デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



源氏物語』 紫式部(瀬戸内寂聴訳) ★★★★★

『日本の反知性主義 』内田樹(編) ★★★★★

『上海歴史探訪』 宮田道昭 ★★★★★

酒楼にて/非攻』 魯迅(藤井省三訳) ★★★★★

日本と道教文化』 坂出祥伸 ★★★★★

源氏物語の愛』 瀬戸内寂聴ほか ★★★★★

ネオ・チャイナ』 エヴァン・オズノス ★★★★★

『上海時間旅行』 佐野眞一ほか ★★★★★

源氏物語の女性たち』 秋山虔 ★★★★★

『変容する死の文化 現代東アジアの葬送と墓制』 国立歴史民俗博物館(編) ★★★★★

『台湾の歓び』 四方田犬彦 ★★★★★

『中国メディア戦争』 ふるまいよしこ ★★★★★

『わたしの台南』 一青妙 ★★★★☆

台湾現代史◆二・二八事件をめぐる歴史の再記憶』 何義麟 ★★★★★

古代の道教と朝鮮文化』 上田正昭 ★★★★★

講座 台湾文学』 山口守(編) ★★★★★

ギリシア人の物語Ⅰ』 塩野七生 ★★★★★

台北人』 白先勇(山口守訳) ★★★★★

吾輩は猫である』 夏目漱石 ★★★★★

『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』 矢部宏治ほか ★★★★★

となりのイスラム』 内藤正典 ★★★★★

感情教育』 G・フロベール(生島遼一 訳) ★★★☆☆

『ローマ百景Ⅰ』マリオ・プラーツ ★★★★★

『すらすら読める「枕草子」』 山口仲美 ★★★★☆

タイの基礎知識』 柿崎一郎 ★★★★★

『日本統治時代の台湾』 陳柔縉(天野健太郎訳) ★★★★★

『中国・開封のユダヤ人』 小岸昭 ★★★★★

『北京を見る読む集める』 森田憲司 ★★★★★

大作・傑作の類の小説は読めたが、割合的には小説が少ない年だった(笑)。感想を書いていない分について軽く書いておきたい。

『日本の反知性主義 』
…日本の反知性主義の捉え方がアメリカのものとは異なる、むしろ教養を軽んじる傾向を危ぶむような指摘には納得せざるを得ない。

『上海歴史探訪』
…上海という都市と幕末・近代日本との関係、欧米の支配と上海の租界の意味、日中の作家と文芸の交流の軌跡、豫園が商人によって造られていく歴史や城皇廟へ祈りに訪れる人々、中国の国歌と作家と映画の関係など、上海を通して近代中国のことを知ることのできる良書だった。『上海時間旅行』も同じような感想になったので割愛する。

『変容する死の文化 現代東アジアの葬送と墓制』
…友人から頼まれて探した資料だったが、思いのほか興味深く結局わたしも読んでしまった。現代アジアの故人を弔う人々のニーズに行政の対応や法律の整備が追いついていない現実と、死を迎える人の心境の変化のデータにはうなずけるところがあるけど、考えさせられた。死者を取り扱う業者の資格の整備はこれからの世に必要になってくるように思った。

『台湾の歓び』
…『台湾現代史』を読んでまもなくして、ふと目に留まって読んだのだが、個人旅行するならこのような旅をしてみたいと思うような内容で、私個人大いに影響を受けた。実際、ツアー旅行では本に出てくる祭礼に出遭うことや街にとけこんでいる廟を巡ることは難しいだろう。

『中国メディア戦争』
…『ネオ・チャイナ』の延長のような内容で興味深かった。一国二制度のまま突き進む中国の指導者も現代のカリスマ経営者の知恵を借りないと国を牽引できない現実があることがよくわかった。

『わたしの台南』
…BSの番組でも見ることのできる現地の肉声が聞こえてくるような内容だった。私個人は台南の地が、江戸時代・近代・戦前の日本人と深く関わっている記述が、台南へ関心を向けるいい入門になった気がする。

『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』
…江戸末期からはびこるアメリカの軍産の戦略内容と、日本の安全保障の実態が衝撃的なものである現実について分かりやすく書いてある。もしトランプ政権に移り、そのタイミングで日本国憲法を一切の外国の軍を置かないと改正する動きが出てきたとしても、自ら二の足を踏んでしまう現実を思うと悲しくなる。

『ローマ百景Ⅰ』
…今のローマにプラーツ氏が思いをめぐらせた建物や風景がどれだけの割合で残っているかと思うと哀愁すら覚えるが、中には残っているものもあると思う。ローマをディープに味わいたい人にはおすすめしたい本だ。

『すらすら読める「枕草子」』
…女の本音をずばり表現した清少納言の才気を感じ取れる本。自分の気持ちや好みを全面におしだし、主張する快さは現代人にも大いにうけるところがあるのかもしれない。しかし清少納言が思いのほか単なる目立ちたがり屋で褒められたがり屋で、他人への共感能力が低いことを露骨に感じ取れてしまうのは正直いただけない。ただ、清少納言本人も「枕草子」が表に出せない内容であると思っていたフシがあることも思うと、少し同情の余地があるかも。

『タイの基礎知識』
…この本のタイの歴史の章を読んで、昔の日本が南方ルートから文化的な影響を受けていた可能性を考えてみたくなった。

『日本統治時代の台湾』
…日本と台湾を支配者と被支配者の関係であったと一言で片付けられないことを、戦前台湾のローカルな話題を集めて示したユーモラスな本でとてもおもしろかった。台北で行われたマラソン大会の結末や当時の工場の女性労働者の意識調査の意外な内容・結果、台湾に進出した日本企業の商品のニセモノが出回る話、そのほか楽しいエピソードに充ちている。時代は変わっても人は変わらないことがよく分かった。

『中国・開封のユダヤ人』
…中国の北宋の時代、100万人都市開封に十字軍の弾圧から逃れてきた可能性があるユダヤ人が存在し、時の皇帝から中国の漢字の姓を賜ったが、宋の時代以降の開封のユダヤ人がたどった運命、とどのつまりユダヤ人がいかにして「中国人になっていった」かを、何度も現地に調査に訪れ書かれた労作。私は昔から中国にムスリムの人たちが住んでいたことは知っていたし、どこかでユダヤ人も住んでいたことを聞いたことはあったが、西暦1000年以降に彼らが住んでいたことについてきちんと読めてよかった。

『北京を見る読む集める』
…陞官図の紹介にはいかにも科挙の制度があった頃の遊びという気がして笑ってしまったし、歴史を研究する人にとっての重要資料となる公牘本(こうとくぼん)のたどるその後の運命についての一つの説には苦笑いを隠せなかった。明治時代の日本人による万里の長城の旅行記の紹介などもおもしろかった。また本の最後のほうでは、北京の景観の移り変わりについても触れているが、この本の記述を読むと、戦後中国が清代のものを壊してしまったことと、今になって(観光資源として)きれいに昔の建物を作り直さしてしまうことに対して、嘆きと歓迎する気持ちが同居してしまう奇妙な感情を覚えてしまう。

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越年読書は、M・プラーツ『ローマ百景Ⅱ』、トマス・ピンチョン『ヴァインランド』、サイモン・シン『フェルマーの最終定理』。

来年もいい本と出会えますように。

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