山口守 編『講座 台湾文学』(国書刊行会)読了。
先に何義麟著『台湾現代史』を読んでいたこともあり、『講座 台湾文学』のなかに出てくる作家名・地名・歴史的事件の名は、若干私の馴染み深いものに感じられた。
編者の山口氏が「あとがき」で
…(略)…台湾文学とは何かという問いは、台湾文学の本質を問うというより、むしろ台湾文学をめぐる様々な考えや議論を呼び起こす契機として考えた方がより生産的な思考へと発展するだろう。単一で固有であることを前提とする一般の近代文学理解を遥かに超越した、多元的で豊かな文学世界の広がりを台湾文学に見て取ることができるからである。本講座では、その多元性が台湾の人々に自由に選択されたものというより、歴史に規定されたという側面を持つことを踏まえながら、台湾文学がどのような内実を持って形成されてきたか…(略)…みずみずしく語っていきたい。
と書いているが、私も山口氏のいう「多元性」こそ台湾文学および台湾を理解するためのキーワードのように思う。
日清戦争後に日本に割譲された台湾が日本の統治を受けて以降、言語だけでなく民族のアイデンティティも多元化しまた多元化せざるを得なかった台湾の歴史と並行して歩んできた台湾文学だが、50年経つか経たないかの間で独特の進化を遂げ続ける様には驚嘆のまなざしを送る以外にないよう思った。矢継ぎ早の化学反応が起こり続けたといったら語弊があるかもしれないが、台湾のような複合文学の文学史をもっている国や地域ってまず見られないだろう。
本には台湾の作家による作品がいくつか紹介されているが、個人的に興味を持ったのはノスタルジーをテーマにした1960年代から70年代にかけて書かれた作品で、特に白先勇という作家の作品を手にとってみたくなった。近いうちに読み始めれればなと思う。
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