三重県立美術館で開催されているテオ・ヤンセン展へ行ってきました。
この美術家の名に聞き覚えのない方も、このCMには見おぼえがあるかと思います。
中外製薬TVCF
まるで生きものが歩行するよう浜辺を移動しています。
風を動力にしていることは容易に想像できますが、不思議なのはパイプを組み合わせただけの本体構造です。
生物に似た歩行をしなやかに行うためには、電子制御でコントロールと行きたいところですが、そんなものはどこにも見あたりません。
いったいどういう構造になっているのか。
いったいどのような人が作ったのか。
疑問でした。
展示されていた彼の作品の一部です。
もっと見たかったのですが、巨大な物が多いので、展示できる作品数は限定されるみたいです。
気がつかれた方もいるでしょうが、この作品展は変わっていて、カメラ撮影OKなのです。
また、一部の作品は押したり引いたりして、動きを確認することができます。
もちろん、デモンストレーションも行われていました。
テオ・ヤンセン展デモンストレーション
これらの作品は、電気工事用の塩ビパイプで作られています。
近くで見ると、加工は雑で美しくはありませんが、離れて見ると不思議な造形美を感じ、何よりその動きは、生命を感じるような躍動感と流麗さを感じます。
テオ・ヤンセンは、大学で物理学を専攻しましたが、その後芸術家に転身しました。
奇抜な作品も、この経歴を聞けば、何となく頷けるような気がします。
今回、この有機的に見える動きのしくみを知りたいと思って出かけました。
実は、それはさほど複雑ではない動力方向の変換に過ぎませんでした。
クルマのエンジンは、ピストンの往復運動をクランクによって、回転運動に変えています。彼の作品の中にはこれを逆にしたものがあります。
つまり、風車の回転運動を脚の上げ下げの運動に変換しているのです。
もちろん、脚を単純に上下に動かすだけでは進みませんから。
①脚を前に出す ②脚を下げて地面を踏む ③地面を後方に蹴る ④脚を上げる
という4つ(あるいはそれ以上)の行程になっているのでしょう。
コンピューターなどの電子部品は使用されなくても、生物的なスムーズな動きは再現できるのです。
ということは、本家の生物の動きも実はさほど複雑なものではないのかもしれません。
そして、もうひとつ、動力の変換といえば、我が国にはテオ・ヤンセン氏に劣らないすばらしいものが古くからありますよね。
からくりです。
コンピューター制御に加えて、からくりの技術を極めれば、より人の動きに近いロボットや医療機器をつくることが出来るかもしれませんね。