アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

憎しみに対する思考

2020年07月22日 | Weblog
 京アニの事件から1年。犯人の治療に当たった医師は、「(犯人は)いつ死んでもおかしくない状況だった。犯人を死なせたら、犠牲者に申し訳ない。事件自体が、迷宮入りになってしまう。何とか犯人を生かさなければ」という一念で治療にあたったという。
 1人の犯人が、70人を死傷させた。タリオにしてやりたいが、不可能。
 なぬ?「それって、任天堂のゲームに登場する、帽子とオーバーオールを着用し、鼻の下に髭を生やしている…あれか」ってか?ソ、ソレハ、「マリオ」。
 タリオは、「同害報復刑」のこと。被害者が受けたと同種の害を加害者に加え、または同種の方法で加害者を害するもの。早い話が、「目には目を、歯には歯を」みたいなぁ…。
 はじめてタリオを知ったときは、戦慄を覚えましたよ。少々、昔の話ですが…
 イランで、プロポーズを断られた男が腹いせに、相手女性の顔に硫酸をかけた。女性は失明…。顔はケロイドで大変なことに。映像も流れましたので、御覧になられ、心をいためた方も多いかと。テヘランの刑事裁判所は、「タリオ」を適用、「女性が男の目に硫酸をたらして失明させる判決」を、言い渡していました。
 おそらく、多くの日本人へも衝撃を与えた判決かと。
 思えば、昔はタリオのようなことをやってましたねえ。
 私も子どもの頃は、一発叩かれたら、一発叩き返しました。タリオですね。隣の子のクレヨンを1mm使ったら、あとで1mm使わせる。…これはタリオとは違うかな。
 お酒を飲むと凶暴になる男がおりました。他人の乗用車のドアにピップアタックしてへこませた。車の持ち主たち数人が、その男へ暴行を加えました。翌日、車の持ち主たちが、凶暴男を呼び出し、「車の修理代を払え」と、迫りました。
 男は、「おう、払うぜ。その前に、昨日オレを殴ったり蹴ったりしたぶんをお返しさせてもらう」。持ち主たちは、一目散に逃げ帰った!タリオだ。
 この一件、なぜ詳しいか?実は、そのピップアタック事件が起こる30分ほど前に、(焼き肉店で)その凶暴男と私とでトラブルがあり、乱闘になりそうだったのです。だって、生肉が入った大皿で私の頭を殴ったんですよ!何の会話もしていないのに、いきなりです。私が、「なにをするんだ!」と、言ったのが悪いとつかみかかってきました。得意の柔道技は使わなかったのかって?店が狭すぎて…。
 ヒップアタック事件については、数日後、焼き肉屋のオヤジに教えてもらいました。次に会ったら、生肉が入った大皿で頭を殴ってやろうと狙っていましたが、その機会が無いままです。タリオ不成立。
 さて、イランの事件。女性が男の目に硫酸をたらして失明させることになったのですが…
 刑の執行をめぐって、アムネスティをはじめ、国際社会の非難が高まった。そして、女性が出した結論は、「イランの名誉のために、男の罪を許す」。
 男を許しても、女性は一生光を見ることが出来ないのに…。硫酸をかけて失明させたのは、偶発的な事故ではない。計画的です。いくらイランでも、日常的に硫酸を携行しませんから。やる気でやったのです。女性も判決通りにやってやればよかったのに・・・。
 刑の執行は無かったわけですが、執行されたとしたら、どのようにしたのでしょうか?男を仰向けに寝せて動けないように固定する。そして、二階から、女性が男の目に硫酸を垂らす…。
 それなら、「二階から目薬だろう」って?イメージとして、二階から目薬なんですよねーっ。硫酸も怖いがタリオも怖い。
 刑としてのタリオは、現在も生きているのかって?比較的早い段階で消滅しています。「国家の定める特定の刑罰」か「財産による損害賠償」へと変化してきています。
 だけど今も、地球上で「タリオ(私刑の形で)」が行われている国は結構あるんじゃないでしょうか。ラゴスの駐在員だった人が、「運転手を雇っている。恐ろしくて自分で運転する気になれない」と。飛び出してきた子を撥ねたりすると、自分の子を引きずり出されて、同様に車で撥ねられる…。そりゃあおそろしい!
 基本的考え方は「応報」ですからともすれば頭をもたげる。ところが、この応報(タリオ)の考えは、「ゲルマンやインドにはない」という。憎しみに対する思考って、違いがあるものなんですねえ。