治」 山中田
「竹林の七賢人」 西町
「在原業平 東下り」 廿山
「仙人列伝」 後屋
「須佐之男命の八岐大蛇退治」 新家
「楠公父子の別れ」 喜志
源頼朝の「富士の巻狩り」が一番多いというのは意外でした。また「天の岩戸開き」や「須佐之男命の八岐大蛇退治」という神話を題材としたものも合わせて4件見られます。
また中国や日本の故事を題材にした化粧幕も見られます。
一番意外だったことは地元を題材にした化粧幕が喜志の「楠公父子の別れ」だけであったことです。
「千早城の合戦」「楠公の出陣」のような化粧幕がいくつかあると思っていました。
関連記事:喜志の宮 宮入り 2023 2023.11.6
喜志の宮 宮入り 2022 2022.11.2
写真撮影:2023年11月12日
2023年11月21日 ( HN:アブラコウモリH )
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