TVやネットでは、時に常識を疑うような出来事が取り上げられるが、見ている側としては、制作側の誇張のようなものを感じるときがある。
しかし、常識を疑うような珍しい出来事は、時としてわが身に降りかかることがある。桂文珍の創作落語で、現代のマニュアル対応を皮肉った作品があるが、それに似た?いやそれ以上のことが町なかであったのだ。
それは私が初めてウクレレを購入し、その他備品のことでも利用する十字屋のB1F楽器のコーナーへ譜面台を買いに行った時のこと。
私は楽器を始めてからというもの、いつも人様に譜面台をお借りしていて、未だ使用した譜面台を折りたたんだ状態にしたことは無かった。
しかし、自分の譜面台を買う以上、ちょっとした間違いで大切なフレームが折り曲がるようなことがあってはならないので、たたみかたを店員に尋ねた、のだが…以下がその時のやりとり。
私が、たたんで一番小さくなった譜面台の状態を見せていただけませんか?と頼めば、店員(髪の色と髪型がアルフィーの坂崎に似ていたので以下S)は、しばらく譜面台を触り、たたんだ状態どころか組み立て直してからこう言った。「ねじや調整するところをよく見れば、きちんとたたむことができますよ」
それから私が持っていたギターをチラリと見て、「ギターをされてるんですか、どのくらいされてるんですか、練習はどこでしてるんですか、ライブされてるんですか」などと譜面台と何の関係も無いことを、つくり笑いの顔で私に尋ねだしたのだ。
「いや、いや、いや」と私は憤怒の感情を我慢しながら、もう埒があかんとばかり、展示されてる譜面台を触りだして、その店員の前で自分で理解しようと努めだした。でも、台座にあたる部分のたたみかたが分からず、「とにかくたたみ方が分かったら購入するつもりなんだから、やってみせてくれ」と頼んだ。
Sは言い放った「譜面台の高さは高くしない方がいいです。どこで練習されているんですか?」
私は「たたみかた分からないなら別の方に尋ねて(呼んできて)もらえないか、たたみ方が分かったら買ってすぐに帰るんだから」と声のトーンが上がるのを自覚して言ったあと、自分でも抗しがたい忌まわしい卑屈な感情が沸いてきて「私は機械オンチで、譜面台でさえも何かを間違ってフレームをひん曲げてしまうようなことがあったらイヤなんだ、だから知っておきたいのだ」とまで言ってしまった。
しかしSはまだこう言った「ギターを始めてどのくらいですか?」
そのとき私のそばで、別の店員が店の作業をし始めたので、私はすかさずたたみ方を教えてくれと頼み、安い方と軽くてコンパクトになる高い方の二つあった譜面台のたたみ方をデモンストレーションしてくれた。
私が購入する方を決めて、それを伝えようとしたとき、Sが言い放った「高い方はコンパクトになり軽いので持ち運びに便利です」…。
安い方のを選んでレジで支払いをしながら、私は横にいたSに尋ねた。「譜面台のたたみ方なんて訊いてくる人が初めてだったのか?」 その返事は「(レジの方に案内の手を向けて、支払いを)どうぞ~」。
あんた、性質(たち)を悪くし機能不全に陥ったボッコちゃんみたいなんだけど???
要するにSは、私が譜面台のことのみ訊ねているのに、なんの脈絡も無くテキトーな感情のこもっていない営業トークを、客が商品を殺(あや)めてしまうのを覚悟に試行錯誤しているときに放ったわけだ(笑)。どんなマニュアルの誤読だ? ちゃんと教育しているのか?
もしかして、入りたてで事実上の研修初日だったのか? いや、私は対応はしてもらわなかったが、前にもSを見たことある気がする。
私は、譜面台のたたみ方を教えることができないことを責めはしない。でも「少々お待ちください、代わりの者を呼んできますゆえ」という一言さえ、言えなかったのだろうか? あまりにも今回の体験は異常だった。それに他の店員にも、私とSのやりとりは聞こえていたはずなのに、我関せず状態だった。
これを見ている人の中には、譜面台のたたみ方も分からなかったキミもキミだ、とか、さっさと分かる店員を呼べばよかったのだ、キレて店を出れば?と思う人もいるだろうなぁ。
そうだろうし実際、私のなかで抱いていたその店(グループ全体ではない)の「ブランド力」は急激に下がった。だが繰り返すが、私が初めてウクレレを購入した店だったのだ。
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